参議院 第161回国会 内閣委員会 第9号

 平成16年12月1日(水曜日)
 (関係部分 抜粋)

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【途中より掲載】           

○黒岩宇洋君 無所属の黒岩宇洋でございます。

 今回のこの発達障害者支援法、大変悩ましい法案だと思っております。

 今日も議論かなりされましたけれども、定義についてもこれだけ議論が活発だということは、なかなかあいまいな点もあると。やっぱりレッテル張りの中で差別の助長とか、こういった不安もございます。現に発達障害児と診断されて九歳で自殺された方という、こういう例もございます。しかし、片や、この発達障害者として、児として認められないばかりに今まで本当に苦しんでこられた御本人、そして親御さんの存在もございます。なかなか懐かない我が子を、どうして懐かないんだろうと悩みながらも虐待してしまうといった二次被害といったような例もございますので、やはりそういう意味では私は真の発達障害者の皆様、そしてそれを取り囲む皆様への支援になってほしいというその思いで幾つかの質問をしたいと思っております。

 まず、質問は、この六月にこの委員会でも障害者基本法の改正ということを大変活発に議論しました。一つの大きな争点は、この権利というものを明記しなければいけないという、この基本理念に盛り込んだわけですけれども、私、今回のこの発達障害者支援法を見る限り、若干その権利の明記の仕方が甘いのではないかと。十二条に権利擁護とございますが、これは差別等からの権利を擁護するという若干消極的なものでございまして、私は、発達障害者の皆さんが発達していく権利を支援するんだという、私、このくらい積極的な姿勢が求められると思っているんですが、提案者、この点についていかがでしょうか。

 

○衆議院議員(馳浩君) この法律は、障害者基本法の枠内に含まれるものでありまして、障害者基本法では第三条第一項におきまして、すべて障害者は、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有するものとするとされており、この規定の趣旨は発達障害者についても当然及ぶものであります。

 また、本法律案の中で、発達障害者に対する支援に関する様々な施策が規定されておりますが、これらの施策は発達障害者の権利の擁護に資するために行われることは当然のことでございます。特に、第十二条における「国及び地方公共団体は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、権利擁護のために必要な支援を行うものとする。」と明確に規定しており、発達障害者の権利の保護を図っているところでございます。

 

○黒岩宇洋君 じゃ、厚労省にちょっとお聞きします。
 この障害者基本法の定義には、やはり発達障害者という言葉は含まれておりません。現実に身体障害者、知的障害者、そして精神障害者のこの三本の柱の谷間に位置付けられたといいますか、漏れてきたわけですね。これ現実的にそうだったわけですよ。このことに対して厚労省は、責任とは申しませんけれども、対応が遅れてきたことについてはどうお考えなのか、その点お聞かせください。

○政府参考人(塩田幸雄君) 障害者基本法の障害者の中には、原因のいかんを問わず、身体障害、知的障害、精神障害の状態にある人はすべての障害者が含まれるということでありますので、今回の法案の対象の方々も当然障害者基本法の対象になるということであると思います。ということでありますけれども、これまでの我が国の障害者法制は、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、身体障害者福祉法という個別の法制の発展の中で対策が立てられたということで、ややもすると谷間の、今回の法案の方々の多くはその制度の谷間になったということでありまして、一部、知的障害者福祉法の運用の中で対応してきたものもございますが、確かに制度の谷間にあったということについての対応が不十分であったと思いますし、この法案を契機に、谷間の方々に対しても支援の手が伸びるよう努力してまいりたいと思います。

○黒岩宇洋君 ありがとうございます。そういう真摯なお気持ちをお聞きしました。
 やはり現実には、その縦割りの中で、法体系も含めてはざまで漏れてきて本当に苦しまれてきた方がいらっしゃるわけですから、まあ強い言い方をすると反省の下に今後施策を講じていただきたいと思います。
 関連して、私、就労支援についてだけ今お聞きしたいと思っております。
 障害者の雇用促進法とございますけれども、やはり手帳を今発達障害者の皆さんは持てないわけです。即座に知的障害者の療育手帳は取得できないわけですから、この手帳なくして就労について特別な支援というのは受けられるんでしょうか。厚労省、お答えください。

○政府参考人(金子順一君) お答え申し上げます。
 障害者の雇用の促進等に関する法律につきましては、これはすべての障害者が基本的に対象となっております。ただ、雇用率制度ということで一定以上の割合の障害者の方を企業に雇っていただくと。この雇用率制度につきましては、現在は身体障害者とそれから知的障害者の方、この方が対象になっているということでございます。
 そういうことではございまして、この雇用率制度の対象からは外れておりますけれども、それ以外の、例えば職場適応を容易にするためのジョブコーチ制度でございますとか、こういった職業リハビリテーションに関する措置につきましては、この障害者雇用促進法に基づく支援の対象とされてきているところでございます。

○黒岩宇洋君 ですけれども、障害者雇用促進法、これ定義は二条一項でなされていますけれども、文言としてはやはり発達障害者、これ当然抜けているわけですね、今まで抜けてきたわけですから。
 そう考えますと、この法律も当然改正、そして先ほどから議論になっております法定雇用率も、これ自体をアップさせるという、私こういう改正が必要だと思っているんですけれども、いかが対応されますでしょうか、お答えください。

○政府参考人(金子順一君) 今後の取組ということでございますけれども、確かに御指摘のように、発達障害者という用語につきましてはこの雇用促進法の中でも位置付けられておりませんで、やや言葉は悪いですけれども、その他の障害という位置付けでいろいろ措置を取っているということでございます。
 そういったことで、今回の法制定を機に、発達障害者の雇用促進、就労支援にも取り組んでまいりたいと思っております。その中で、今後、御指摘いただきました雇用率制度への適用といったものも我々として今後検討していかなければならない課題だと認識しております。

○黒岩宇洋君 前向きな答弁、ありがとうございます。
 本当に、実際に健常者とともに仕事をしていきたい、ただなかなかそれができ得ないという状況がございます。今回の法案では、この就労支援、第十条では、都道府県はとなっておるんですが、当然私、国としても最大の支援をすると思っておるんですが、国としての発達障害者の皆さんの雇用確保について、具体的な対応を最後にお聞かせください。

○政府参考人(金子順一君) 障害者雇用促進法の第六条に基づきまして、国としても当然障害者の雇用促進について基本的な責務を負っているわけでございますので、発達障害者の雇用促進にもこれから積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
 具体的には、公共職業安定所におきますいろいろな職業相談あるいは求人開拓といったこと、それから障害者職業センターにおきましていろいろな職業評価をいたしますとか、あるいは先ほど申し上げましたようなジョブコーチ制度といったようなものの施策としての効果が高いのではないかと思っております。こういったものを活用する。あるいは地域におきます障害者就業・生活支援センターにおきます就業と生活面での一体的な支援、こういった施策を十分に活用しながら関係機関と連携して取り組んでまいりたいと思っております。

○黒岩宇洋君 最後に問題提起して終わります。
 今日、神本委員のやり取りでもあったんですけれども、発達障害者児の皆さんが六%いるという、これ本当に数字の独り歩きなんですよね。
 文科省が平成十四年に行った四万人の調査、この質問項目というのを見て、私ちょっと驚いたんですね。これ、小学校一年生から中三までなんですけれども、例えば、大人びているという項目があるんですよ。最近の中学三年生、私たちから見れば相当大人びていますよ。これに丸が付きますと発達障害者、児だとなるわけですよ。そのほか、常識が乏しい。小学校一年生で私、常識にありふれている子はそんなにいないと思うんですよね。

 そのほか、例えばこれ驚いたんですけれども、他の子供は興味を持たないようなことに興味があり、自分だけの知識世界を持っている。これ私すばらしいことだと思うんですよ、個性があって。これが丸付けられると発達障害者の方に行くわけですよ。そのほか、私はもうこれ聞いて痛かったのは、例えば聞き漏らしがある。私もしょっちゅうありますし、そのほか、限られた量の作文や決まったパターンの文章しか書かないと。私今、質問文を書きながら、こう本当に胸が痛いですね、耳が痛い。
 だから、こういったものが背景となって六・三%が出て、それが六%として独り歩きする。私、このようなことは絶対に防いでいただきたい。
 今後、定義は政令で定めますんで、きっちりと客観的な医学的見地に基づいてこの定義をするということをこれ最後にお願いして、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○近藤正道君 無所属の近藤正道でございます。
 この法案の意義、目的、今日の審議を通しまして私も相当理解をさせていただいたところでございます。提案に至りました関係者の皆さんの御努力に本当に敬意を表したいというふうに思っています。

 幾つか質問を準備しておりましたけれども、ほぼ皆さんにもう質問をされましたし、とりわけ支援という中身につきましてはもう既に出ておりますので、私はこの法案の方向について評価をさせてもらうと、そのことを前提に、最後でありますので、私のやっぱりいまいち引っ掛かるところにつきまして、確認的な意味で質問をさしていただきたいと思っています。
 冒頭の神本委員の質問に対する福島先生の御答弁で、支援が大切なんだと、決め付けることが目的ではないんだということをおっしゃられました。本当に私もそうあってほしい。しかし一方で、定義がまだまだ、何となく分かったようで分からないところもあるし、今ほどの黒岩委員の最後の問題提起などを聞いていますと、私も若干ぐらつくところがあるわけでありますが。

 例えば東京都の教育委員会のホームページの中に、ここに持ってきておるんですが、これ私も昨日見ましたけれども、こういうふうに書いてあります。ADHD、注意欠陥多動性障害のところなんですが、こう書いてあります。「原因や生理学的な基礎については、脳の機能障害が推定されるという段階であって、現在のところ分かっていません。」と、こういうふうに書いてあります。また、いろんな私のところに送られてくるパンフレット、書物等を見ますと、アメリカの国立衛生研究所というところは、今ほどのADHDの原因に関する私たちの知識は依然としてその大部分が推定的なものにとどまっている、こういうふうに書いてあります。
 先ほど福島先生の方で、分かっていることと分かっていないこと、ここの識別、区別がありまして、私もなるほどなと、こういうふうに思いましたけれども、今現在、東京都がそういうホームページを現に掲出をしているということなどを見ますと、もう一度ここでやっぱり、きちっと駄目押し的に、医学的、科学的に大方のやっぱり整理、決着は付いているんだということを是非はっきりさせる必要が私はあるんではないかと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

○衆議院議員(福島豊君) 先ほど神本先生の御質問にもお答えさしていただきましたが、この東京都教育委員会の文書のその読み方の問題というのが私はあると思います。機能障害だと、こういうふうに明確に言うためには、どこそこの機能がこう障害されていますねというところまで解明されないと、なかなかストレートには言えないということだと思います。

 ただ、様々な、どこが障害されているのかということについては諸説があります。その諸説はいまだ仮説であると、この指摘は多分正しいと思います。ただ、裏返して考えると、こうした様々な行動上の特性でありますとか、例えばコミュニケーション上の障害とか、こういうのが表れてくるのは、その人が例えば親の育て方がこうだったからこうなったんですよということではないと。この本法案で脳機能の障害であるということを条文上書いたのは、裏返して言うと、そういう後天的な育て方であるとかなんとかというようなことでそうなっているのではなくて、むしろその本来の脳の機能の障害、まあこれは特定をされるに至ってはおりませんけれども、傍証は様々に出てきておりますけれども、そういうものに由来するものであるからこそ、そうしたことに早く気付き、支援をすることが大切であると、そういう観点からこの定義のところではこのような表現をしたわけであります。

○近藤正道君 はい、分かりました。
 次に、現在、この発達障害児六%という、これもその六%の由来について今ほど来議論がありましたけれども、通常学級におられるということでございます。どういう体制で一緒に学んでいるのかということが一つと、もう一つ、この本法の成立を受けて今後どういうふうになっていくのか。非常に機械的に分けますと、分ける方向に行くのか、あるいは補助教員等の配置で充実させていくのか。一般的な話はこの間出てきておりましたけれども、端的にどういう方向にこれから進んでいくべきなのか、法の方向について提案者から御説明をいただきたいと思います。

○衆議院議員(馳浩君) 現在でも通常の学級においてほかのお子さんたちと一緒に勉強しているわけでありますが、実は私も文京区において特例として取り組んでおる実例を拝見させていただきまして、担当者にもお伺いいたしました。やはりある部分は加配も必要でしょうし、またその文京区の取組というのは、通所という形で、通級という形で週に一回ある小学校のいわゆる学級に少人数で通って、そして先生方からプログラムに基づいて支援を受けると。それで十分対応できて、と同時に、その学級には加配の若い先生方も入って、支援のプログラムの在り方についてもともに研修を行いながら、そして、そのそれぞれの先生方が自分の学校に戻っていったときに、その方向を理解して子供たちの対応をするというふうになっておりますので、やはり通常の学級において、そういったできる限り加配も受けた中で、その先生方からの支援が受けられるような形が私は望ましいというふうに思っております。

○近藤正道君 本法の成立によってどういう方向になるのか、今ほどある程度のお答えがあったというふうに思いますが、もう少し、この法律の制定によって更にどういうふうになっていくのか、文科省の方から御説明いただければ有り難いと思います。

○政府参考人(山中伸一君) 現在、学習障害児の子供がほとんどが通常学級におりますので、その指導支援ということでモデル事業をやっております。そのモデル事業の中では、一つは各学校に特別支援教育コーディネーターというものを置きまして、その人が担任の教員、これと連携していろんな相談に当たる、あるいは保護者あるいは外部の方との調整に当たるということをやっております。
 また、学校全体として取り組むという意味で校内委員会というものを設置し、またその学校の外でございますけれども、これには専門家チームを作りまして、この方が、専門家に学校のコーディネーター等が相談に行く、あるいは巡回相談員という形で専門家の方が学校に来て指導をする、あるいは助言をするといった体制を整えております。
 また、それにプラスしまして、学校だけでなくて医療、福祉、労働関係、関係の機関が共同しました、連携するそういう協議会というふうなものも作りまして、そこにも協力していただくという体制を取っているところでございます。

 今は四十七の都道府県でモデル事業という形でこれを実施しておりますけれども、こういう体制を、学習障害児を抱える、が在学する学校につきましてはそういう体制を教育委員会あるいは関係機関といったところで整備してまいりたいというふうに考えております。

○近藤正道君 教育現場におきまして発達障害児の教育選択権はどのように保障されるのか。神本議員の質問のところでもありましたけれども、例えば、発達障害児と保護者には発達障害への個別的なプログラムを受ける権利とそれを拒否する権利、すなわち障害のない子供たちと一緒に学ぶ権利が保障されなければならないというふうに思っておりますが、その選択を可能にする教育現場の体制は保障されるのか、どのように整備されるのか、最後にお尋ねをいたしたいと思います。

○政府参考人(山中伸一君) 現在、先生も御指摘のとおり、学習障害を持つ子供たちはそのほとんどが小中学校の通常学級に在籍しているところでございます。そういう子供たちに対して障害に応じた形で指導あるいは支援を行いたいということでございまして、そのためには、一人一人の子供たちの障害に応じたニーズ、こういうものを把握して、関係者あるいは関係機関、そういうところが連携した形での個別の教育支援計画というものを策定していきたいと考えております。
 この個別の教育支援計画というものを策定するというためには、保護者が非常に重要な役割を担っております。ですから、その支援計画を作るに当たりましては、保護者の理解あるいは協力が必要不可欠でございますし、またそういう計画を立てていくという中では、保護者の意見を十分に聞きながら、相談しながら作成していく、そういうことが必要であるというふうに考えております。

○委員長(高嶋良充君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。
 御苦労さまでした。答弁者の方は御退席ください。
 これより、金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、討論に入ります。──別に御意見もないようですから、直ちに採決に入ります。

 金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

【以下 削除】




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