第百五十六回  国会

衆議院
青少年問題に関する特別委員会議録 第三号
平成15年4月23日(水曜日)

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○青山二三委員長

 次に、馳浩さん。

 

○馳浩委員

 私は、きょうは、リプロダクティブライツについても質問しようと思っていたんですが、先ほどの水島委員と米田副大臣のやりとりを拝聴しておりまして、ほぼ言い尽くされたのかなと思っております。また、厚生労働省として国民に理解していただこうとするリプロダクティブライツということと、文部科学省として、子供たち、いわゆる未成年、青少年への教育における対応の仕方というものには一定の配慮があってしかるべきである、こういったところに集約されると思います。

 先ほど、坂東局長は、いわゆる御自身のリプロダクティブライツについての見解のところで、答弁をしようかなと手を挙げておられましたので、水島さんが先ほど指名されませんでしたので、私の方から、坂東さん、いわゆるリプロダクティブライツの見解についての御答弁で、先ほど何か言いたそうだったので、どうぞしゃべってください。

 

○坂東眞理子政府参考人(内閣府男女共同参画局長)

 ありがとうございます。

 あのときは、7月の私の答弁についての御質問だったので、言葉足らずだったなということも含めて、答弁する機会を与えていただきたいと思って手を挙げてしまいました。

 そのときに、水島委員からの御質問にありましたように、リプロダクティブヘルス・ライツという言葉が、恐らく94年のカイロ会議以来使われてきている言葉ですが、片仮名の言葉、そしてまた、それを翻訳した、性の自己決定権という言葉で使われておりますけれども、その具体的な中身が、まさしく先ほど御指摘いただきましたように、性的な対人関係における主体性を強化するとか、あるいは異性の性的な心理や生理について正しい知識を得られるようにし、いたわりの精神、男女平等の意識に根差した行動を選択できる力をはぐくむとか、特に、みずからまたは相手の望まない性行為を確実に防いでいけるようにすべきであるといったようなことを、もう少しかみ砕いて表現をする、そして、そういう考え方をもっと皆さんに理解していただかなければならないなということを申し述べたいなと思ったところです。

 どうもありがとうございます。

 

○馳浩委員

 まさしく、やはりリプロダクティブライツと言われる、特に産む、産まないの権利のところで、これは青少年に対して教育の現場で指導される場合には、当然、我が国には母体保護法というものがあるわけでありますから、中絶に関しては非常に限定的に取り扱われているのであって、こういったものを、権利があるかないかという論争に持ち込んでいくのではなくて、やはり十分な配慮を持った教育の仕方を、これはまさしく文部科学省も、教員の研修に当たって御配慮をいただきたい、この点は私も主張しておきたいと思います。

 きょうは、各自治体で制定されております男女共同参画社会に関する条例、この問題点について幾つか質問をさせていただきます。

 まず御質問させていただきたいのは、言葉の整理であります。日常用語で使われる男らしさ、女らしさ、生物学的に男女の性別をあらわすセックス、それから社会的、文化的に形成された性別、性差をあらわすジェンダー、これはどういう関係にあるのか、言葉の整理をしていただきたいと思います。

 また、政府は、一方的に男らしさ、女らしさを否定するものではないと答弁されておりますが、厳密な線引きができないまでも、ある程度の類別、つまりは、男女共同参画社会を実現していく上で、明らかにふさわしくないもの、その逆に全く問題がないもの、時と場合によってはふさわしくない、ケース・バイ・ケースのもの、このくらいの類別といったものは具体的事例を通じて明らかにしておいてもよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○坂東眞理子政府参考人(内閣府男女共同参画局長)

 お答えいたします。

 御指摘のとおり、日常的に使われる男らしさ、女らしさとは別に、生物学的に男女の性別をあらわすセックス、あるいは社会文化的に形成された性別を表現するジェンダーという言葉がございますが、男らしさ、女らしさというのは、社会や状況、社会的な環境によって大変多様な意味を持っておりまして、いわゆる生物学的な性差、セックスにかかわらず、多くの男性も女性も、男らしさ、女らしさと言われる特性をともに備えている。

 例えば、優しさとか思いやりとかというのは女らしさのイメージで使われることが多いんですが、馳先生はとても優しい男性だと思いますし、同じように、例えば決断力がある、責任感があるという言葉は、比較的これは男らしい特性だというふうに言われがちですけれども、これはもう本当に、男性、女性を問わず、社会的に責任のある仕事をしていく人たちは皆そういった決断力、責任感を求められているわけで、男らしさ、女らしさということについて線引きをするというのは非常に難しいのではないかなというふうに思っております。

 いろいろ学者の方たちの御意見ですと、それはやはりセックスによって、生まれつきの生物学的な差によって少し傾向は違う。しかし、それが、育てられる環境とか周りの影響によってさらにその傾向が拡大するというふうなことが言われております。

 いずれにしましても、それが、例えば優しさのもとはセックスなのかジェンダーなのかと言われても、両方が影響しています。それぞれの特性によって、両方が影響しているんですけれども、その度合いが大きいものと小さいものがあって、そこをぴったしと線で示すということは非常に難しいのではないかなと思います。

 そこで、どういうふうに我々、国として対処していくかというお尋ねだろうと思いますけれども、男らしさ、女らしさにつきまして、私は女らしい女性が好きだとか、男らしい男性が好きだとか、自分はもっと女らしくなりたいとか、男らしくするように努めようとか、あるいは子供を女らしく、男らしく育てたいというようなことは、もう個人の好み、美意識、哲学等に属する部分でございますので、それは国あるいは行政が関与すべきではないと思います。

 しかし、男らしさ、女らしさが、男はこうあるべきだ、あるいは女はこういうふうに振る舞うものだというふうに決めつけを生んで、それによって個人の能力、個性、多様性の発揮に支障を生じたり、あるいはまた差別的な取り扱い、人権の侵害を生じたりすれば、それは、男女共同参画社会の形成に支障を生じるということで強く規制していかなければならないと思います。

 ということで、この問題で地方自治体の男女共同参画行政がいろいろな議論にさらされているということは、国としてもいささか残念に思っております。もっと行政としてやらなければならないことがたくさんあるんだ、この差別的な取り扱いの是正といった実質的な男女共同参画社会の推進をすることを希望しております。

 

○馳浩委員

 そこで、そうはいうものの、各自治体の条例に基づいて、いろいろな苦情などが出ております、問題等も出ておりまして、具体的にちょっと聞いてみたいと思います。

 埼玉県、公立の男子高校5校、女子高校11校ありますが、これを共学化するよう埼玉県の苦情処理委員が県教委に勧告しています。この勧告内容自体を政府はどう判断されますか、お聞きしたいと思います。

 私の個人的な意見ですが、男女共同参画社会が目指すものは、一人一人が自分らしい個性を発揮できる社会の確立であり、その自分らしさを追求して活動していく上でジェンダーが障害になるとき、このようなジェンダー慣行を否定していこうとする社会だと思います。

 であるならば、青少年が高校を選択するに当たり、男子校、女子校、または共学を選ぶかは、まさにその青少年の自分らしさ、個性の追求の一環としての選択であり、ジェンダーが障害になってはいない事例だと思います。したがって、この勧告は行き過ぎたジェンダー否定と私は考えますが、政府としてはどうお考えですか。

 また、これは埼玉県の問題ではありますが、文部科学省にお伺いいたします。

 文部科学省の施策としては、全国にある公立の男子校34校、公立の女子校114校に対して、ジェンダーの視点から共学に変えるような指導等の関与は一切行わないということでよろしいのか。さらに、国立において、筑波大学附属駒場高校が男子校、お茶の水女子大学附属高校が女子校ですが、国立の中高で男女別学校について、ジェンダーの視点から考えて共学化すべきと考えているのか、教えてください。

 

○坂東眞理子政府参考人(内閣府男女共同参画局長)

 埼玉県の苦情処理について今御指摘のような御意見が出されておりますことは承知しておりますが、埼玉県において、苦情処理委員会の方でそういった意見を出され、また、県の責任において対処を決められたというふうに理解しております。

 

○矢重典野政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)

 先ほど御指摘がございました勧告につきましては、埼玉県男女共同参画苦情処理委員による、共学化を進める立場からの一つの見解であるというふうに認識をいたしておりますが、文部科学省といたしましては、男女の共学、別学につきましては、地域の実情や学校の特色に応じて設置者が適切に判断すべきものというふうに考えております。

 また、一般的に、公立学校の共学化についてでございますが、我が省といたしましては、教育上、男女の共学は尊重されるべきものというふうに考えております。しかし、そのことは男女の別学を一律に否定するものではなくて、先ほど申し上げましたように、男女の共学、別学については、地域の実情や学校の特色に応じて設置者が適切に判断すべきものでございます。したがいまして、文部科学省といたしましては、公立学校の共学化について指導等を行うことは考えておりません。

 

○遠藤純一郎政府参考人(文部科学省高等教育局長)

 国立大学の附属学校についてのお尋ねがございましたので、お答えさせていただきます。

 附属学校は、現在、259校ございまして、その中で男子または女子のみの学校は、高等学校では、先ほど御指摘ありましたように、お茶の水女子大附属高校、筑波大学附属駒場高校の2校、中学校では筑波大学附属駒場中学校1校の3校、こうなっております。

 附属学校につきましては、大学・学部に附属をしておりまして、大学・学部の教育研究に協力している、こういう性格を持っておりまして、どのような生徒を受け入れるかということなどにつきましては、まず大学側において検討、決定されるべきものと考えておりまして、我が省といたしましてはその判断を尊重してまいりたい、こう考えております。

 

○馳浩委員

 埼玉県の事例でもわかりますように、この条例を通じて苦情処理の名のもとに各自治体の勧告や指導、助言が行われるわけです。愛媛県では、ミスコンテストにおける県の関与を中止するよう助言が行われています。このような勧告、指導、助言が各自治体で行われ、しかも、その内容がばらばらであった場合、政府はこれを放置するのかどうか。少なくとも、条例の運用が男女共同参画社会基本法や男女雇用機会均等法等に反して違法であれば是正していかなければならないはずです。これは、行き過ぎたジェンダー否定の場合も同様なはずです。

 また、具体的な苦情処理に当たり、自治体から政府にどう処理したらよいのかの相談がある場合も十分想定されます。そうであるならば、男女共同参画社会基本法等の判断基準が抽象的ですから、これを補完する意味で自治体の苦情処理が適法、適正かを判断する際のガイドラインみたいなものが不可欠だと思いますが、いかがでしょうか。

 

○米田建三内閣府副大臣

 男女共同参画社会形成のための施策は極めて広範囲にわたっているわけであります。したがいまして、施策についての苦情や意見を幅広く吸い上げ、必要に応じて施策の改善をも行う、地域の実情に合わせながらではありますが、そういう枠組みをきちんとつくる必要があるだろうというふうに考えております。

 地方公共団体におかれましても、取り組みの推進が図られているわけでありますが、現状では、こういう仕組みが講じられたばかりであるということが一つ、それからまた、取り上げられた事例の集積もいまだ十分とはいえない、そういう状況にあるのではなかろうかと思います。

 そこで、内閣府といたしましては、平成15年度におきまして、一つは、苦情処理担当者向けに、何が施策についての苦情に該当するのかという事例や苦情解決に当たっての視点、方法論などを内容とする苦情処理ガイドブックを作成し、それを周知すること。それから、第二点といたしましては、関係施策の苦情の処理につきまして、指導的立場にある者を対象とした研修を実施するなど、地域において施策についての苦情処理が円滑に行われるよう支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 

○馳浩委員

 日本一国といえども、北海道から沖縄まで地域性がありまして、各都道府県、市町村、こういう男女共同参画社会づくりのための条例を制定しようとすれば、その議会における論争もあるでしょうから、なかなか統一したものはつくれないとは思うのですが、余りにも行き過ぎたジェンダー論争を否定したり、逆に助長したりするようなことがないような対応というのは、政府でもガイドラインをつくって折に触れて対応し、その実例が積み重なって一つの良識として定着していけばよいのかな、こういうふうに思いますので、副大臣のリーダーシップを期待申し上げます。

 最後になりますが、男女共同参画社会基本法第二条にも定められている積極的改善措置、いわゆるポジティブアクションについて質問いたします。

 我が国のポジティブアクション規定は、いわゆる男女、特に女性に対する機会の平等を単純に保障しようとする形式的平等観を超えて、機会の平等が実際には保障されていない現状をかんがみて、機会の平等を実質的に担保しようとする意味での条件の平等を保障したのか、さらには結果の平等まで保障したのか、ここの違いを知りたいと思いますので、教えてください。

 

○坂東眞理子政府参考人(内閣府男女共同参画局長)

 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、男女共同参画社会基本法におきまして、さまざまな分野において活動する機会の男女間の格差が大変大きい場合、それを改善するために必要な範囲において、男女のいずれか一方に対し、活動に参画する機会を積極的に提供するポジティブアクション、積極的改善措置を講ずることは国の責務とされております。

 今、その積極的改善措置は、条件の整備なのか、結果の平等なのかという御質問がございましたけれども、これはあくまで実質的な機会の平等が保障されるように環境を整備していく、条件を整えていくということであって、結果の平等を強制するものではございません。

 

○馳委員

 そうであるならば、結果の平等から出てくる割り当て制、例えば、選挙の候補者について一定割合を女性にすべきだと法令で義務づけるようなことはしないという意味だと思うのです。

 しかし、限界事例が問題となります。

 例えば、政党が自主的に割り当て制をとるのは私的自治の問題ですから全く問題ありませんが、政党が割り当て制をとるなら、公的助成金を出したりして公的優遇措置をとることは法的に許されるのか否か、これが一つ。

 さらに、現実の政府の方針として、国の審議会委員への女性の参画を2005年末までに30%にするという目標設定がありますが、これら数値目標を設定し各種の促進策を講ずる、いわゆるゴール・アンド・タイムテーブル方式は、結果の平等を志向しており、法的に許されるのか否か。割り当て制同様に、能力主義の否定や逆差別の問題とも考えられるが、いかがでしょうか。

 そして、政府のポジティブアクションの今後の方向性をお聞かせいただきたいと思います。

 

○坂東眞理子政府参考人(内閣府男女共同参画局長)

 お答えいたします。

 積極的改善措置として、国は、今は、審議会の女性委員の登用について、2005年までに30%という目標を掲げて努力はしておりますが、そのために人材の情報を提供するとか、それぞれの担当省庁で適当な方を見つけていただく努力をしていただくということを期待しておりまして、結果の平等のために強制をするといったようなことはしておりません。

 また、現に、もう既に30%をはるかに上回っておられるような委員会もあれば、まだそのレベルに達しておられないところもあるということで、その条件の整備といいますか、そういった目標を掲げて努力をしていただくということで、クオータ、強制的な割り当てとは違うのではないかなというふうに考えております。

 それからまた、例えば、国立大学協会が2010年までに20%女性にというふうな目標を掲げて努力をしておられる。その努力は、例えば、各大学で女性の割合は何%になっているというふうな調査をなさって、それを公表なさるといったようなことをしておられることが、その積極的改善措置の取り組みというふうに思っております。

 海外の例を見ましても、例えば、公務員に積極的改善措置をするという法律をつくっている国でも、研修の機会を女性に特に与えるように配慮をするとか、いろいろな形で取り組んでおります。

 そしてまた、政党につきましても、基本的にはそれぞれの政党で自主的に目標を定めて取り組んでいただくというのが本筋ではないかと思っております。

 4月8日、男女共同参画会議の意見で女性のチャレンジ支援策について取りまとめておりますが、これも2020年までに30%になることを期待すると。各分野でその目標に取り組んでいただくということを考えております。

 それとあわせて、今、馳委員から御指摘いただきましたように、積極的改善措置というのはどういうことをやるんだ、どういう概念なのか、結果の平等を目指すということになると逆差別ではないか、いろいろな御疑問をお持ちの方もいらっしゃいますので、ポジティブアクション研究会といったような、専門家の方たちに集まっていただいて、きっちりと理論的に、どこまでポジティブアクションとして行うことが法的に問題がないのかということを平成15年度、16年度にかけて検討するというふうに考えております。

 

○馳浩委員

 最後になりますが、今行われております統一地方選挙においても、市町村長への立候補者、過去最高の女性の立候補者だそうであります。広島県などでは、町長選でお母さんと娘が争っていたりというふうなこともありました。

 女性が社会的な立場で、しかるべき公的立場において活躍できる場をより広げていこう、と同時に、家庭のこと等もあるでしょうから、できるだけそれを支えてあげられる社会にするのがこの男女共同参画社会基本法の目指すべきところであろうと思いますので、くれぐれも行き過ぎのないように、また配慮を十分できるような、そういう体制をとっていっていただきたいと申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。


   詳しくは青少年問題に関する特別委員会議録をご覧ください
(特別委員会)
 


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