海外出張について 


「タイ出張リポート 5月27日(木)」

 

 昨日のシン・ハービールとワインの飲みすぎ、プラス、パイナップルの食べすぎがたたってか、朝4時に目覚める、それも、胃もたれがして・・・・・しばしベッドに横たわって深呼吸しながら外を眺めていると落ち着いてきて、また寝る。
 暴飲暴食の歳じゃなくなった、ということだろう・・・・はぁ。

 今日は会場を「シリキット会議場」に移して、SEAMEOーUNESCO教育会議の開会式。
 昨日は大臣級会議だったのだが、今日から明後日までは研究者や教材関係者などNGOなどの関係者が一堂に会してのミーティング。

 その開会式には、タイ王族で一番タイ国民に人気のあるといわれている「シリントーン王女」がご出席される。日本の皇族では、秋篠宮殿下と大変仲がよろしいとの事。しかし、どうしてこのみるからに純朴そうな女性が国民に一番人気があるのか、お会いしてもわからなかったが、お話をされる姿を拝見して、よーーーく、わかった。

 とにかく、その場にいる人をあきさせないように、シリントーン王女は、ずーーっとしゃべりっぱなしなのだ、とどまることなく。それも、流暢な英語と、母国語を相手によって使い分けながら。その勘の鋭さと気配りたるや、とても常人には真似のできないようなレベル。ご自分のお父様(国王)との日頃の掛け合いをご紹介されたかと思えば、ご自身の教育論を披露されたり、北京での見聞録をお話されたりと、もう、話題の多さと広さには、まさしくひとり「トリビアの泉」状態。

 開会式での演説に始まり、大臣級ティーパーティにおける独演と、本当に人をあきさせない、そして惹きつける話術は素晴らしい。あっという間の接見が終わってお帰りになるときも、一人一人と目を合わせながら、再会を望む声をかけていらっしゃる。最後まで気配りの人だった。この気さくさと、気配りと、はにかむような笑顔が国民の心をとらえるのであろう。
 10時半には全員でお見送りをしたのだが、会場内にはその余韻がいつまでも残っていた。まさしく、カリスマ性のある王女様だった。

 午後、ワット・サマナス小学校とラジャビニット・マサイオン中学校視察。ワット・サマナス小学校に到着すると、女性校長が両手を合わせてお辞儀して丁寧に迎えてくださる。
 この小学校は、お寺の付属小学校だそうで、ふたつの校舎の真ん中には、立派な仏像(坐像)の寺院が。もともと、寺小屋での識字教育から小学校が組織化されたのがタイにおける教育改革の出発点。であるから、学校行事の中に違和感なく、仏教が浸透していることが垣間見られる。

 両手を合わせてのお辞儀ももちろんそうであるし、給食式のカフェレストランが存在することも、このお寺付属小学校の特色。
 併設の保育園では、クーラーの効いた部屋の中でお昼寝の真っ最中であり、どうもバンコク市の中でも相当財政的に恵まれた小学校の様子である。それにしてもびっくりしたのは、どこをどう探しても男の先生がいないこと。

 「どうして校長以下、女の先生ばっかりなのですか? 教育的な配慮を考えると、男の先生もいたほうがよいのでは?」
 とおそるおそる貫禄たっぷりの校長先生にうかがうと、
 「男は小学校の先生になりたがらないのですよ!」 とのこと。

 ・・・・・・そうかなぁぁぁ。運動場で男の先生が3名、子供達にサッカーの指導をしていたので、
 「あの方々は?」 とうかがうと
 「保護者です。サッカークラブの指導をボランティアでやってくださっているのです! サッカーの指導はやっぱり男の人じゃないとね。いろんな学校活動には保護者の皆さんが関わってくださっているのですよ。」 と。

 ふむふむ、保護者の皆さんも、学校の管理運営に、地域の皆様方とともに力を貸してくださっているということのようだ。こういった助け合いの精神は、やはりお寺を中心とした地域社会が形成されているからだとか。まさしく、お寺中心の「ムラ社会」こそが、タイのコミュニティ文化の原点のようだ。

 次にうかがった、生徒数2500名を超える中高ジャンボ一貫校のラジャビニット・マサイオン中学校は、またしても女性校長。クラス数54。教職員数130名。生徒数2500名。それでいて、高校生の進学率は、バンコク市でも有数の70%(6年前にはまだ40%だったとか)。
 俄然、この辣腕女性校長の教育方針や学校経営方針に興味が湧き、質問の嵐。

 Q1=「保護者は学校活動に参加できるのですか?」
 A1=「各クラスに4つのグループを置き、それぞれのグループの保護者代表を決めます。その4名のうちから一人がクラス代表保護者となり、54名の代表保護者が月に一度、全体会議を行います。その中で、情報交換したり学校への希望や意見をうかがい、学校経営の参考にします!」

 Q2=「進学率が70%に飛躍的に伸びた秘策は?」
 A2=「進学カウンセリング制度の導入です。学習相談や、将来の職業相談や、職業能力相談や、職業倫理観の育成や、個々の生徒の希望や悩みに応じたカウンセリング行い、そのための専門的な教職員をそろえて、そのための教室も準備したからです。」
  ・・・・確かに、学校視察のときにこの進路相談の部屋を覗いてみたら、まさしく数名の生徒が指導教員とデータを見ながら意見交換しているところであった。気軽に出入りできる人生相談部屋のようでもあった。

 Q3=「年7%の経済成長を支える子どもたちの今後の道徳教育やいかに? 経済発展と、協調性を重んじるタイの国民性は相容れないのでは?」
 A3=「仏教のおかげです。国民みなが理解しています。クラスでお寺を訪問してお祈りや瞑想をしたり、お坊さんに来ていただいてお話をしていただいたりして、道徳教育を充実しています。仏教に根ざしたタイ文化を子供達に伝えてもらっていますし、子供達も理解しています!」

 Q4=「130名の教職員の把握方法は?」
 A4=「学年ごとに、教科ごとにこまかくグループ分けをして、それぞれに目標を与えています。その達成度が評価の対象にもなりますし、先生同士で助け合って研修したり学校活動を進める原動力のグループになっています。」

 Q5=「校長先生の任期は?」
 A5=「今年で6年目です。長いほうです!」
  ・・・・なるほど、同じ学校で6年間もいることによって、教職員の掌握も、保護者との人間関係もうまくいきはじめたのだろう。それによって協力者を得て自分の目指す教育方針の経営への反映もできるのであろうか。やっぱ校長先生は少なくとも同じ学校で5〜6年はやってほしいよな、と思わされる。 マンモス校にありがちなアバウトさは微塵もなく、人事管理が徹底していることに感心する。

 「そろそろ終わりましょう。もう4時ですから。先生方は自宅に帰る時間ですから。女性の先生が多いですから、家庭も育児も抱えていて、皆さん大変なんですよ!」 とうながされて、質問を終える。こういったところは、放課後、帰宅を急ぐ日本の女の先生と、いっしょかも??

 終了後、ホテルに戻るともう夕方。

 

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