第百五十一回  国会

衆議院経済産業委員会議録 第七号

平成13年4月4日(水曜日)午前10時45分開議

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○山本有二委員長

 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。馳浩君。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 自由民主党の馳浩です。
 今回の法改正が成立すれば、我が国の石油政策の基本法でありました石油業法が廃止されます。この石油業法は、我が国の石油の安定供給に多大な貢献をしてまいりました。しかし一方、役所と業界の相互依存体質、国際競争力の欠如、欧米より高い、ガソリン等の価格高を生み出してきたと指摘されております。今回の石油業法の廃止に当たって、この法律の評価を明らかにしてください。さらに、どういう反省のもとに今回の法改正に臨んでいるのかを明確に説明していただきたい。

 関連して、国民として関心があることは、例えば、石油業法という需給調整体制が廃止をされ、ガソリン等が安くなるかどうかであります。昨年三月の一ドル百七円をベースにした資料によりますと、日本のガソリンが税抜き価格でリッター四十一円、一方、アメリカが三十一円、英国が三十三円、フランスが三十円、ドイツが二十五円、これが今回の改正でどこまで安くなるのか、価格低下の圧力となるのか、こういう観点について、副大臣の答弁を求めます。よろしくお願いします。

 

○中山成彬経済産業副大臣

 お答えをさせていただきたいと思います。
 石油の安定供給を確保するため、過去、石油業法に基づく精製業の許可制等、需給調整規制を実施しており、こうした中で石油産業における競争がある程度抑制される面があったことは事実でありますけれども、こうした規制につきましては段階的に緩和してきたところでございます。

 また、過去の石油危機時におきまして、国民生活の安定確保、便乗値上げ防止等の観点から、石油製品価格に関する行政指導を行っております。しかし、かかる指導は昭和五十七年以降はなされておらず、石油製品価格は、国内の需給動向や国際的な原油価格の動向等を踏まえ、各石油各社がみずからの判断により設定していると承知しております。

 今般の法律案におきましては、これまでの累次にわたる規制緩和の総仕上げといたしまして、石油業法を廃止することにしております。これを契機として、一層構造改革に向けた企業の創意工夫や迅速な意思決定が促され、国際的な競争の中で石油の安定供給を担うことができる強靭な石油産業の形成が図られることを期待しております。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 続きまして、石油の安定供給、ひいてはエネルギーセキュリティーの観点から、国家備蓄について質問をいたします。

 私は、昨年三月、参議院の経済産業委員会におきまして国家備蓄の先行放出について質問をし、この国家備蓄分の先行放出の事態に備え、国家備蓄の積み増しを提案いたしました。そのときの茂木敏充政務次官の答弁が、IEA加盟主要国の平均水準より五日から七日分不足しており、その分の積み増しを検討しているという答弁でありました。

 あれから一年が経過をして、この点についてどういう結果になったのですか、教えてください。

 

○河野博文(資源エネルギー庁長官)政府参考人

 御説明申し上げます。
 御指摘のように、石油の供給途絶時などの緊急時におきまして、その初期的な段階におきまして市場の安定化を目的といたしまして、IEAの加盟国が協定上の備蓄義務であります九十日分の備蓄量を超えた分を協調して放出する場合があるということでございます。御指摘のように、この協定上の備蓄義務を超えた分の備蓄量をIEAの加盟主要国と比較いたしますと、我が国の場合、この備蓄水準は、その主要国の平均を確かに五日分程度、すなわち五百万キロリットル程度下回っているという状況にあるのでございます。

 この点につきまして、平成十一年八月の石油審議会石油部会の報告におきまして、IEA加盟主要国平均を下回らないようにすることを当面の目標とすべきであるという提言をいただきまして、検討してきたところでございます。

 この検討の結果を受けまして、私どもは、平成十三年度から国家備蓄の新規積み増しに着手をするということにいたしまして、平成十三年度につきましては、約百万キロリットルの国家石油備蓄積み増しを行うべく所要の予算措置を講じたところでございます。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 所要の予算措置を講じたところでありますとおっしゃいましたが、今般の財政状況にかんがみながらも、具体的には、五百万キロリットル積み増しをする、これを明確にするんだということの確認をさせていただきます。それでいいんですね。

 

○河野博文(資源エネルギー庁長官)政府参考人

 石油審議会での御提言は、日本はIEAの主要国の平均に比べて大体五日分、五百万キロリットル程度下回っている、これをどういうふうに埋めていくかということでございますが、これは、毎年度毎年度予算を具体化していきませんと、最終的にそこにたどり着かないわけでございます。したがって、まず十三年度につきましては、百万キロリットルを積み増すということで対応したということでございます。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 では、次の質問に移ります。
 この国家備蓄の維持管理費が年間三千億円前後かかっているということであります。そして、この維持管理が、石油備蓄の効率的運用の名目から三セク方式を取り入れた八社から成る石油備蓄株式会社に任されております。

 そこで、質問いたします。
 この備蓄会社の本社が備蓄基地の現地ではない東京の一等地にある妥当性はあるのでしょうか。また、天下りの批判もあるところで、どのようにこの点の改善がなされているのでしょうか。維持管理費に年間三千億円前後かかっているという、この費用対効果の観点からの御答弁をお願いいたします。

 

○河野博文(資源エネルギー庁長官)政府参考人

 御指摘のとおり、国家備蓄事業を実施するに当たりまして、多額の費用を使わせていただいております。私どもとしても、できる限り効率的に国家備蓄事業を進めていくべく、コスト削減に取り組んでいるところでございます。

 これまでも例えば、民間の余剰タンクをできるだけ有効に活用するとか、あるいは国家備蓄会社を効率化するとか、また規制緩和の実現によりまして国家備蓄基地の施設の検査費用をできるだけ軽減させていただくとか、あるいは調達金利の低減努力でコスト削減を図る、こんなことをしてまいりました。

 その結果、近年の金利が比較的低いということもございますけれども、さらに加えまして、国家備蓄基地建設の終了に伴います減価償却あるいは借入金の償還の進展、こういったこともありまして、平成八年度の予算で三千四百十四億円、これがピークでございまして、平成十三年度予算では二千七百三十億円ということで国家備蓄予算の効率化を達成してきているというふうに考えております。

 なお、国家備蓄会社が東京に本社を置いている点につきましては、平成十年度の国家備蓄の目標五千万キロリットル達成までは、国家備蓄会社の主な業務というものが、会社の組織を整備するですとか、あるいは基地を建設することですとか、また資金を調達するということで、石油公団とか、あるいは国家備蓄基地の中核となります民間企業、それから建設・設計企業、こういったところとの調整業務が主体でございましたので、こうしたことを円滑に実施するために東京にいたということでございます。

 ただ、今後は、五千万キロリットルを達成しておりますので、地元官庁ですとか、あるいは地元の経済界、そして地元の住民の皆さんとの調整とか連携が必要だということで、基地の安全かつ効率的な運営、さらには緊急時の円滑な払い出し業務、これが中心業務になりますので、複数の基地を有します日本地下石油備蓄は例外といたしまして、七社につきましては平成十四年度末までに本社の地方移転を実施する予定とさせていただいております。

 また、国家備蓄会社における省庁出身者のお尋ねがございましたけれども、国家備蓄会社におきましては、各種法令を遵守しながら、施設あるいは原油を維持管理する業務、あるいは地域社会と関係機関との連絡調整、こういった業務内容を踏まえまして、それぞれの個人の経験、能力に基づいて適材適所で人材を配置させていただいているというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、経済産業省といたしまして、今後ともこの国家備蓄事業のより一層の効率化に向けて最大限努力をさせていただく覚悟でございます。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 この点に関しまして、今の答弁は限界があるとは思いますけれども、今後とも継続して、本社の移転等に関しまして、あるいは天下り等の人事問題については厳しく指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、石油公団の業務追加について質問をいたします。
 今回の改正で、公団の業務として既発見油田の買収が追加されました。この点も、昨年参議院で私が質問の際に提案をさせていただいた点でもあり、非常に評価をしているところでもあります。

 問題は、売却対象となる油田の有望性に対する評価をどのように行い、だれがそのリスクを負うのか。石油公団の出資に裏書きされた無責任な油田買収が行われないようにするための明確なルールが必要ではないかと思いますが、この点についての政府の考え方をお聞かせください。

 

○中山成彬経済産業副大臣

 現在、石油公団におきましては、中立的な外部有識者から成る経営諮問会議において、石油公団の業務改善のあり方について意見を伺っており、さらに探鉱投融資プロジェクトの審査について定量的評価を導入し、効率的かつ効果的な自主開発を進めております。

 以上に加えまして、今後は、探鉱投融資プロジェクトの新規採択に当たりましては、石油公団において、経営諮問会議に毎年の採択方針を諮るとともに、事前に経済産業大臣の承認を得ることといたしております。また、経済産業省は、採択方針を総合エネルギー調査会に付議するとともに、採択案件を報告することとしております。

 資産買収案件の採択の審査に当たりましても、このルールにのっとり、厳正なプロジェクトの審査を行ってまいる所存であります。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 関連してですが、買収油田の有望性の情報も含めて、石油等の開発において情報収集能力の向上が石油審議会等でも指摘されているところであります。

 そこで、政府では今後どのようにして海外における油田等の情報収集、そして分析能力向上体制を強化していく所存でしょうか。政府のお考えを聞きたいと思います。

 石油戦略は日本の外交戦略と表裏一体であります。平時からの情報収集体制の整備、これは石油の輸入、生産、販売、在庫等の実績を月ごとに数字でしっかりと把握しておくことがまさしく戦略的な対応になると思いますが、政府としての考えをお聞かせください。

 

○中山成彬経済産業副大臣

 御指摘のように、平成十二年八月の石油審議会開発部会中間報告におきまして、他の政府機関との連携、交流、外部専門家の活用等により、石油等の開発に係る情報収集、分析機能を強化すべきとの提言を受けたところでございます。

 これを踏まえまして、政府としては、現地の大使館や石油公団事務所等の活用、産油国協力を通じた平時からの産油国との関係強化、国内企業やメジャーとの接触等を通じて情報収集能力の向上を図り、石油の安定供給の確保に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 テーマをエネルギーの安全保障にして質問をしたいと思います。
 昨今の原油の値上がりを見ておりますと、原油はまだまだ戦略物資であり、今後のアジアの需要増を考えると、我が国の積極的な政策転換が求められます。

 そこで、一つ提案いたしたいのですが、ODAの使い方であります。すなわち、アジアの石油備蓄は進んでおらず、アジア全体の石油供給の安定のために、例えばODA予算を活用して石油備蓄の勧奨に努めていく必要があるのではないかと思います。

 この点について、ODA以外の独自施策につき経済産業省から、ODA予算につきまして外務省からお聞きをしたいと思います。

 

○河野博文(資源エネルギー庁長官)政府参考人

 それでは、経済産業省の方から、ODA以外の点についてお答えをさせていただきます。
 御指摘のように、我が国のエネルギーセキュリティーの確保を図っていく上では、アジア諸国における石油備蓄に対する取り組みをできるだけ勧奨いたしまして、アジア地域全体を視野に入れましたエネルギーセキュリティーの向上を図っていくということが重要だと思います。

 そのため、従来から、中国あるいは韓国と、石油備蓄に関します情報交流を進めてきております。昨年十月のASEAN経済閣僚との会議におきましては、これはマルチでございますけれども、ASEAN諸国の備蓄体制強化に向けた取り組みを支援するため、専門家の派遣などを通じた技術協力を行う用意がある旨表明したところでございます。

 また、現在、総合資源エネルギー調査会におきます総合的なエネルギー政策の検討の中で、アジア地域のエネルギーセキュリティーの確保のあり方についても御審議をいただいているところでございます。

 こうした御議論も踏まえながら、石油備蓄に対するアジア諸国の考え方やニーズをできるだけ聞き取りまして、各国における石油備蓄制度創設に向けたより具体的な協力あるいはその他、アジア地域のエネルギーセキュリティー向上方策につきまして、具体的な要請があれば、資金協力の活用も含めた幅広い検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 

○西田恒夫(外務省経済協力局長)政府参考人

 お答えいたします。
 九九年八月に策定いたしましたODA中期政策におきまして、地球規模問題への取り組みを重点課題の一つとして掲げておりまして、その中で、エネルギーにおけるODAを通じた取り組みの重要性についても言及をしているところでございます。

 すなわち、途上国におきましては、経済発展を実現するためにもエネルギーを確保することが重要であります。また、エネルギー問題は、地球環境問題への対応及び持続可能な開発の達成とも密接に関連する地球規模の課題であるからであります。また、委員御指摘のとおり、エネルギー資源等の対外依存度が極めて高い我が国にとりまして、本分野での協力は資源の安定供給確保の観点からも重要であると認識をいたしております。

 このような基本的な認識に基づきまして、エネルギー分野におきましては、これまで、途上国におけるエネルギー関連のインフラ整備のうち、民間あるいはODA以外の政府出資金で、対応が難しい案件への支援、あるいは省エネや再生可能エネルギーの利用促進、より環境負荷の少ない石炭技術の導入等に関する協力も実施してきております。

 ちなみに、九九年度におきまして、無償資金協力で約四十六億円、円借で約千百二十七億円の協力を実施いたしました。また、エネルギー管理ないし省エネ推進にかかわる技術協力も実施しておりまして、九九年度には三百十八名の研修員を受け入れており、また七十二名の専門家も派遣をいたしております。

 他方、石油備蓄そのものに関する協力につきましては、これまで途上国側からの要請がなかったということもあり、実績はございませんが、委員御指摘のとおり、エネルギー問題、とりわけ備蓄の重要性にかんがみまして、先方政府の意向、あるいは開発上のプライオリティーをも踏まえつつ、ODAを通じていかなることが積極的かつ可能であるか、真剣に検討してまいりたいというふうに考えております。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 最後の質問をさせていただきます。脱石油、脱化石燃料対策について質問をいたします。
 脱石油化が叫ばれて、その改善が進んでおりますが、欧米に比べおくれていることは論をまちません。そこで、私は天然ガスへの転換を参議院時代から唱えてまいりました。北東アジア天然ガスパイプライン建設等を訴えております。しかし、問題は、天然ガスの需要を確保、拡大しなければ、これも夢のまた夢でしかありません。

 そこで問題にしたいのが、天然ガスの需要確保策として、燃料電池で動く自動車の一次エネルギーとして天然ガスを使用することを提案したいと思います。

 二〇〇一年一月二十二日に出されました燃料電池実用化戦略研究会報告によれば、我が国は、インフラ投資がかからない点からガソリンを使った燃料電池車の導入を進めておりますが、天然ガスを使って製造される硫黄等の不純物を含まないGTLによる燃料電池車もあわせて同等に導入すべきではないかということを提案したいと思います。

 ガソリンに比べ脱硫技術の投資、すなわちクリーンガソリン化は必要ありませんし、ドイツが導入決定したメタノールに比べ、天然ガスはインフラ整備が少なくて済みます。そして、何より石油代替効果が大きいからであります。ガソリンの使用を否定しませんが、天然ガスも同等に扱うべきと考えますが、いかがでしょうか。

 

○河野博文(資源エネルギー庁長官)政府参考人

 ただいま先生御指摘になりました、また御引用になりました本年一月に取りまとめられました燃料電池実用化戦略研究会報告、ここにおきましては、燃料電池自動車の燃料選択の現時点における見通しということで、近未来におきましては、ガソリンの車上改質技術が確立された場合には既存の燃料供給インフラが活用できるということで、硫黄等を含まないクリーンガソリンが主要な燃料として選択される可能性が高いという見通しを示しております。

 また同時に、同じく天然ガスから合成される液体燃料でありますGTLにつきましても、クリーンガソリンと同様に既存インフラを活用できることに加えまして、御指摘の石油代替というエネルギー政策上の意義も極めて大きいということで、燃料として選択される可能性があるという見通しをあわせて示しております。

 ただ、GTLにつきましては、ガソリンのクリーン化に比べますと、低コスト化ですとかあるいは量産化に向けた技術的課題がまだ多いという実態にあるように思います。燃料製造設備の整備が必要である、こういったこともありますので、今後、私どもといたしましては、当省で策定いたします燃料電池技術開発戦略にきちんと位置づけをいたしまして、その上で、まずは燃料製造技術の確立、製造から利用までの一連の過程におけるエネルギー利用効率の見きわめ、低コスト化、量産化技術の開発、こういったことを行ってその実用化に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 

○馳浩経済産業委員会理事

 終わります。


   詳しくは衆議院 経済産業委員会 議録をご覧ください
(常任委員会 → 経済産業委員会)
 


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