第百五十四回  国会

衆議院財務金融委員会議録 第十四号

平成14年4月24日(水曜日)

------------------------------------------------------------

 

○坂本剛二委員長

 次に、馳浩君。

 

○馳浩委員

 昨年12月に破綻した石川銀行の受け皿銀行の選定が難航しております。そこで、私は、石川銀行の受け皿銀行の選定問題を中心に質問させていただきます。

 石川銀行は、破綻後、預金全額保護のため、一たん国内初のブリッジバンクへの譲渡契約を余儀なくされました。しかし、実際の譲渡作業完了までには時間を要するので、実はその間に受け皿銀行探しも並行的に行っております。しかし、この受け皿探しが難航しております。

 この段階に来て、富山県知事が受け皿問題で発言をなされ、一層受け皿探しが難航いたしております。これを受けて預金保険機構は、松田理事と金井審議役が富山、石川の両知事に事情説明と協力要請を4月11日に行い、また、さらに4月17日には金井審議役が石川県に出向いておられると承っております。

 そこで、質問というよりも要請でありますが、金融庁として、しかるべき人が御出馬をいただき、両県知事に事情の説明とともに協力の要請をぜひ行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○柳沢伯夫国務大臣(金融担当大臣)

 石川銀行の承継銀行と申しましょうか、受け皿銀行についてのお話でございますが、馳委員が御指摘されるように、これはできるだけ早く見つけ出さなければいけない、こういうふうに思っております。それに対して私どもも最大限に支援していくということを考えております。

 おりますが、預保がやったから金融庁もやったらどうだというのは、ちょっとそこは、先生、立場が違うのでございまして、預金保険機構というのは金融整理管財人そのものなんです。まさに、金融整理管財人というのは次の受け皿銀行を探すこともその任務のうちの非常に大きな部分でございまして、それがためにそういう努力をしてくださっているということでございます。

 だからといって、金融庁は何もしなくていいということではないんですけれども、金融庁と預金保険機構というのはそういう意味でちょっと立場が違うということも御理解を願いたいのでございまして、私どもとしては、同じような早期の解決というものを目指しまして、また環境整備その他、側面的にこれを支援していくということは当然のことだと考えております。

 

○馳浩委員

 一般論としては今の御答弁だと思いますが、石川銀行の特殊性を踏まえて、今回は例外的な行動をすべきと思います。その理由を申し上げます。

 一つには、過去に破綻した金融機関の規模でいうと石川銀行はかなり大きい、早く受け皿が決まらないと取引先の不安感や資産の劣化が増加してしまいますし、また、石川銀行から融資を受けている優良な取引先がほかの銀行に融資を受けるようになってきており、今回想定されている受け皿銀行のメリットも日々減少しているのが実情でありますし、こういう点に関しまして、石川県内の金融機関、経済界は深い憂慮を示しております。

 二つ目は、石川銀行が金融庁の検査期間中に行った約二百二十億円の増資。金融庁は増資の届け出書を見てある種の警告を発したが、増資が実行された上、8カ月後には破綻というふうな形になっております。この問題については、金融庁の責任問題が当委員会でも厳しく追及されております。したがって、受け皿選定までは金融庁の責任問題と見ているのが国民の視点であります。

 三つ目は、制度的にも金融庁は、金融整理管財人を選任しており、さらに受け皿銀行への資金援助の適格性を認定する立場にあり、さらに営業譲渡についての認可権があることからも、一刻の猶予もなくなっている非常事態の場合、積極的に局面打開のためにアクションを起こすことは何ら制度上も問題がないし、むしろ期待、要請されていると言える点があります。事実、昨年12月の大臣談話で、金融整理管財人を最大限支援してまいると述べておられます。

 四つ目に、私も地元で精力的に関係者に事情聴取を重ねてまいりましたが、そのすべての方々が、金融庁は傍観者過ぎるのではないかという批判的な意見でありました。

 以上、四点を踏まえまして、大臣の熱い思いを込めての再答弁をお願いいたしたいと思います。

 

○柳沢伯夫国務大臣(金融担当大臣)

 金融機関が破綻した場合に、時間とともに資産の劣化、あるいはフランチャイズバリューの劣化というのが起こるというのは、私どもが最近ここ数年間、金融機関の破綻の経験の中で強く学んでいるところでございまして、私は、今委員が御指摘になられたような心配というのは本当に存在するということで受けとめているわけでございます。そこで、いろいろ過去の例なぞについても、もっとゆっくりやったらいいじゃないかとかというようなそういう議論もあるのですが、なかなかそうはいかないんですということを申し上げる次第でございます。

 私ども、今委員が言われたことで申しますと、やはり責任のありかというか、そのことをやるという権限と責任を持っているのは金融整理管財人でありまして、その中に、この場合には非常に事が重大でありますので、法人としての預金保険機構というものを入れて、たくさんのスタッフを抱える預金保険機構というものが専門的な立場でいろいろな動きができるようにということで、これを金融整理管財人として任命したといういきさつがあるわけでございます。

 そういうことでございますけれども、では金融庁は何をするかといえば、これはもうあくまでも金融整理管財人を支援するということでございまして、この点については、委員の御懸念のことも我々、先ほど申したように十分わかりますので、この支援をさらに一層強めていくということを申し上げて御答弁にさせていただきます。

 

○馳浩委員

 私の意見を申し上げておきますが、私は、石川銀行の整理管財人とこの一カ月、本当に丁寧に意見交換をしてまいりました。石川県の商工労働部長の方とも意見交換をしてまいりました。経済界の方とも、あるいは北国銀行、いわゆる地元での基幹の金融機関でありますけれども、こちらの頭取とも意見交換をさせていただきました。

 破綻した石川銀行のある支店長の方とも意見交換をしてまいりました中で、何とかして、やはり石川銀行とのこれまでの取引先の方々の思いを考えれば、一日も早く受け皿が決まって、それに営業譲渡されてほしいという強い念願がありますので、その点を踏まえた上で、金沢の方には財務局長かな、児玉さんもいらっしゃいますけれども、いろいろな立場の方で情報を提供し合いながら、受け皿が早く決まるように、また富山県側の立場もありますから、配慮をしていただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。

 二点目は、当委員会で論議された石川銀行の破綻前の増資の問題に私も触れないわけにはまいりません。二度とこのような増資に絡む被害者を出さないためであります。

 私の問題意識の出発点は、今回の増資、つまり増資しなければ債務超過が推定された増資、この点は4月2日の当委員会で明らかにされた点でありますが、このような増資に対してまで、行政のチェックが届け出だけでよいのか、何らかの制度的規制は例外的に必要ではないのか。さらには、増資に絡むディスクロージャーの拡大をすべきではないかという問題意識であります。

 そもそも、株式会社が増資という生き残りをかけた自己努力をする、このことを行政が真正面から規制をしていくというのは基本的にはおかしいことであります。しかし、経済の動脈と言われ、公的機能も有するがゆえに特別の配慮もされる銀行、その銀行が今増資をしなければ債務超過に陥ることが推定されている状況下で行う増資については、だれが考えても、銀行の優越的地位を利用した募集活動が行われることは火を見るより明らかであります。

 つまり、不正な募集活動を防止して、公正な自己努力をさせる環境づくりに腐心すべき行政の義務があると思います。これは自己努力の規制とは根本的に違います。経営上のリスク情報を追加請求できるようにして、公表できるようにしてはいかがでしょうか。また、出資、募集活動をこのような場合に限って監視することも必要ではないでしょうか。

 例えば、募集活動の事後報告書を提出させて、アトランダムに不正な募集がなされていないか事後チェックをし、問題があれば指導し、その事後チェックを報告書にまとめ、後日、問題が司法の手にゆだねられたときには、被害者の立証責任の負担を軽くするために利用できるようにしてはいかがか。

 関連して、銀行の場合には、証券取引法第十五条にある目論見書の交付義務が実行されているのかを監視し、あわせて、目論見書の説明義務を不動産取引の重要事項の説明義務のように制度化し、暫定的には行政指導することを提案したいと思っております。

 以上、私の提案に対する回答と、現在金融庁が考えている予防策についてもお伺いしたいと思います。

 

    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕

○柳沢伯夫国務大臣(金融担当大臣)

 石川銀行の場合、当然目論見書を明らかにいたしております。そして、直近の決算時における自己資本比率、それからまたその後において、これが適正かどうかということも問題になるのではないかというような我々懸念も持って検討もお願いしたわけですけれども、増資後の自己資本比率というのも実は目論見書の中に書かれているわけであります。しかも、直近の自己資本比率より増資後の自己資本比率の方が低いのでございます。しかも、その絶対水準も4%に極めて近いというような状況です。

 こういうのをごらんになられると、かなりのところはディスクローズされているというように、そのもの自体の評価として私はそういうようにも見受けたわけでございます。

 いずれにせよ、もっといろいろな手だてを講じてこのような遺憾な結果を招来しないようなことを考えたらどうかということでございますが、これはいろいろな今御提案もあったわけですけれども、これらについては御提案を御提案として受けとめさせていただきまして、今後のいろいろな検討の中で生かさせていただきたい、こういうように思います。

 ただ、一つだけちょっと申し上げておきますと、ペイオフ前の場合とペイオフ後の場合とではかなり環境条件も変わってきているだろう、こういうように思います。あのようなことがある程度、時間のゆったりした経過のと言えるかどうかわかりませんが、できるというのも、預金者の目がない。預金者はもう全額保護されていますから、預金者はそういうことは余り関知しないところだというようなことが許されるということでございまして、今度私どもが入っている新しいペイオフの時代というときには、これはもう非常に預金者の目というものが厳しくなりますから、そういう中で、増資がなければ債務超過だというようなところまで追い込まれて、なおそうしたことが行い得る状況が今後もあり得るかといったら、これは非常に私は難しいだろうと思っています。

 我々が目指すべきことは、そういう危険な状況のもとで増資が云々ということよりも、早くそこまでいかない先に早期の是正措置を講ぜしめる、そういう指導をして、そういうボーダーラインに金融機関が陥ることを防ぐということが最大の眼目ではないか、このように考えております。

 

○馳浩委員

 終わります。

 


   詳しくは財務金融委員会 議録をご覧ください
(常任委員会 → 財務金融委員会)



関連記事

北国新聞 4月25日(木)掲載

馳氏 金融庁に努力促す

 柳沢伯夫金融担当相は衆院財務金融委員会で、石川銀行の最終受け皿探しについて『金融整理管財人への支援を一層強めていく』と述べ、本格支援に乗り出す意向を表明した。

 馳浩代議士(自民)が『受け皿探しに金融庁の支援が必要』などと指摘したのに対して答えた。

 柳沢金融担当相は、受け皿探しが遅れると金融資産が劣化し、引き受け先の利点が減少するとの認識を示した上で『できるだけ早く見つけ出さねばならないと思っている。最大限支援する』と協力姿勢を強調した。

 金融庁はこれまでも受け皿探しを支援する意向を示していたが、関係者からは動きの鈍さを指摘する声も出ていた。

 これに関し、柳沢金融担当相は、金融庁と金融整理管財人でもある預金保険機構との立場の違いを説明した上で、『金融庁は何もしないということではなく、早期の解決を目指して環境整備などを側面支援していく』と語った。同庁の岳野万里夫銀行第二課長は『受け皿探しに効果があることなら、あらゆる努力をするという決意の表れだ』と述べた。

 


メールをどうぞ


ホームページへ