第百五十三回 国会
衆議院経済産業委員会議録 第二号
平成13年11月6日(火曜日)午前10時開議
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○山本有二委員長
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。
○馳浩経済産業委員会理事
おはようございます。自由民主党の馳浩と申します。
国会議員の中にもいろいろな議員がおりまして、私などは銀行に行って頭を下げてお金を借りたことのない人間ですから、いわゆる体一つで生きてきた人間ですので、そういう意味では、いわゆる中小企業、零細企業の皆さん方の厳しさや、金融機関の皆様方の地域にかける情熱というものにつきましてはまだまだ認識不足のところもありますので、きょうは、我々に御指導賜ると同時に、中小企業庁や経済産業省の方々も来ておりますので、まだまだ言い足りなかった部分などのお話を伺いたいと思います。何よりも、けさの日経を初め各紙の社説にも出ておりましたペイオフの解禁、我が党の麻生政調会長などは延期を求めての論陣を張っておられますが、服部参考人、都村参考人、口をそろえて、今現状では、非常に厳しい中で、反対の方の論陣を張っておられましたけれども、社説などには、何だ、日本の金融機関はそんな気力も体力もないのかというふうな挑発的な文言等もありましたよね。このペイオフの解禁に向けての、まさしく服部参考人、都村参考人の現場からのお声というものを、ぜひもう一度お聞かせ願いたいと思います。
と同時に、延長しろというのであるならば、いつ、どういう状況になったら解禁してもよいというふうなお考えもあるのかどうか、こういったところもぜひお聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。
〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
○服部参考人(神奈川県信用金庫協会会長)(湘南信用金庫理事長)
私の方からお配りをした資料の三をちょっと見ていただけるとありがたいのでございますが、この資料三には、関東甲信地区の信用金庫、百一ありますが、これの預金と貸し出しの比率が出ております。預金はわずかながら1.25%一年間で伸びておりますが、貸し出しは5%のマイナスであります。預金と貸し出しの割合は4.16%のマイナスになっております。
これはどうしてマイナスになっているかといったらば、やはりペイオフを解禁すれば、一千万円以上のものについては、一千万を限度といたしまして破綻をした先からは払い戻しが不可能になるということから、安全なところということで、もう資金の流動、流出が始まっているというのが明らかにここで出ております。
これがどこに行っているかというと、余り具体的に言ってはいけないと思いますけれども、まず郵便局と某都市銀行であります。いいから具体的に申し上げていいと思いますが、東京三菱銀行一点に絞られてしまっているということであります。
先ほど私申し上げましたが、郵便局は二百に上る例外が設けられておりますので、いわゆる地公体を中心といたしましてすべて郵便局が安全だ、こういうことになってくるかと思います。郵便局は預金保険にも払っておりません。ダイレクトメールはただであります。それから、いわゆる特定郵便局には一千万程度の交際費等も出ていて、領収書も必要なし。それから、税務調査も入らない。
こういうような、公平にできていないところでペイオフを開始したら資金が偏ってしまうだろう、こういうことであります。
そこで、それではどういう時期にペイオフを解除したらいいか。これはやはり景気優先でありまして、景気が回復傾向になる、あるいは、政府は、三年から五年かけていわゆる不良債権を処理する、こういうことを言っておりますので、少なくても三年ぐらいの凍結は必要、その間に郵便貯金法の改定をしていただく、こんなようなところで、本当にいわゆる公正で、そして安全で、それから地域から偏った都市に預金が流出をしないようにすべきだと私は思っております。それでないと、それに対応しては、先ほど申し上げたとおり、貸し出しを一切しない、それで自分を守っていくしか手がないわけであります。
以上、お答えを申し上げました。
○都村参考人(全国商工会連合会理事)(香川県商工会連合会会長)
ペイオフの解禁について御質問がございました。私は、基本的には、この景気の悪いとき、不況というものを本当に非常時ととらえていただきたいと思っています。従来までの、ここまで来れば景気が回復するという見通しが見えた場合にはいいんですけれども、今回の場合は本当に、非常時としてとらえた場合に、このペイオフが行われますと地域の経済に非常な影響があると思います。
今、貸し手側の参考人の方からお話がございましたけれども、もう貸さない、こういうことになってきますと、我々借り手側としますと、貸してくださいと言っても貸さないと言われる、それが地域経済の崩壊につながる、このように思っています。
いつまでかということになりますと、これはやはり先行きが若干でも見えたときということで、お答えをさせていただきたいと思います。
以上でございます。
○馳浩経済産業委員会理事
続きまして、服部参考人にお伺いしたいと思います。事前にいただきました資料の中に、服部参考人は以前から、地域に対するいろいろな支援というか、地域の取りまとめこそ信金の生き残り策であるという観点から、メセナ活動にも積極的に取り組んでおられるようでありますが、もともとそういう文化活動に対してバックアップをするということを一つの使命として実行なされてきた背景にはどういう考えがあるのかということを、改めてお聞きしたいと思います。
というのは、私もイタリアの方に行きましたときに、ちょうどローマのコロセウムの改修、これはローマ銀行がやっていたんですね、メセナ活動で。そして、ローマ銀行が、21世紀にコロセウムをよみがえらせますという看板をでかでかと掲げて、宣伝なのかな、いや、違うだろうな、これはやはり一つの哲学だろうなという観点からお聞きいたしました。
こういう地域における文化活動への支援、これはある意味では鯉江参考人などが訴えておられる、我が商店街こそ地域を活性化させていく拠点となるんだ、この考え方をしっかりと政治家の皆さんも認識してほしい、こういった部分ともつながると思うんですが、それなりの哲学といったものをぜひお聞かせいただきたいと思います。
○服部参考人
御質問に答えられるかどうかよくわかりませんが、湘南信金に名前を変えてから13年がたっております。その時点で、どういう地域の金融機関になりたいかということを決めたわけであります。当時はバブル時期でございましたので、いわゆる1%クラブだなんていいまして、利益の1%を出してそして還元をしようというのを大手がさんざんやりました。特にゴルフなんかの冠あるいはマラソンの冠行事、こんなようなことを盛んにやっておりましたが、今は一つもなくなってしまったと言っていい、こんなふうに思います。
私は、地域の活性化というのは、文化とかスポーツとか福祉とか、これが一番大事であると。特に、私のところは都市銀行じゃありません、世界を相手にしている金融機関ではなくて、ごく限られた湘南地域の金融機関でありますから、そこに文化とか福祉だとかスポーツが根づけば、これはお客様と一体感が一層できまして、そして本当に、自分のところの金融機関であると。それから、文化活動を通しまして、いわゆるグレードが上がります、知識も上がります、いいお客様が参ります、こういうことでございます。
例えば、亡くなりましたけれども、団伊玖磨先生にお願いをして、もう7回も8回も演奏会をやっておりました。これはどうしてかといったら、もう3年目、4年目になりましたら服装まで違ってきた、これはそういうような文化が地域の繁栄に寄与するということであります。
私のところは、いわゆる利益の還元はどういう方法かというと、四分法をとっております。まず会社に蓄積、いわゆる従業員に配付する、それから利用者に配当として還元をする、あるいは金利を安くする、そのほかに文化活動を通じて地域の皆様に利益の還元をしていきたい、こういうことで今日まで続けております。大変厳しい状況でありますけれども、自費でも続けていくつもりでおります。
以上、申し上げました。
○馳浩経済産業委員会理事
次に、これまた我が党内でも議論の分かれているところでありますが、政府系金融機関の整理統合、これは特殊法人改革の中で、今月末を目途に大きな議論になっております。先ほど都村参考人は、商工中金の存続等を強く訴えておられました。まず、服部参考人にお伺いいたします。住宅金融公庫が廃止あるいは民営化等をされれば、十分それに対抗してやっていけるだけの商品開発はもう既にしている、需要もあると。逆に、都村参考人にお伺いしたいのですが、地元にある信金で、いろいろ整理統合の進んでいる話もありますが、十分対応できるんじゃないんですか。そういう意味でいえば、政府系金融機関をあがめ奉って、そればかりに頼るというふうな経営方針というか考え方というのも、これも転換期に来ているのではないかなと思います。
ちょっと立場を異にするお二人に、この点についての見解を改めてお聞きしたいと思います。
○服部参考人
お答えを申し上げます。最近の政府系金融機関の融資先は、破綻をした先で十分に担保があるところに融資を積極的に進めているということでありまして、まさにハゲタカの存在でありまして、外資系の金融機関と全く同じような行動を行っております。これは政府系金融機関がやる仕事ではないと私は思っております。
そのほかに、先ほども申し上げましたように、きちんと私のところで45億円を投資いたしまして、そしてリサイクルの、ダイオキシンが出ない焼却灰を処理する工場ができ上がって稼働を始めましたらば、中小企業金融公庫が、今まで断っていた融資を、その仲間に入れろと言ってきました。
安全なときに政府系の金融機関が出てくる、こんなばかな話はありませんで、逆であります。安全なときは民間金融機関が出てくるので、危険を冒してやるのが政府系金融機関ではなかろうか、こんなふうに思っております。
住宅ローンにつきましてもそうであります。今住宅金融公庫は10年間2.5%の金利、10年を過ぎますると、いわゆる固定金利が外れまして、市場に連動して金利が上がるような形になっております。
政府が言っているのはおかしいのであります。子孫にツケを残さずと言って、35年の住宅ローンをやっております。35年かかって住宅ローンを返済するのに、子孫に借金を残さないで返せますか。私なんか生きているわけないんですよ、35年先は。ばかなことを言っている。やはり子孫に借金を残した方が子供も孫も一生懸命働く、私はそんなふうに思っております。
先生のようにスポーツマン、これは何といったって体を張ってやっていく、それから危険を冒してもやっていく、みんなのためにだったら命も落とす、こういうようなことを本当は政府系金融機関がやらなければいけないのであります。
反論をされると思いますけれども、政府系金融機関を存続させろというのは甘ったれでございます。自力で、そしていわゆる自分のところと相性の合った金融機関とずっとおつき合いをしていくというのが経営者の最たるものである、こんなふうに思いますので、私、小泉総理を応援するわけじゃないですけれども、政府系金融機関で必要なものはごくわずかしかない、こんなふうに承知をしております。
以上でございます。
○馳浩経済産業委員会理事
最後に、都村参考人。
○都村参考人
私は、常々、金融問題につきましてこういう考えを持っておるのです。借り手側と貸し手側というのがあります。借り手側の私どもとしては、企業とかそういったものを見る見方として、必ずフローの面を中心に見ます。売り上げまたは販売をどうしていくかというような形で見ます。そして、貸し手側の方は、その会社のストックの部分を、よく担保とかいろいろな形で見るわけであります。そこに必ず摩擦が起こったり、問題が起こったりします。その摩擦とか問題とかを本当に解決していくのがやはり政府の施策であり、信用保証協会であり、またその中の一つとして政府系金融機関の存在というものがあると私は思います。
したがいまして、そういう意味からいきますと、やはりこれは立場が違いますから、貸し手側は、必ず会社全体を見ましたときにストックを中心に見るわけでありまして、私ども経営者としては、その会社をどう流していくかというフローの面を見るわけであります。これは当然の立場の違いでありますから、その立場から出てくる問題点の解決をしていただくのが政府の施策であり、保証協会であり、政府系金融機関である。そういうことで、私は存続を主張させていただきたい、このように思っております。
以上でございます。
○馳浩経済産業委員会理事
次の方に譲ります。ありがとうございました。