第百五十六回  国会

衆議院
青少年問題に関する特別委員会議録 第五号
平成15年5月8日(木曜日)

------------------------------------------------------------

 

○青山 二三委員長

 次に、馳浩さん。

 

○馳浩委員

 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 では、まず森参考人にお伺いいたします。

 携帯電話の販売者であったりあるいはプロバイダーであったり、いわゆる事業者の方々は、こういう出会い系サイトを利用した犯罪とは、私たちは中立的な立場にあり関係なく、全く責任がないというふうな認識は持っておられますか。

 

○森 健一参考人(株式会社NTTドコモiモードビジネス部企画担当部長) 

 私どもといたしましては、先ほども説明でちょっと申し上げましたけれども、この出会い系サイト自体が社会的に大きな問題になっているという事実は認識しておりまして、やはり我々の利用者、お客様あってのサービスですから、お客様の利便性をより向上させるという立場から、今回、お客様が出会い系サイトに触れない形でお選びいただけるというような機能を提供させていただいているところです。ですから、お客様の利便性というのが一番大事だと思いますので、その中の一環の取り組みだと思っております。

 

○馳浩委員

 法律の第三条の、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する責務ということを考えれば、いわゆる事業者の方々に一定の責務があるという観点から、今後、ドコモさんもフィルタリングサービスについて積極的に取り組んでいかれると思っておりますし、期待いたします。

 その観点から質問を幾つかさせていただきたいんですが、フィルタリングサービスをする場合には、どのサイトが適正でどれが不適正なのか、その基準づくりは大変難しいと思うんですね。財団法人インターネット協会も、年間五千万円ほどの国の助成を受けて、その基準づくりについて大変苦慮しておられますし、そういう公的支援を受けながら努力もしておられますが、それはドコモさんとしては、まず、何が適正、適正でないかという判断をどのように技術的にしていこうとされるのか。

 また、ドコモさんほどの資本力のある会社であるからこそできることかもしれませんが、そうでない中小のプロバイダーの方々とか、できない事業者もいらっしゃるでしょう。そういう観点について、やはりもうちょっと国として関与すべきではないかという御意見もあったらお願いしたいと思います。

 

○森 健一参考人(株式会社NTTドコモiモードビジネス部企画担当部長)

 ほかの事業者の話は、ちょっと、それぞれ意見がございますので、私どもの取り組みについてまず御説明申し上げますと、我々はiモードのサービス開始当初から、我々の顔として、iメニューリストというものでモバイルインターネットを普及するように、便利なサイトを集めてやってまいりました。

 その中で、今回、出会い系サイトに相当するようなサイトは、我々の掲載基準の中から、メニューリストの中でこれはできませんという形になっておりましたので、今回、事業者側で、ドコモとしてできる範囲で、利用者の利便性向上という立場から、ちょうどこのiメニューリストのところだけをつなげるようにすれば、今回の出会い系等、青少年の健全な育成の妨げになるようなサイトにはつながらないと判断いたしましたので、今回できることからということで、我々の方でフィルタリングというか、iメニューサイトだけつながるようなサービスを提供しようと考えている次第でございます。

 

○馳浩委員

 提案ですが、こういう出会い系とかアダルトサイトにはそもそも接続できないというふうにしておいて、希望者には接続できるようにする、こういうことは技術的に可能なのでしょうか。

 

○森 健一参考人(株式会社NTTドコモiモードビジネス部企画担当部長)

 先ほど、宮台先生のお話にもありましたけれども、要は、何をもって健全でないというか、いわゆる出会い系サイトかと判断するのは、技術的には非常に困難なものだと思っております。

 

○馳浩委員

 大変難しいですよ。私は宮台参考人のお話を伺っていて、成り済ましであるとか、あるいは出会い系サイトを使った犯罪というのは、例えばデート商法なんかもぼちぼち出てきておりますし、なかなか取り締まりが難しいので、なるほど警察庁の方もよく考えたな、いわゆる一定の抑止力を持つ法案として出してきたのかな、こういうふうに私、判断せざるを得ません。

 そういう意味でいえば、宮台参考人も、基本的にはこういう一定の社会的な制約というものが必要であろうと冒頭におっしゃられましたが、では、この法案として、我々も法律上考えると無理からぬ、この程度かなというふうな部分、気持ちを持っておりますが、より効果的な抑止力を持つような対応をするにはどういうふうにしていったらよいのかという御意見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

 

○宮台 真司参考人(東京都立大学人文学部助教授)

 これさえあれば抑止できるということはないと思うんですね。参考人の方々がおっしゃったように、さまざまな、複数の施策の結合が必要だと思います。

 先ほど、島先生の方からお尋ねいただいたときに、テレクラのフロントの件を出しましたが、実際にはなぜフロントが抑止力として働いていたかというと、やはり後ろめたいので強姦されても警察に訴えることができないというケースが非常に大きいからです。したがって、比較的第三者的な、警察ではない、つまり処罰されないテレクラのフロントの方に行くということがありました。

 そのような意味で、例えば、処罰をすれば単に抑止力として働くという部分だけを取り上げて考えることができない。やはり費用対効果なんですね。どういう費用、コストがかかるのかということを考えなければならず、水島先生もおっしゃっていましたけれども、それによって例えば人権を侵害された子供が、つまり犯罪に遭った子供がそれを訴えることができないというような可能性がみじんも存在するのであれば、そのような法律は公正なものではない可能性があります。

 その辺、ほかにもいろいろなコストがあり、そのことはお話をいたしましたが、コストを最小化するための工夫がこの法案に存在するとは、私の考えでは認められないというふうに思います。

 

○馳浩委員

 難しいな。私がそういうことを言っちゃいけませんね。本当に、探そうと思えば抜け道が……。売春が目的ではない子供たちにとって、ちょっとおもしろそうだからやってみようかなという子供たちにとっては一定の抑止力になると思うんですが、確信犯の子供たちにとっては大丈夫かなと。そして、捜査の段階で、いわゆる個人情報が警察の方に恣意的に使われる不安というものは、一抹の不安は私も感じます。

 個人情報保護法案が今衆議院で成立して参議院に回っておりますので、そういった行政機関が得た個人情報の他への転用とかをしてはならないのは、もちろん重々、与野党問わず、議員からの指摘があって、理解されているところではありますが、犯罪捜査に利用する場合にはどうなってしまうのかなという一抹の不安をここでは感じざるを得ません。

 そういう意味で、先ほど宮台参考人も御指摘されましたが、いわゆるこういう出会い系サイト、そして今回の法六条、七条、八条違反に基づいて警察が捜索に入る、情報を得る、こういったものが個人情報として警察側に渡ることの危険性、怖さ、こういったものについての御意見がありましたら、ぜひ聞かせていただきたいのですけれども。

 

○宮台 真司参考人(東京都立大学人文学部助教授)

 個人情報が犯罪捜査に利用される場合も、行政機関による個人情報の利用ですね。したがって、行政機関個人情報保護法を拡充してこれが犯罪捜査に使われた場合であっても、盗聴法というか、通信傍受法と同様に、個人情報を使ったということをその情報の当事者に、まさに自己情報閲覧権、制御権の概念の内側でこれを開示していく、情報をお知らせしていくということが必要かと思います。

 しかしながら、現時点では、犯罪捜査に例えば携帯電話の位置情報、これは通話記録に伴う位置情報と、絶えず発信基地と電波をやりとりするときに蓄積されていく位置情報があります。これが犯罪捜査に使われているわけですが、実際には通信傍受法の適用範囲外でありまして、こうした犯罪捜査に使われた非常に重要な個人情報、政治家さんにとっても非常に重要な個人情報だと思いますよ。いつ、どこに、どういうふうにいて、どういうふうに移動したのか、全部わかるわけですからね。そうしたものが利用された後にそれが告知されないという現行法のあり方、あるいは現行法案のあり方には問題があると思います。

 

○馳委員

 問題があるという御意見はしっかりと私も受けとめたいと思います。

 それから、森参考人にまたお伺いいたしますが、私、きのう、ちょっと役所の方に提案したんですが、サイトの開設者とそしてプロバイダーというのは、契約するときに利用約款を結ぶわけですよね。そのとき、こうしたらどうかという提案なんです。

 七条の明示伝達義務違反、八条の児童確認義務違反、こういうサイトの開設業者に対しては、もうプロバイダーの方で、明確に違反しているので、判断してすぐ契約切っちゃうよ、こういうのをもうちょっと厳しくやったらいいんじゃないか。事業者の皆さん方のまさしく責務としてやったらよいんじゃないか。もう少しそういう契約を、法に基づいて厳しい契約をとっておいて、そういうことをした場合にはすぐサイトは閉じますよと。

 もちろん、それでも、確信犯のサイト開設者は、名前をかたったり、次から次へと渡りのような形でサイトを開設するのかもしれませんが、これまた一定の抑止力があるのではないか、それも一つの事業者にとっての責務ではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

 

○森 健一参考人(株式会社NTTドコモiモードビジネス部企画担当部長)

 私どもが今迷惑メールの関係とかでいろいろ対策等を講じてまいりました経験から申し上げますと、先ほど議員が御指摘のとおり、最初は善人の顔をして入ってくる、後で内容がどんどん変わってくる。こういったものについてはいかんともしがたいというのが現実の姿でして、一定の抑止力になるかどうかはちょっとわかりませんけれども、やはり効果としては限定的と言わざるを得ないんだろうな、そういうふうに考えております。

 

○馳浩委員

 もう最後にいたしますが、宮台参考人に。

 少女たちのこういう行動に非常にお詳しいと承っておりますが、今回、第六条違反を通じて、児童も犯罪者になるんですね。私は非常に心を痛めておりますが。

 さて、少女たちは、いわゆる少女として、自分の性としての肉体が武器になるんだ、これで金を、おやじをちょろまかしてやろうとか、これは出来心なんでしょうか。それとも、本当に、そうすることがより自分の心の空虚さを満たす一つの役割を果たしているのでしょうか。その少女たちの考え方、どういうふうな思いでアクセスをして、犯罪になり得るような行動をしてしまうのかという行動原理が私はちょっとよくわからないんですよ。

 宮台参考人は、いろいろとフィールドワークも非常に多く、経験がおありだと承っておりますが、警察庁の報告では、九割の、少女の誘引による犯罪が多い、問題が多いということでありました。私は経験もないのでわからないのですが、ちょっとそういう、少女たちが、今回、犯罪者にもなってしまう。そこまで規制されざるを得ないような状況になってしまっている。ところが、少女たちにはそこまで犯罪意識があるのか。規範意識の欠如だけで、私はどうも心理的なものをとらえ切れないんですね。それについてもうちょっと御意見をいただければありがたいと思います。

 

○宮台 真司参考人(東京都立大学人文学部助教授)

 出会い系サイトを利用する動機は非常にさまざまありますが、短くするために、こういうことがあるということを申し上げておきたいと思います。

 それは、大人社会のダブルスタンダードということですね。先進各国のほとんどは、単純売買春は合法化されておりますし、日本も、単純売買春については事実上、売春防止法は適用されておりません。風俗産業は、ソープランドも含めまして、最近は、不況もありますので、本番大ブームというふうになっておりまして、事実上、これも規制されておりません。そういうことは、この情報社会、インターネット社会でありますので、年少者、若年者、青少年にも多く伝わっております。

 そういう状況で、例えば麻薬等であれば大人も厳罰に処せられる。そのようなものについて子供も処せられるということであれば、それは抑止力を構成しますが、例えば、酒、たばこは大人はやっていて、しかし子供はだめということになっていますから、実際、もう高校生になれば、酒、たばこはやり放題に近い状況になるわけですよ。もちろん、それで補導されたりもしていますけれども、実際には抑止力を構成していません。そうした、つまり、処罰されるから酒、たばこをやらないのではない。恐らく別の動機でやらない人たちがいっぱいいるんだと思うんですね。

 似たようなことは、例えば児童買春、少女の側から誘引をする買春についても言うことができると思います。かつて、テレクラの黎明期とは違って、不用意に、好奇心からたまたまそれをやってしまったというような少女の数は、全体の中で占める割合が随分少なくなっていて、実際には、ある程度情報が存在する中で、はい、私もこれをやってみようという、はっきり言えば、もう目に見える、可視的な、つまり、どういうものであるかがある程度想像可能なものにみずからをアクセスするというスタイルになっていると思います。

 

○馳委員

 そこを突っ込んで聞きたいんです。その動機の部分なんですよね。これは野口参考人にもちょっとお聞きします。少女の精神的な、思いの専門家ですからね。

 その動機が、おもしろく、興味があってやってみようかな、友達もやっているからではなくて、そしてまた、もちろんお金のためでもなくて、いわゆる何か青春期の少女の特有な精神的な構造があるのかもしれませんが、私、動機がよく理解できないんです。

 繰り返しアクセスして、人に会って、自分の体をお金で売りつけるというふうな考え方自体が理解できないんですけれども、なぜそういうことを行ってしまうのかという動機について、もうちょっと、野口参考人なりの御意見をいただきたいと思います。

 

○野口 京子参考人(文化女子大学文学部健康心理学科教授)

 私の三ページ目のアンケートのところでその理由がいろいろ書いてありますが、その中で、学生たちの話し合いの中でも、反対をした人たちの友達でやっている人がいるというような、それで、どうして行くんだろうかという動機を聞いたことがございます。

 そのときに、最初には、みんながやっているからという、それもございます。そういう軽い気持ちの子供、児童と、それから、先ほどお話にもありました成育歴の面から、どこかの成育過程で、どこか固着していた場所で、親とか異性の親に対する気持ちから出る、あるいは虐待されていた、そういう循環的なものの理由でなるという部分もあります。それからもう一つ、私が興味を持ちましたのは、今の時代の流れに自分も安易に乗ってみるというのもございました。

 これもみんな、先ほどの抑止力ということになるという点では、本当にいけないことだというのがわかれば多分やめていただろうという友人の考え方ですので、今回、いろいろな御意見がありましたけれども、確かに、規制自体が難しいということと技術的にも難しいということのほかに、法律の整合性とかございますけれども、やらない子供よりやっている子供の方が少ないわけで、その中で、またある部分を抑えるという意味になりますので、動機というのも、はっきりこうだというのは、全部の方の意見、みんな別々ございます。

 ですから、難しいところではございますけれども、繰り返すというところで、やはりカウンセリングをして、自分が本当にどうなるかということをやって、納得した場合にやめるので、やはりそういう一つ一つ細かい対応でいくということでいたし方ないことだと思っております。

 

○馳浩委員

  終わります。ありがとうございました。


   詳しくは青少年問題に関する特別委員会議録をご覧ください
(特別委員会)
 


メールをどうぞ


ホームページへ