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海外出張について |
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女子レスリング準決勝。アテネ市内から高速で20分。赤い岩肌の郊外の村の中に、忽然と姿を現すレスリング会場。中に入ると近代的な空間。48キロ級伊調千春、55キロ級吉田沙保里、63キロ級伊調馨が危なげなく決勝進出、日本強し。しかし、選手団旗手も務めた72キロ級浜口京子は、中国の王に6−4で判定負け。どうも、強豪日本にすんなりと勝たせたくない審判団の暗黙の抵抗が働いたとしか思えない判定。浜口が前に出てプレッシャーを掛けているにもかかわらず、なかなかパッシーブをとることができない。逆に、2ラウンドに入り、浜口の組み手が相手の技のブロックだと判断されてパッシーブを取られる始末。
どう考えてもおかしな判断。しかし、それでも浜口は寝技を耐え切ればよかったのだが、ローリングを嫌うあまり、相手のクラッチを握ってしまい、反則点を取られた上にさらにローリングにかかってしまい、3−6。
残り20秒で攻め込んでがぶりからのタックルで1点奪い返すものの、時すでに遅し。納得いかない観客席のアニマル浜口さんの 「どうして負けなんだーー!」 の叫びが、浜口応援団の率直な疑問の声。攻めているのに、審判団の判断によって負けにされた気分。
柔道の井上康生も、審判団から消極的な相手に指導がつかずにリズムを崩したように、強いがゆえに反感をもたれての判定をされて負けるなんて、悔しいの一言。しかし、浜口にも反省点は2点ある。
まず、開始早々に、不用意なタックルに入って自ら両膝を突いて座り込んでしまったのはいただけない。よっぽど相手の圧力が強かったのだろうが、あそこは座り込まずに立って向かい合って、ポイントをやらせない処理が必要なところ。
上から覆いかぶされて1点をみすみす献上し、さらにローリングにあっさりとかかって2点追加されて3点のリードを許すことに。浜口の攻撃力からしたら、前半での3点の失点は簡単にひっくり返せるのだからポイント差は問題ないのだが、ポイントの取られ方が女王にふさわしくない。
せめて1点で抑えておかないと相手に有利な気分にさせるし、寝技でローリングをきるためのフェイントや我慢をしておかないと、さらに相手が優位な気分に立ってしまう。相手を気分良くさせてしまうのが、それが一番やってはいけないこと。
もうひとつは、組み手で崩して、左右に抜けるすかしのタックルで1点ずつを取れるのに、ずっと組み手で押し合いに終始してしまったこと。組み手でフェイントを掛けて崩し、タイミングを取って左右に抜ける片足タックルがあれば、浜口の腕力ならば必ず足をつかんでひっくり返すことができるはず。
力があっても左右の動きの弱い王のような相手には、そういう上下のフェイントを掛けての攻撃が必要なのに、ワンパターンの攻めになってしまっていた。
・いらないポイントをやらない
・組み手で崩して、いなして、フェイントを掛けて、左右に抜ける片足タックルの修得この二つの課題が、試合で発揮できなかったことは浜口の反省点だ。勝てる相手だっただけに、悔しい思いをしながら午前中の試合を終える。
お昼は、選手村へ。
日本選手団本部に向かう途中、今から日本に帰国するという水泳選手団に出会い、激励。選手団本部では、小野清子大臣とともに、昨日女子マラソンで金メダルを獲得した野口みずき選手を激励。横に並んでみると、なんと小さいことか。身長150センチメートル。俺の体半分。この小さな体のどこに、あれだけのパワーとスタミナがあるのだろうと、不思議で仕方ない。
まだ点滴をしながら体調回復中ということで、しばしの激励であったが、帰り際に
「これからの人生のマラソンはどうするの?」 と聞くと
「まだまだ上を目指します!」 と力強い即答。それが世界記録なのか、北京五輪なのかはわからないが、こう答えたときだけは、目がぎらりと輝いていた。勝負師の目だった!外に出ると、陸上の大森コーチにばったり。
「大森さん! 七尾市の市長選に出てくれって地元は熱くなってますけど、どうします?」 と聞くと
「またですか? 勘弁してくださいよ! そんな気はいっさいありませんから!」
「じゃ、断っていいんですね!」
「きっぱりと、お願いします!」 とのこと。星稜短大の教授でもあり、日本陸連のコーチでもあり、さわやかで、熱くて、人柄もリーダーシップも申し分ない方なのだからこそ、いつも選挙のたびごとに声がかかるのだろう。しかし、1000年以上も続く由緒ある山王神社の跡継ぎとしては、政治の世界に関わることは許されないこと。それに、本人にその気は全くない。同じ星稜高校の先輩後輩であり、また、同じロス五輪に出場した仲間として、いつも俺のところに打診が来るのだが、こればっかりは説得できない部分だ。
選手村の食堂で、小野大臣、福田総監督、市原理事やスタッフと食事。だだっぴろいテントの中で、トレーを持って右往左往しながらアジアンフードとスパゲッティとフルーツと、好きな料理を取り揃える。途中、ソフトボールの宇津木監督、宇津木麗華選手とばったりと会い、談笑。また、体操の 中野大輔(なかの・だいすけ)選手や冨田洋之(とみた・ひろゆき)選手、さらにシンクロ団体の選手達やバレーボールのメグ、カナ選手をも激励。みな一様にリラックスしている。この落ち着き振りが、今回の勢いにつながっているのだろうか。
夕方、レスリング会場に戻り、決勝戦観戦。前歯の入れ歯をはずし、こちらも臨戦態勢。日の丸を振りながら、大声で叫び続ける。こりゃもう、応援というよりも、自分も戦っている気分だ。応援にきていた柔道の井上選手も、同じ格闘技として気合が入ってくるのか、しきりに握りこぶしを振り上げて大声を張り上げている。応援団を狂った状況にしてしまうほど、決勝戦は熱戦の連続。
48キロ級の伊調千春は、ウクライナのメルニク選手の強烈な腕取り引付からの飛行機投げを1点に抑えて、ヒットアンドウェーの自分らしい試合運び。しかし、相手の疲れの見えた2ラウンド後半に、思い切っての「あと1点」を取るためのタックルに入れず、2−1で延長に持ち込まれる。
ここで、レフェリーとジャッジの連携ミスで、信じられない状況の中で相手に1点が付く。ここはセコンドも強引にでもアッピールして抗議すべきところなのに、セコンドも、そして肝心のジャッジまでもが試合を元に戻さずに続行。この1点が大きく尾を引いて、2−2のまま試合終了し、内容負け。
悔やんでも悔やまれる判定負け。流れの中であるから、審判同士のジャッジミスは致し方ないとしても、せっかくフェイントで崩しているのにあと1点取るためのタックルに入れなかった千春の弱気が出た試合。悔いが残る。
55キロ級は、吉田が圧勝。試合開始早々に、目にも留まらぬ高速の左片足タックルが決まった時点で、相手は戦意喪失。それほど見事な切れとパワーあふれるタックル。片足、両足、透かしタックル、などなど、あらゆるタックルのお手本のようなタックルを繰り出して、相手に攻め手を与えない試合展開。圧勝。
試合後、疲れているにもかかわらず、栄コーチをひょいと肩車してしまったのには驚き。激しく6分間も戦って、疲れていないはずはないのに、笑顔で肩車しているその下半身を見ると、お尻から太ももの筋肉が以前よりはるかに大きくなっていた。背は低いし手のリーチは短いが、この下半身があればこそ、あのタックルが生きるのだな、と納得。
それにしても、少女のように小さな吉田選手に軽々と肩車されて、嬉しそうに日の丸を振る栄コーチには、会場内から
「おまえ、そりゃ、逆じゃないのかよ!」 と野次が飛んでいた・・・・・のはご愛嬌!
63キロ級は、伊調馨の作戦勝ち。1ラウンドは相手にリードを許したが、慌てず騒がず、2ラウンドの残り1分で2−2の同スコアに追いつき、ラスト20秒で鮮やかな両足タックルから確実な攻めで1点を奪い、3−2の圧勝。
八戸ジュニアクラブの、幼いころからの沢口和興コーチが、常々言っていたという 「最後に1点とって勝てば、その1点は10点の重みがあるんだ!」 という教えそのままの試合展開。しかし、はらはらした。
「前に出て、プレッシャー掛けるんだよ!」
「そしてフェイントだ!」
「崩してタックルだよ!」
「追い込んで行け!」「相手はばててるぞ!」 と何十回叫んだことか! それも、叫ぶたびごとにVIP席のこちらを見てうなずく馨選手。おまえ、こっち見なくていいから、相手を追い込めよ! 目を離すなよ! とさらに叫ぶ馳浩。ここ数年、こんなに熱くなることはないほどのテンションで、本当にこちらもいっしょに闘っている気分。
そしてみごとな展開で試合終了。もう、日の丸を頭上高く振りかざして、万歳万歳の連呼。こんなに興奮することって、あるのだろうか、と自分でも不思議な気分になるほどの大爆発。勢いに乗って、浜口京子の3位決定戦。あいかわらず会場係員に柵からせり出す上半身を下から支えられながら、馳浩と同様に叫びまくるアニマル浜口。わかる、その気分! まけじと叫ぶ、というよりもう、怒鳴りまくる馳浩。なんてガラが悪いんだろう、と自分でもわけがわからないほどに興奮して、応援。そして、観客席以上に闘魂の塊となっていた京子ちゃんは、冷静にポイントを積み重ねて圧勝の安定勝ち。
午前中から良い意味で気持ちを切り替えてきたのか、本来の京子ちゃんらしい、気合の入った堅実な試合運びだった。この闘い方が中国戦でもできればなぁ、というのは、高望みか? 結局中国の王選手が優勝したのだから、やっぱり悔いの残ろうというもの。こりゃ、北京までやらないと気がすまないだろう、京子ちゃんも、アニマル浜口も! でも、あの怪力の王選手に勝つには、寝技対策と、各種片足タックルの修得は絶対必要。そうすれば、どんなときでも安定的な試合展開で勝てるはずだ。浜口親子の素敵な笑顔と次へ向けての雄たけびを聞いてから会場を後にする。
体操会場に向かおうと車を待っていると、なんと同級生の雨坪と繁ちゃんとはっしーから携帯に電話が入る。
「馳ちゃんなんしとらんやー!」
「なんしとるって、アテネで日本選手団の応援しとるわいや!」
「知っとるよ、今テレビに出てたよ、入れ歯はずして叫んでる姿が大映しになってたよ! 入れ歯ぐらい入れて応援しろよーーー!」「え・・・・・・・映ってたの・・・・」
「ばっちり、映ってたよ! 最近金沢で見かけないと思ったら、どこ行ってるかと思ってたら、アテネかよーーー! いいなーーー!」
「ば、ばれたか・・・まさか映ってるとは・・・・一応、文部科学大臣政務官としての日本選手団の応援だからね!」
「いーーや、なんか、個人的な思い入れが激しい応援だったぞ!」・・・・・・・まぁね、そりゃ、レスリング経験者としては、思い入れも激しくなるわなぁ・・・と、興奮さめやらぬままに歩いていると、テレビ解説できている小倉智昭さんにばったり。
「あれ、小倉さん、来てらっしゃったの?」
「そうだよー、俺、金メダル全部現場で見ちゃったよーーー。もう、興奮しっぱなしだよ! 馳さんもすごい盛り上がって応援してたねーー! 凄かったねーー女子レスリングは!」
「そーーですよーー。これが興奮しないでいられますかー!」 というわけで、二人で興奮合戦。アテネの夕焼けが涼しい道端で、熱いおっさんがふたり・・・・体操会場に着いたら、まさしくどんぴしゃのタイミングで、冨田洋之(とみた・ひろゆき)が平行棒決勝の演技開始。完璧な美しさに、感嘆。高得点が出るも、演技順が一番のために少々抑えられ気味。案の定、冨田よりもそんなにいいとは思えない選手が、後半に出てきて高得点を獲得し、金メダル。
でも、自分の力を出し切っての、見事な銀メダルには間違いない。最後の鉄棒の決勝では前代未聞の事件が起こった。3回連続で離れ業を決めたロシアの選手の得点が伸びず、その時点で3番目。
これには会場中がブーイング。ブーイングがひどくて10分間も試合中断。中断中に、2名の審判が得点をかさ上げ。場内のブーイングで得点が書き換えられるなんて、前代未聞。それでも「まだ低すぎる!」 とブーイングがやまない。とうとう、当のロシアの選手が鉄棒台のそばに出てきて、自分を応援してくれる観客に何度も両手を合わせて感謝のお礼をするとともに、次の演技者のために静かにしてやってくれと、両手で場内に静まってくれとの合図を繰り返す。「皆さんのサポートには感謝している。でも、次の演技者のことも考えてくれ。静かにしてやってくれ!」 という気持ちが読み取れて、これで観客も不承不承納得して静かになる。ところが、次に演技をしたアメリカの選手に高得点が出ると、またも激しいブーイング。どうも、アメリカ選手に対して良い感情を持っていないようである、ギリシャやヨーロッパの観客は!
テロ警戒でオリンピックに見込んだほどの観客が来ていないのは、アメリカのイラク戦争のせいだ、という感情が見え隠れしているようである。にしても、ブーイングで得点がかさ上げになったり、選手が出てきて観客をなだめたり・・・まさしく前代未聞の事件を体験できたわけだ。オリンピックって、凄い!
女子レスリング予選
女子マラソン 野口みずき選手激励1
女子マラソン 野口みずき選手激励2
女子マラソン 野口みずき選手激励3
選手村食堂にて1
選手村食堂にて2
選手村食堂にて3
伊調馨表彰式目の前に感無量
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