第百五十六回  国会

衆議院
青少年問題に関する特別委員会議録 第四号
平成15年5月7日(水曜日)

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○青山二三委員長

 馳浩さん。

 

○馳浩委員

 おはようございます。自民党の馳浩です。

 きょう、いわゆる出会い系サイト被害防止法案の質疑をさせていただくということで、朝、埼玉県のさる私立女子校の私の知り合いの先生に、どうかなと思って聞いてみましたら、朝7時にもかかわらずもう既に職員室におりまして、一体何事ですかと聞いたら、実は馳さん、聞いてくださいというので、こんな話がありました。

 出会い系サイトを使って、うちの生徒が、実在の他人をかたって、また、メールアドレスを次から次へと変えて、親のメールアドレスも使って、これはいわゆる誘引行為ではないんですけれども、実在の他人の悪口を次々と書き込んで大混乱が起きた。それで、非常に人間関係、不信ということで校内で大問題になったので、朝からその生徒を呼んで、停学にするか、あるいは、停学にしたところで事の本質はおさまりませんので、どのように指導したらよいのか、学校長を初め、みんなで朝からけんけんがくがくと議論をしておるということだそうであります。

 学校側としても、こういう出会い系サイトを使った、いわゆるいじめに近いような、他人をかたって、そしてメルアドもどんどん変えてしまう、こういう状況でトラブルが起きてしまうというようなことが初めてのことなので、どう対応してよいのかわからない、だからこそ、現場で子供も含めてよく話し合って対応していかなきゃいけないな、こんな状況です。馳さんも、もしきょう国会で議論をされるならば、こういうことも紹介していただきながら、当然我が校でも、いわゆる出会い系サイトを利用した誘引行為、援助交際等が数多くある、こういう実態も報告してくださいました。

 その学校では、携帯電話を学校に持っていってはいけないそうですが、8割の子供は持ってきているそうであります。決まりをつくって守っていただこうと思っても、イタチごっこのこういう携帯電話を使ったような最新的な犯罪というのは、なかなか難しいものだなと私も改めて思いました。

 この法案は、そういう意味で言えば、一定の抑止力を持つことはできるけれども、まだまだ不十分である。利用する側の児童が年齢を詐称するとか、今の報告にお出しいただいたように、他人をかたるとかどんどんメールアドレスを変えるとか、親のメールアドレスまで使ってしまって、またそれも使ったらすぐに変更してしまう。これこそイタチごっこでありまして、こういう新しい情報機器を使った犯罪に対応して、一定の抑止力はあるけれども、まだまだ不十分である。

 こういう実態を勘案しながら、今後、どのように行政側としても対応していくのか。これはだれに聞こうかな、警察庁に伺います。私の話もちょっと参考にしながら、警察庁、どうでしょう。

 

○瀬川勝久政府参考人(警察庁生活安全局長)

 児童の間に携帯電話が非常に今普及をしているというのは委員御指摘のとおりでございまして、例えばこの携帯電話の購入につきましても、親の承諾がなければ本来できないものと承知をしておりますけれども、そこを、御質問にもありましたように、親に承諾を得ずに黙って購入をするという例も随分あるところでございます。

 この携帯電話は、いつでも、どこでも、だれにも知られないような形で利用できるということから、非常に便利なツールではありますけれども、判断力の未熟な児童にとりましては、なかなか正しい使い方というものができない。先ほど申し上げました有識者の研究会の中でも、児童に対してそういった携帯電話あるいはインターネットの正しい利用の仕方について指導するということについては、非常に難しいという御発言もあったところでございます。

 それから、今御質問の中にございました、他人をかたる、年齢を詐称できるのではないかという点でございます。

 この御審議いただいております法案では、第八条で、児童でないことの確認をするということを事業者の責務として定めているところでございます。これにつきましては、御指摘のように、年齢を詐称すれば、パスできるといいますか、効果がないのではないかという考え方もできようかと思いますが、私どもといたしましては、出来心や興味本位で利用しようとする児童にとりましては、年齢を詐称するということについては抵抗感があるというふうに考えられます。やはり一定の効果があるのではないか。

 現実に、平成14年中に検挙されましたいわゆる出会い系サイトを利用した児童買春事件が787件ございます。これにつきまして、被害児童の年齢の記載状況を調査しております。判明いたしましたのは725件でございますが、そのうちの673件、92.8%は自分が児童であるという旨を明確に記載しております。

 これは、一方で児童の商品化、児童の性の商品化というものを裏づけるといいますか、うかがわせるものではないかと見ておりますが、こういったことからしましても、この法の八条で予定しております年齢の確認は自主申告をさせるという考え方でございますが、これにつきましても一定の効果が期待できるのではないかと考えております。

 それから、もう一点申し上げますと、仮に児童が18歳以上の者であるというふうに年齢を詐称して利用した場合のことを考えますと、サイト上では外形的にこれが児童であるかどうかということがわからないわけでありまして、児童買春を行おうと思っている者がいたとすれば、その者にとっては児童買春の相手方を探すのに著しく不便になるわけでありまして、インターネット異性紹介事業を利用した児童買春の被害を防止する上で効果があるものというふうに考えているところでございます。

 そのほかにも、本法では、事業者規制でありますとか、保護者を初め関係者の責務とかを規定しておりまして、こういった総合的な対策によりまして、いわゆる出会い系サイトの利用に起因した児童買春等の犯罪による児童の被害を減少させていくことができるというふうに考えております。

 インターネット社会には次から次へとまた新たな形態の問題がいろいろ出てこようかと思いますが、その発生実態に応じまして、警察といたしましてもできる限りの対処をしてまいりたいと考えているところでございます。

 

○馳浩委員

 今の答弁をお伺いして、大臣、一定の抑止力しか持てないというのがまさしく明らかになったわけですね。ちょっと警察庁も楽観的過ぎるなと私は指摘をしておきたいと思います。

 私としては、本法案の規制は最低限必要なものとして賛成をいたしますが、もっと青少年を有害情報から守るためにこの法案にさらなる肉づけをすべく、将来的課題として幾つかの具体的提案を行いたいと思います。

 まず、携帯電話会社やプロバイダー等、法案で言うところのインターネット異性紹介事業に必要な役務を提供する事業者に対して、出会い系サイトには児童への接続をさせない、フィルタリング規制などの法的義務を課していくべきだということであります。そもそも、第七条において児童による出会い系サイトの利用そのものを禁止しているわけですから、この利用禁止を徹底させるためには接続禁止が最も効果的だと思います。この提案に対しての認識を総務省と警察庁に伺いたいと思います。

 関連して、今提案した接続禁止義務を例えば努力義務として制度化すべきとした場合は、携帯電話会社等に課せられる第三条の児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する責務にこの努力義務が含まれると解釈できると思いますが、いかがでしょうか。これは警察庁にお伺いいたします。

 

○有冨寛一郎政府参考人(総務省総合通信基盤局長)

 携帯電話会社あるいはプロバイダーなどにおきまして、利用者側からの要望に基づきまして、フィルタリングによって出会い系サイトの接続を行わない、このようなサービスを提供するということにつきまして、未成年者による出会い系サイトの利用抑止をする、そして、こういったサイトを利用する未成年者が犯罪に巻き込まれないようにするということについては、先ほど議員からもいろいろありましたけれども、一定の抑止力効果はある、このように思っております。

 ただ、携帯電話会社あるいはプロバイダー等の電気通信事業について申し上げますと、これは、電気通信事業法、検閲の禁止というような法律の規定がございます。したがいまして、通信内容の適否を事前に電気通信事業者が判断して接続の可否を決めるというようなことについては、現状の法律は基本的には想定していないのであります。それからもう一つは、携帯電話会社などのいわゆる第一種電気通信事業者、これについては、電気通信事業法上は役務提供義務というものが課せられておりまして、したがって、利用者からの要望がないのに一方的に電気通信事業者の判断で接続拒否するということはなかなか難しいというのが今の仕組みでございます。

 したがいまして、この電気通信事業者に対しましてどうするかということでございますが、現段階で申し上げますと、未成年者は一律に出会い系サイトに接続させないような法的義務を課すということは基本的に難しいのではないか。しかしながら、青少年保護の観点から、利用者が選択できるようなサービスを導入していくことが望ましいのではないか、このように考えておりまして、実際に各携帯電話会社におきましては、利用者からの要望ということが前提でございますけれども、その要望に応じまして、公式サイト以外に接続させない、こういうようなサービスの導入を検討しておりまして、一部にはこの夏にもスタートしたいという意向が伝えられてきております。

 また、既に大手プロバイダーの中には、利用者からの要望に応じたフィルタリングサービスというものがございますが、フィルタリングをかけるサービスを導入しているところもあるということでございますので、私どもといたしましては、自主的な努力、業界の自主規制の取り組みというものを見守ってまいりたい、このように思っておるところでございます。

 

○瀬川勝久政府参考人(警察庁生活安全局長)

 未成年者に対して、児童に対して一定のサービスについて接続をさせないようにするということにつきましては、今、総務省の方からも御答弁がありましたように、インターネット社会全体のあり方という問題の中で考えられるべきことかなというふうに思っているところでございます。

 本法におきましては、プロバイダーや携帯電話会社等に対しまして、今委員の御質問にありましたフィルタリングサービス等の提供につきまして、具体的に義務づけるという規定は確かに設けてはおりません。これは、プロバイダー等の中には大小さまざまな事業者が存在をするということから、これらに一様の、一律の法律上の義務を課すことは過剰な負担を強いることになるのではないかというふうに考えたところであります。

 しかしながら、御指摘のとおり、プロバイダーあるいは携帯電話会社が適切なフィルタリングシステムを開発導入し、また、顧客に対して、その内容について十分に説明をし、サービスを提供するというようなことにつきましては、この法案の三条に「児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する」という責務の規定がございますが、これはまさにこの責務規定に沿ったものとして好ましいものというふうに考えており、そのような努力がなされることを私どもとしては期待をしているということでございます。

 

○馳浩委員

 今のは大事な答弁だったですね。第三条の児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する責務に含まれる、合致すると、警察庁としては大きな期待をしておられるわけですよ。

 であるならば、こういったフィルタリングサービスなどについても、携帯電話会社だけではなく、また、先ほど総務省の方が答弁されたように大手のプロバイダーだけではなく、自主規制を行っていない中小のプロバイダーにもこういった点を広げていくべきではないのでしょうか。そういう指導を行っていくべきではないのでしょうか。自主規制を求めていくべきではないのでしょうか。これがいわゆる国や事業者としての責務、第三条に合致する、警察庁として大きな期待のあるところでありますし、法案を審議される皆さん方としても、この法案の趣旨にのっとって、技術的にできるのであるならば、そういう方向で指導していくことも一つの責務であろうと私は思います。

 この指導というものは、どうなんでしょう、表現の自由とか通信の自由を侵すようなものではないと私は思いますよ。総務省、どう答弁されますか。

 

○有冨寛一郎政府参考人(総務省総合通信基盤局長)

 今、議員御指摘のとおりでございまして、技術的には可能である。もちろん、すべてが可能というわけではありませんけれども、今の段階でできることはやるべきであるというのが一つの基本的なことで、それをすべてのプロバイダーに対しまして求めるということについて、私どももそうしたいと思っております。

 ただ、現実問題といたしましては、今の何万もある小さいプロバイダーに対しまして個々に言えるかというと、物理的にはなかなか難しい点がございます。しかし、こういった点が望ましいという観点からいいますと、できる限り、大手だけではなくて、事業者の団体がございますが、そういったことを通じて、小規模なプロバイダーも含めて、こういったフィルタリングサービスの導入も呼びかけていきたい、このように思っておりますし、またもう一つは、利用者に対しましても、こういったサービスがある、こういう意義があるということについても、機会をとらえまして周知も図っていきたい、このように思っております。

 

○馳浩委員

 この法案が成立いたしましたらば、附則二条にもありますように、3年後、その成果を見て見直すわけですから、十分な成果が得られていないのであるならば、私が提案をした、児童への接続自体の法的禁止も検討課題にしていただきたいと思います。

 関連して、今答弁にもありました、例えばドコモのフィルタリングサービスについてですが、実はこれには問題があります。というのは、携帯電話の販売時には、公式サイト以外への接続を拒否する旨の申請を買い手が行わなければ、出会い系サイトを含む一般サイトへの接続が自動的に行われてしまう結果になっているはずです。これに間違いはありませんね。これではフィルタリングサービスをやっている意味はありません。この点を、監督官庁として総務省はどんな指導をしているのですか。

 あわせて、私見を言うならば、携帯電話販売時には出会い系サイトを含む一般サイトに接続できないようにしておき、販売後に申請があったもののみに、初めて公式サイトのみか一般サイトも含む接続かの選択ができるようにし、その際、あらかじめ出会い系サイトの問題点も説明させるような形にしておくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。これは、先ほどの答弁にもありましたが、技術的には可能なはずであります。一条項を設けて、申請するか申請しないかという、これを契約書に設ければいいだけの話だと思いますが、いかがでしょうか。

 

○有冨寛一郎政府参考人(総務省総合通信基盤局長)

 NTTドコモのサービスでございますが、これは、今先生言われたとおり、初めに利用者側からの申し出があって初めて公式サイト以外のサイトへの接続を拒否するというようなサービスの内容だと承知をしております。

 ただ、これは、委員御指摘のとおり、いろいろな議論があると思いますけれども、一般的に言いますと、今、いわゆる公式サイトは3000ちょっとでございます。一般サイトは60000以上ございまして、一般的には、こういった一般サイトに接続をできないということになりますと、いわゆる一般サイトの利用についても大きく制約を与えかねない。

 御議論があるところだと思いますけれども、私どもは、現段階では、まずはNTTドコモの計画しているようなサービスがちゃんと導入されて、そして契約時に、NTTドコモとかあるいは代理店、これが、そのサービスの内容あるいは出会い系サイトの問題点、こういった点につきまして周知、説明がきちんと行われる、そういったことを通じてユーザーによる適切な選択が可能になっていく、まずはこれをきちっと期待したい、このように思っております。

 ただ、総務省といたしましては、これはいろいろなケースがあると思いますので、事業者とも必要な意思疎通を図りながら、より効果的な取り組みが展開できないか、これについては十分努力をしていきたい、このように思っているところでございます。

 

○馳浩委員

 大臣、今ちょっと聞いておられてわかったと思いますが、携帯電話を販売する末端の代理店がユーザーに対していろいろ指導していただくようにこれからやっていただくんです。そこを所管する役所はどこか、御存じですね。経済産業省なんですよ。

 きょう、経済産業省、私呼んでいなかったかな。呼んでいますね。

 今の議論を聞いていて、どうですか。いいですか、この法案、主に所管しているのは警察庁さんですね。通信の問題に対して、今総務省さんが非常に前向きに答弁いただきました、将来的な私の提案に対しても。末端で、販売店、代理店、経済産業省なんです。今まで議論を聞いておられて、どう思いますか。

 

○松井英生政府参考人(経済産業省大臣官房審議官)

 今、委員御指摘のとおり、さまざまな問題が末端の販売店の対応でうまく解決できる可能性があることは御指摘のとおりであるというふうに思っております。

 ただ、それによりましてさまざまなサービスがすべて規制されるようなことになりますれば、電気通信に関する経済の活性化に阻害を与えるおそれもありますので、十分にこういう問題が生じないように対応すべく、末端の販売業者に対しても鋭意普及啓蒙をしていく必要がある、こういうふうに思っております。

 

○馳浩委員

 私は、さまざまなサービスが規制されるようにという趣旨できょう質問をしているのではありません。いいですか、法案の趣旨にのっとって、末端の代理店において販売をされるときにしっかりとした対応がされなければだめですよということを私は申し上げていて、そこの所管は、警察庁でも総務省でも文部科学省でも内閣府でもなく経済産業省なんですよということを私はあえて今申し上げたことなんですね。

 いいですか、さまざまなサービスの規制を私は求めているのではありません。極めて限定的な、少年たち、児童たちの健全な保護育成に対して必要な法の趣旨に基づいた対応が求められる現場は、経済産業省さん、あなた方の対応する代理店なんですよということを申し上げているのでありまして、その趣旨はわかっていただけると思いますね。そういうことなんです。

 次の質問に移ります。

 ここで、昨年12月29日の読売新聞朝刊の社説を紹介したいと思います。この社説では、「出会い系サイトの運営者や携帯電話の販売者も、少女らがサイトを利用できないよう防止策を講じるべきだ。実情を見て見ぬふりをすることは、少女売春の幇助者と批判されても仕方がない。」と言っています。私もまさに同感でありまして、実質的な出会い系サイト関連の犯罪幇助と言わざるを得ないと思っています。

 そこで、総務省にお聞きしますが、出会い系サイト開設者や携帯電話会社等は、これにまつわる一連の犯罪について責任のない中立な立場にあり、犯罪が起こるのはあくまで利用者側に問題があると認識しているのかどうかを伺いたいと思います。どうも総務省の対応が業界寄り過ぎていて、青少年の健全育成に消極的過ぎると思うのですが、いかがでしょうか。

 また、警察庁には、先ほどの私の行政指導の提案、つまり、携帯販売時には接続できないようにしておいて、申請するときに、する、しないという、契約書にこういう一条項を入れるという話についての提案について、どういう認識を持っておられるか、お伺いしたいと思います。

 

○有冨寛一郎政府参考人(総務省総合通信基盤局長)

 出会い系サイトの開設者のほかに、携帯電話事業者等につきましても、いわゆる出会い系サイトに必要な役務を提供する事業者の一つであるというようなことでございますので、これは出会い系サイトを利用した未成年者が売春行為による被害に遭わないようにするというために可能な対応を行うことが望ましいというふうに考えておりまして、先ほど、委員言われましたように、責任がない中立の立場で、犯罪を行うのはあくまで利用者の立場だというような観点だけで取り組んでいるわけではございません。

 私どもといたしましては、青少年の健全育成の重要性というものは十分認識をしておりまして、かねてから、青少年にとりまして有害な情報のアクセスを防ぐための、先ほどから出ておりますが、フィルタリング技術というものの開発や実験も行ってきておりますし、また、昨年10月の青少年育成推進会議の申し合わせ、こういったことについても、これを踏まえて電気通信事業者や事業者団体等に対する対応も呼びかけております。これらを踏まえまして、現実には、各電気通信事業者等におきまして対応策の検討や実施を図ってきているものというふうに承知をしているところでございます。

 

○瀬川勝久政府参考人(警察庁生活安全局長)

 委員から、大変貴重な御提案、御意見をいただいておるというふうに受けとめておりますが、私どもといたしましては、昨年の10月21日に、関係省庁の局長クラスでございますが、青少年育成推進会議というものがございまして、そこにおきまして、「「出会い系サイト」に係る児童買春等の被害から年少者を守るために当面講ずべき措置」ということで、申し合わせを行っております。今御質問の中にもございました、例えば広報啓発活動の推進でございますとか、あるいは事業者に対する協力要請でありますとか、もちろん取り締まりの強化、そしてまた、今御審議いただいていますことに関係しますのは、法規制の検討ということについて申し合わせをしているところでございます。

 今後とも、関係省庁、関係機関と協力をいたしまして、児童を出会い系サイトに係る犯罪被害から防止するための努力を一生懸命努めてまいりたいと思っております。

 

○馳委員

 続きまして、フィルタリングサービスと、その前提になるサイトの格付について質問をします。

 そもそも、フィルタリングサービスは、サイトの適正か不適正かの格付が適切に行われて初めて機能するもので、その格付が難しいものであります。

 そこで、格付を含むフィルタリングサービスについては、ドコモさんのように自主的取り組みもありますが、公的な取り組みも必要です。この点について、財団法人インターネット協会においてその事業が行われており、その促進のための公的支援もなされていると聞きますが、法第五条二項の規定に基づき、今後、助成等なお一層の促進を図るための措置を充実させるべきと考えますが、経済産業省の見解はいかがでしょうか。

 あわせて、学校での有害サイトに接続できないようにフィルタリングシステムを導入すべきと思っておりますが、どうなっているのでしょうか。現状では、普及率はまだ七、八割と伺っておりますが、当然100%にすべきである話であります。文部科学省にお答え願いたいと思います。

 

○松井英生政府参考人(経済産業省大臣官房審議官)

 お答えいたします。

 経済産業省におきましては、平成8年度から所管の財団法人などに委託いたしまして、フィルタリングソフトの開発及び無料配布を実施してきております。本年度につきましても、インターネットにおけるコンテンツレーティング及びフィルタリングに関する調査研究事業といたしまして、財団法人インターネット協会と委託契約を締結いたしました。

 今後とも、このフィルタリングシステム事業の重要性にかんがみまして、関係省庁とも連携をとりつつ、その事業の促進のための支援を行ってまいりたいと考えております。

 

○矢野重典政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)

 学校におきまして子供たちがインターネットを利用する場合に、子供たちが有害情報を含むホームページを閲覧できないように、学校単位やあるいは教育用ネットワーク全体でフィルタリングソフトなどを用いてアクセス制御などを行うなど、さまざまな工夫がなされているところでございまして、このようなフィルタリングソフトが導入されている公立学校は、委員御指摘のように、平成14年3月現在で、全体の約8割を超えているところでございます。

 我が省といたしましても、フィルタリングソフトの活用を含めまして、有害情報への対応方法でございますとか指導方法につきまして解説をいたしました教員用ガイドブックを作成して、各学校に配布して、学校におけるフィルタリングソフトの活用を推進しているところでございます。

 また、フィルタリングソフトの維持管理を各学校単位で行うことは一般的には非効率でございまして、教育センター等で集中的に管理することが効果的かつ効率的であると考えられるところでございます。

 このために、文部科学省といたしましては、高度教育用ネットワーク利用環境整備事業というのを実施いたしまして、教育センター等に整備するフィルタリングに必要なサーバー類でございますとか、ソフトウエアに対する補助を行っているところでございまして、私どもといたしましては、今後とも、こうした事業を通じまして学校や教育センターにおけるフィルタリングソフトの活用を一層推進することといたしているところでございます。

 

○馳委員

 矢野さん、余りよくわからなかったんですけれども、要は、予算の問題、技術的な問題ですか、100%じゃないのは、フィルタリングソフトが普及していないのは。そんなもの、パソコン、インターネットを各学校に普及させるときに100%にするのは当たり前の話ですよ。これは何でですか。

 

○矢野重典政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)

 フィルタリングソフトにつきましては、今申し上げましたように、逐次、順次整備がされているところでございますが、これにつきましては、それぞれの学校単位でやりますと財政的に非常に非効率であるわけでございますので、私どもとしては、集中管理システムでやるように努めているところでございまして、そのために必要なサーバー類等の機器について補助をいたしている、そういう形で安全対策をきちんと進めるようにいたしているところでございます。

 

○馳委員

 わかりました。

 次に、質問のテーマを変えて、本法案の違反業者への措置についてお伺いします。

 法第七条の明示伝達義務違反や第八条の児童確認義務違反のサイト開設業者には、第十条で是正命令が出せますが、そもそも、違反後はこの出会い系サイト事業ができないような閉鎖命令等を出して排除できないのか、お伺いしたいと思います。

 

○瀬川勝久政府参考人(警察庁生活安全局長)

 この法律では、七条、八条の義務の履行を担保するために、十条で是正命令について規定をしておりますが、この是正命令につきましては、これに違反した者につきましては第十五条で「6月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」というふうに規定をされているところでございます。

 違反した業者について閉鎖命令ができないのかという御質問でございますが、インターネットの世界は非常に匿名性が高い世界でございまして、閉鎖命令という制度をたとえ導入したといたしましても、閉鎖命令の対象となるサイトでありますとか、事業者の同一性の判断とかいうようなものがなかなか困難ではないだろうかというふうに思います。

 また、そもそも営業という形をとらないインターネット異性紹介事業が多いわけでございますので、閉鎖命令ということになりますと、営業許可制度がその前にあるということにもなろうかと思うんですが、こういったものについて、今、許可制という業規制方式をとれるかということについても問題がちょっとあるのではないかなというふうに思っております。

 したがいまして、この法案では、さっき御説明しましたように、是正命令に違反した者については懲役刑を含めた罰則を設けておりまして、このことによりまして七条及び八条の義務の履行を担保しようというふうに考えているところでございます。

 

○馳委員

 つまり、七条、八条違反を起こして、しばらく是正命令に従っては再度七条、八条違反を繰り返す、こうやって十五条の罰則を免れる業者が多く出てくるのではないかと思います。また、もうけのよさから、罰金を支払って堂々繰り返し違反を重ねたり、同じ業者が別の違法サイトを開設したりするかもしれません。この辺をどう警察庁として考えているのか。ここは、罰則のかさ上げも今後の検討課題ではありませんか。こういう悪質な再犯業者は強制的にそのサイトを閉鎖させ、今後は許可制にして、簡単に開設させないようにすべきではありませんか。

 あわせて、民事的閉鎖手段もどんどんやるべきだと思います。通常、プロバイダー等はサイト開設者との間で利用約款を結び、違法行為があれば契約が解除できる旨の規定があるはずです。ならば、七条、八条違反が明確であれば、利用約款に基づき契約を解除するようプロバイダー等に指導すべきと考えますが、監督官庁の総務省の見解はいかがでしょうか。ちなみに、業界としてはニフティがこういう取り組みに入っていると伺っております。それじゃ、警察の方から。

 

○瀬川勝久政府参考人(警察庁生活安全局長)

 許可制をとるべきではないかという御質問の点につきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、これは非常に種々雑多な営業形態がございまして、無料のサイトも非常に多いということでございますので、業規制としてこれをとらえていくにはなかなか問題もあるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。

 ただ、本法案の第三条では、プロバイダーや携帯電話会社には児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する責務というものが明示をしてございますので、今、委員の御質問にありましたような、約款に基づく措置というようなことを自主的にとられることにつきましては、この法律の考え方からしても大いに期待をされるところだと思います。

 また、罰則の引き上げについての御指摘がございましたけれども、これにつきましては、今後の本法の効果、運用の実績というものを見ながら検討してまいりたいと考えております。

 

○有冨寛一郎政府参考人(総務省総合通信基盤局長)

 今、委員御指摘の例がありましたけれども、ニフティのような大手プロバイダーにおきましては、その契約約款におきまして、利用者側において法令に違反する情報の発信を行うというような行為があった場合、これにつきましては、警告等を行った上で、契約解除等あるいは利用の停止等、こういったことができるというような旨を盛り込んでおります。

 また、いわゆる電気通信事業者団体におきましても、モデル契約約款、こういったものを示しておりまして、今申しましたようなものと同様の条項を盛り込んで、その会員向けに採用を促しているというのが現実でございます。

 総務省におきましては、プロバイダーとサイト開設者との個別の契約につきまして、そのすべての状況を把握して指導するということはなかなか難しい点がございますけれども、明確な違法行為があった場合におきましては、約款の規定に基づく契約上の権限というものを各プロバイダーが適切に行使することが望ましい、このように考えております。

 したがいまして、総務省といたしまして、青少年の健全育成の重要性にかんがみまして、事業者団体を通じたこうした条項を含むモデル約款の周知徹底、こういったものを図りながら、適切な契約約款の採用を促してまいりたい、このように思っているところでございます。

 

○馳委員

 今の答弁も極めて重要な答弁でありまして、やはりプロバイダー等と開設者との間での、民間と民間のお約束ですから、こういったものに行政がああしろこうしろと口を挟むのもあれですが、問題が問題ですから、そういう約款をつくって、違反した人はすぐもう契約を打ち切りますよ、サイトを閉鎖しますよ、それを促すようなガイドラインをつくって、そのガイドラインを指導することは、総務省としては何ら規制とか縛りをかける意味ではありませんから、重要なポイントでありますから、その辺十分考えて対応していただきたいと思います。

 最後に、この法案の一つの痛切な問題は、法第六条を通じて、いわゆる児童、少女も犯罪者になるという問題であります。

 私は、本当にやむを得ない措置として、支持というか、認めざるを得ないと思っております。九割方が少女側からの誘引に基づく犯罪行為が起きているという実態を考えれば、法第六条に基づく児童、少女たちに対する罰則というものはやむを得ないと思っておりますが、こういう実態を踏まえて、警察庁そして文部科学省、今後どのように法に基づいて教育、普及、啓発体制を整えていくか、その点をお伺いしまして、質問を終わらせていただきます。

 

○瀬川勝久政府参考人(警察庁生活安全局長)

 私どもといたしましては、これまでも出会い系サイトにかかわる児童買春等の被害から児童を守るために、児童はもとより、保護者、国民一般に対して広報啓発を行ってきたところでありますが、本法が成立いたしましたならば、関係省庁、関係事業者それから各団体、PTA等の協力も得まして、広く国民に対して周知徹底に努めてまいりたいと思います。

 特に、御指摘のとおり、児童自身に対して本法案の内容についてよく知らせる、理解をさせるということがこの問題については非常に重要だというふうに考えておりまして、今回の法案につきましては、学校関係者あるいはPTAからも強い要望が私どもにも寄せられております。

 これらの方々と十分協力をいたしまして、インターネット異性紹介事業を利用することが非常に危険であるということ、それから、この新しい法律によりまして不正誘引行為というものを行ってはならないことになったというようなことにつきましての児童に対する教育、啓発に特段の配意をしてまいりたいと考えております。

 

○馳浩委員

 これは政府としての取り組みですから、矢野局長、申しわけありませんが、大臣に答弁を最後にいただきたいと思います。

 

○谷垣禎一国務大臣(国家公安委員会委員長)

 馳委員の御質疑をずっと拝聴させていただきまして、こういう法案をつくるのはなかなか難しいところがあるのは事実でございます。

 一つは、新しい技術ができてきて、これは大変な便益をもたらすと同時に、どんな技術もそうですが、新しい害悪を流す可能性というのもある。これに対決していこうというとき、二つ問題があると思うんですね。

 一つは、新しい技術的な問題ですから、それに対処していく技術的な処方が確立できているかどうか。警察も、今のようなときには、ネット上の犯罪と申しますか、サイバー犯罪というものには、新しい技能、技術を開発しなければならないという面もあります。それと同時に、新しく成長していく分野を抑え過ぎてもいかぬという問題が他方あるわけですね。

 それからもう一つは、今まさに議員が指摘された点でありますけれども、特にこのような問題でありますと、利用する方といいますか、本法案の場合には子供、児童ですね、児童の権利と申しますか、あるいは健全な成長というものに対してどういうふうに対応していったらいいのかという問題があります。

 私は、最終的には、犯罪の取り締まりと同時に、教育とかそういうものが充実してこなければ、我々の直接の問題は、このインターネットの利用によって凶悪な犯罪に巻き込まれる子供にどう対応していくかというのが警察を所管する国家公安委員会の基本的な責務でありますから、それには懸命にやらなければなりませんが、同時に、こういう問題に対応しながら、警察だけでできることは限りがあるなという気持ちも持たざるを得ません。

 家庭、地域社会、教育、こういうところとどう連携をとっていくかというのは、我々も全力を傾けて、もちろん警察が全部できるわけではありませんけれども、むしろ警察を所管する国家公安委員長というよりも一人の政治家として、いろいろな知恵を傾けていかなければならないのじゃないか。警察を所管する立場としても、どういうことがあり得るか、今後も、新しい技術の発展に応じて、新しい害悪にどう対決していくかという思いを込めて工夫をしなければならないな、こう思いながら、馳議員の質疑を伺った次第であります。

 

○馳委員

 ありがとうございました。


   詳しくは青少年問題に関する特別委員会議録をご覧ください
(特別委員会)
 


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