第百五十六回 国会
衆議院
青少年問題に関する特別委員会議録 第十号
平成15年7月17日(木曜日)------------------------------------------------------------
○青山二三委員長
馳浩さん。
○馳浩委員
おはようございます。大臣は結構ですから、一言申し上げておきますが、その心余りて言葉足らず。その心余りて言葉足らずというのは、別に鴻池大臣のことを言った話ではないんですね。古今和歌集の仮名序で、紀貫之が在原業平の和歌の歌風を評した一文でありまして、思いがあふれているんだけれども、それを的確に表現できないということを表現した評文であります。大臣にはそういった観点をしっかりと踏まえて、今回、長崎の12歳の少年の事件に関しましては、まだ事件の概要が、全貌、明らかになっておりません。その段階での発言はやはり控えるべきでありましょうし、また、親の責任、あるいは学校の責任、関係する方々の責任というのはそれぞれ感じておられるでしょうけれども、これはやはり、なぜこんな事件が起きてしまったのかということを明らかにしていくこと自体が意味のあることであって、この段階における担当である大臣の発言として不穏当であるということをまず指摘をいたしまして、私の質問に入らせていただきたいと思います。
さて、児童虐待防止法、平成12年11月に施行されまして、ことしの11月で丸3年がたとうとしております。この青少年に関する特別委員会において、いわゆる議員発議という形で、当時、我が党の太田誠一さん、また社民党の保坂さん、また青山委員長初め、たくさんの議員の努力によって、まさしく思いが結実をして成立した法案であります。当時担当された鴨下今現在では副大臣ですけれども、大変思いも強かろうと思います。
しかしながら、当時は、まだ積み残しの論点がありました。また、見直しの段階に入って、いよいよ、さまざまな方面から、法改正を視野に入れた動きが出ております。私も、当委員会理事の皆さん方や、参議院の共生社会に関する調査会の理事の皆さん方と、鋭意法改正に向けて勉強中であります。近日中にまとめて、臨時国会にも提出できるように努力しているところということも表明しておきたいと思います。
そんな中で、まず、担当である厚生労働省として、児童虐待対策の関連予算について、来年度、どのような拡充を考えておられるのか、概算要求に盛り込もうとしておられるのかをきょうはまず伺いたいと思います。
つまり、法の見直しというのは、これは時間的な制約もありまして、臨時国会にこの動きは先送りせざるを得ないんですけれども、来年度予算に関して、法改正をしなくても省令等でできる分野もありましょうし、また、昨今の情勢等を見ながら、現場のことを見ながら厚生労働省として対応できる分野もあろうと思いますし、私たちは、それをこの委員会としても全面的にバックアップしたいと思っております。そういう意味で、厚生労働省としてのお考えを伺いたいと思います。
○渡辺芳樹政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)
ただいま、先生より、児童虐待に関連いたします予算の概算要求、こういうものに向けてどういう姿勢、どういう内容で検討に取り組んでいるかという御趣旨のお尋ねがございました。この点につきましては、御指摘いただいた児童虐待防止法の3年後の見直しという点も一つの大きな節目でございますので、私ども厚生労働省といたしましても、専門の方々の議論の整理や御提言をいただくべく、社会保障審議会の中に専門委員会というものを児童虐待防止等についてもつくりまして、また、社会的養護の面におきましても別途また専門委員会をつくりまして、さまざまな議論の整理、御提言をいただこうとしております。
そういう御議論を踏まえながら、私ども、概算要求に対応してまいりたいと思っておりますが、そうした中で、例えば、児童虐待防止法において大変その仕組みが新しくなったことにより、虐待の通報というのが大変ふえてまいりました。しかし、予防から、ケアから、さまざまな一貫した流れの中で残されておる課題が多うございます。そういうことで、例えば、児童虐待の児童をお預かりする社会的養護に当たる施設ケア、こういった面におきましても、概算要求面においてさまざまな検討をしているところでございます。
できるだけ家庭的な雰囲気の中で手厚い処遇ができるようにという観点も含めまして、今、鋭意検討中でございます。
○馳浩委員
専門委員会の報告書を拝見いたしますと、予算面というふうな観点から絞りますと、児童福祉施設の職員の増員あるいは専門性の強化が何よりも重要と思いますが、いかがでしょうか。また、きめ細やかなケアが可能となります地域小規模児童養護施設の拡充であるとか、あるいは年長児童の自立促進のための自立援助ホームへの支援の強化も重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○渡辺芳樹政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)
お答え申し上げます。今御指摘の具体の点についてでございますが、御承知のとおり、児童養護施設、昔は、親のない子供さんたちが多かったのでございますが、今、入所されている方の何割ものお子様が虐待の関係というようなことも言われております。
そうした中で、心理療法を必要とする児童が多い施設における心理療法担当職員の配置でありますとか、大きな施設における被虐待児個別対応職員の配置でありますとか、さまざまな取り組みをこれまでも行ってまいりましたが、先ほどもちょっと触れさせていただきました専門委員会での御議論、御報告なども踏まえますと、これから大いに力を入れていくべき方向といたしまして、今御指摘の小規模の施設ケア、特に家庭的な雰囲気のもとできめ細かなケアが可能な地域小規模児童養護施設の推進をさらにどう図り、そういう中で、職員の配置という問題についてもどのように具体化していくかということが今問われていると考えております。
またさらに、退所後の児童、青年期にかけての児童の自立支援を図るために、大変志の高い方々により、なお少数にとどまっておりますけれども、自立援助ホームというものが運営されております。そうしたものについても、何とかさらにその推進が図れないか、私どもとしてどういうところに支援の手を差し伸べればいいのか、そういう点について、この概算要求の中においても、また、これからの児童虐待防止法の見直し、あるいは関連いたしまして児童福祉法の関係の見直しもあるかもしれませんが、そういうところをにらみながら鋭意検討しているところでございます。
○馳浩委員
より具体的に、いわゆる職員の加配について要求をさせていただきます。児童養護施設の職員配置基準について、現行の3歳児未満が2対1、年少児が4対1、就学児が6対1となっておりますが、現場からは2対1にしてほしいとの要望も強くあります。現場の声にこたえる意味でも、少しでも現状を改善する職員の加配を考えていただきたいと思います。
また、平成11年度より配置されています、虐待等により心的外傷を受けた児童の心理療法を行う職員、心理療法担当職員を、現在配置されている児童養護施設、乳児院に常勤で、できる限り多く配置することを要望したいと思います。先般、栃木県の方に視察に行ってまいりましたが、やはりこれは嘱託が多うございました。常勤でということを望みたいと思います。ちなみに現状では、予算箇所数では、児童養護施設で54%、乳児院で35%にとどまっている現状です。
さらに、平成13年度より配置されている、個別対応が必要とされている被虐待児等に向き合う職員、被虐待児個別対応職員も同様に、児童養護施設に常勤で配置することを望みたいと思います。現状は、児童養護施設において予算箇所の62%にすぎません。
以上、具体的に要求というか、ぜひやっていただきたいと申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
○渡辺芳樹政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)
ただいま御指摘いただきました点につきましては、その基本的な考え方において、先ほど触れさせていただきました児童虐待の防止等に関する専門委員会の6月の報告書にも顔を出すような論点であろうかと思っております。それからまた、ただいま検討中でございますが、社会的養護に関する専門委員会でも大きな検討課題ということで、職員の配置の問題というのは大きな課題であるというふうに認識しております。ただ、ケアそのものをどういう形で将来に向けて姿形をつくっていくのかという議論の整理とあわせて私ども結論を見出していくべきと考えておりますので、具体的には、5月設置でございますが、社会的養護のあり方に関する専門委員会における論点を立てた、そういう点にも触れた御議論の整理というものを見ながら、適切に対応してまいりたいと思っております。
○馳浩委員
概算要求に向けては、厚生労働省内においても、いよいよ大詰めを迎えていると思います。鴨下副大臣のリーダーシップを期待したいと思います。さて、予算要求とも関連いたしますが、今国会において、次世代育成支援対策推進法と児童福祉法の一部改正法が成立しました。実は、両法案とも、子育て支援や児童の健全育成という意味では、児童虐待防止対策とも密接な関連があります。そうであるならば、今回成立した法律と児童虐待防止法の見直しをそれぞればらばらに取り組むのではなく、連続性のあるものとして制度見直しを行っていくことが大変重要となってくると思いますが、この点に関しての厚生労働省のお考えを聞かせてください。
○渡辺芳樹政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)
先日成立いたしました二法案に関連してのお尋ねでございます。両法案は、すべての子育て家庭を視野に入れて、その子育て支援のための措置を講じようというものでございますが、こうした取り組みは、虐待防止という分野の取り組みも含めた全体で考えました際に、すべての子育て家庭を視野に入れた子育て支援の基盤となる仕組みではないかというふうに私ども考えております。そうした基盤づくりという観点で、二法案に基づきまして、平成15年、ことし、それから来年と、地方行動計画等の策定に全力を傾けることとしております。
それにつきましては、この次世代育成支援対策推進法に基づきまして、国が行動計画策定指針というものを近々策定することとしており、今、鋭意検討中でございますが、そうした行動計画策定指針におきましても、児童虐待の防止に関する対策について、その位置づけをしっかりした上で、地方において、具体的なニーズの把握、施策の展開、制度の見直し、こういうような流れになりますように、私ども指針を策定してまいりたいと考えております。
もとより、その際、関係省庁、地方自治体、関係団体等とも十分連携を図って、指針策定後、行動計画策定に至るまで、さまざまなプロセスを大切にしてまいりたいと考えております。
○馳浩委員
次に、総務省について、同じく来年度の概算要求に関して質問いたします。周知のように、児童虐待対応の中核機関である児童相談所の体制強化、さらには、虐待予防で大きな力を発揮している保健師の拡充も喫緊の課題と言えます。そこで、この機会をとらえて、交付税においても、児童相談所職員、特に児童福祉司、心理判定員の増員、さらには、地域の保健師の確保に必要な経費を従来以上に拡充すべきと考えますが、この点をどう踏まえて来年度対応されるのか、お聞かせ願いたいと思います。
○林省吾政府参考人(総務省自治財政局長)
お答えを申し上げます。近年の児童の健全な育成にかかわる問題が深刻化する中で、児童相談所や保健所等を初めといたしまして、地域の果たすべき役割が重要性を増しているものと私ども認識をいたしております。このような中で、地方公共団体におきましては、児童福祉司や保健師の増員など、児童相談所の体制の強化が図られているところでございまして、総務省といたしましても、こういう実態を踏まえながら、交付税による措置人員数につきまして大幅な増員を図ることといたしているところでございます。
児童福祉司につきましては、平成十二年度以降、四年連続して増員いたしておりますほか、保健師につきましても、平成13年度から16年度にかけまして、新たな増員計画に沿って大幅な増員を図ることといたしているところでございます。
今後とも、地域の実態や所管省庁の御意見も踏まえながら、適切な財源措置に努めてまいりたいと考えております。
○馳浩委員
最後に、鴨下副大臣にお伺いいたします。この児童虐待防止法を成立させるときに、我が党のオピニオンリーダーとして、当時、法案の取りまとめをいただいたのが鴨下副大臣でありまして、三年後の見直しをいろいろな思い万感に迎えておられると思います。
今お聞きいただいたように、やはり概算要求に向けて、ちょっと厚生労働省も総務省も、まだまだ腰が引けているのかなという気もいたします。法改正に向けては、これは私たち議員もしっかり取り組まなければいけない問題、この委員会の大きな責任でありますが、こういう情勢を踏まえて、副大臣としての決意をお伺いして、私の質問にさせていただきます。
○鴨下一郎厚生労働副大臣
先ほどから、先生から、改正に向けてしっかりとしろ、こういうような話でありますけれども、私も、当時、法案の立案に携わった者として、この見直しについては、それなりの思いを持って接しているところであります。残念なことに、虐待がここ、虐待防止法が施行された後、いろいろな意味でふえているというようなことでありますから、こういう抜本的なところも考えていかなければいけないわけでありますけれども、ただ、そうはいっても、虐待を受けて被害をこうむっているお子さんたちをどういうふうに保護し、なおかつ、その後に自立に向けてきちんとした形で社会に送り出す、こういうようなことは私たちの使命でもあります。
先生が先ほどから御指摘のことも踏まえまして、審議官も答弁させていただきましたけれども、それに加えて、私も先頭に立って、予算のこと、それから量的なこと、そして質のこと、あらゆることで一生懸命取り組んでまいりたい、かように思っておりますので、また先生方にも御支援賜りますように、よろしくお願いを申し上げます。
○馳委員
終わります。ありがとうございました。