衆議院 文部科学委員会議録

第156回  国会

第15号 平成15年5月30日(金曜日)

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○古屋 圭司委員長

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

 

○馳浩委員

 おはようございます。

 時間の関係上、独立行政法人日本学生支援機構法案についてのみお聞きいたします。

 まず、今回の日本育英会等の独法化で最も重要なことを冒頭にお聞きします。それは、独法化によって、奨学金を受ける学生の人数や受け取る額が減ったりしないかという心配です。つまり、独法化で育英奨学事業等の事業費は拡充していくが、一方、人件費や管理費等は合理化していく、こんなイメージを描いてよいのでしょうか。副大臣にお聞きします。

 

○河村建夫文部科学副大臣

 おはようございます。答弁させていただきます。

 馳委員御懸念の点、私どもとしても、その点がなきようにということで、委員が御指摘のようなイメージで進めていかなきゃいかぬと思っております。

 これまでも、学生支援機構に移るまでの段階についても奨学金を拡充してきたこと、御案内のとおりでございまして、毎年充実を図ってきたわけでございまして、現時点でも、この15年予算を見ても、前年度比で624億円増、5790億円という事業費でございますし、68000人ふえてきた、こういう実績も持っておるわけでございまして、そして無利子奨学金についても、月額の増額を2000円でございますが図ってきた、こういうことで実績を持っておるわけでございまして、これはひとつしっかりこれからも、独立行政法人日本学生支援機構となっても引き継いでいかなきゃならぬ、こう思っております。

 特に、奨学金というものが、教育を受ける意欲と能力ある学生が経済的な面で心配なきよう勉学にいそしめるということ、これが大事なことでありますから、ぜひ進めてまいりたいし、同時に、独立行政法人の機構の本来のねらいでもございますが、効率的な業務を遂行するという点で、人事費、管理費等についてはできるだけ合理化に努める、そういう委員の御指摘のとおりのイメージでやっていきたい、このように思っております。

 

○馳浩委員

 今、副大臣はこうおっしゃったんですね、これまでの事業規模を引き継いでいく。この答弁は大いに不満があります。いいですか、平成15年度貸与人員が86万6千人、事業費総額が5790億円。昨今の経済事情等を考えれば、さらにこれを拡充していくと副大臣として答弁しなければならないのではないでしょうか。

 

○河村建夫文部科学副大臣

 ちょっと答弁の仕方が悪かったようで、申しわけございません。

 気持ちとしては、当然、これまでの実績をさらに拡充しながらやっていくんだ、こういう意図でございます。

 

○馳浩委員

 そろそろ概算要求に向けて、文部科学省としても、そして我々議員としても大いに文部科学省をバックアップしていく態勢をとらなければなりませんので、引き続き副大臣にはその職にとどまって今の答弁に責任を持っていただくように、強く強くお願いを申し上げておきますが、しかし、財政難の折、問題は財務当局との折衝であり、来年度予算がやはり心配であります。財務当局が削減を要求してくることは十分予想がつきます。

 そこで質問ですが、今回の独法化でどのくらいの人件費や管理費等の削減効果があるのか、この点をぜひお示しいただきたいと思います。

 

○遠藤純一郎政府参考人(文部科学省高等教育局長)

 日本学生支援機構の具体的な組織や予算等につきましては、16年度予算で決まるということになりますけれども、一つには、理事長を含む常勤理事についてでございますけれども、統合される五法人、合計で15人おりますが、日本学生支援機構ということになりますと5名以下となるわけでございます。それが一つでございます。それから、職員につきましても、統合される五法人の合計646人のうち、機構に移行するのは450名程度ということでございます。それから、高校奨学金の都道府県移管に伴いまして日本育英会の都道府県支部を廃止するということなど、相当合理化が図られると考えておるわけでございます。

 具体的な数字、全部どうなるかというのはこれからでございますけれども、例えば200人程度の定員削減ということになりますと、年度予算で約20億円程度、これは目の子でございますけれども、20億円程度の削減になるだろう、こう思っております。

 

○馳浩委員

 今具体的に200人程度の人員削減とおっしゃいましたが、それを上回る削減をできるように、遠藤局長、努力をいただきたいと思います。

 参議院での議論を見ておりますと、育英奨学事業は無利子貸与の第一種奨学金が基本で、有利子の第二種はその補完でしかありません、ですから無利子をもっとふやせ、将来は有利子をなくせという議論が多く目につきました。

 しかし、有利子といっても年率は0.2%。百万円借りたとしたら、利子は年間で2000円でしかありません。これをほかの教育ローン制度と比べると、例えば、国民生活金融公庫の利子が年1.6%ですから、百万円借りたとしたら16000円、民間銀行だと固定金利で3.5から6.5%ですから、同じく35000円から65000円となります。いかに0.2%が安いか、わかると思います。

 そうであるならば、財政難の折、第二種の財源である財政融資資金の方が第一種の財源の一般会計からの貸し付けより借りやすいという事情であるならば、現実の運営としては、一人でも多くの学ぶ意欲のある学生に奨学金を貸与すべきであるということからして、第二種の有利子貸与の方が増加しても仕方ないと私は考えます。

 しかし、問題は、この0.2%という低利を今後も維持できるかどうかであります。この0.2%は財政融資資金と連動しての数字と思いますが、もしこれが高くなった場合、どう対処するのか。例えば利子補給金を別途入れていくつもりなのか、お聞きしたいと思います。

 

○遠藤純一郎政府参考人(文部科学省高等教育局長)

 現在、有利子奨学金の学生に対する貸与利率でございますが、在学中は無利息、卒業後が年3%を上限となっておりまして、また、有利子奨学金の貸与原資でございます財政融資資金の調達利率が年3%に満たない場合には、この調達利率、現在、御指摘のように0.2%となっておりますけれども、これと同率とするということを政令で定めておるわけでございます。

 現在、在学中の無利息分や、死亡等による返還免除や返還猶予に係る利息負担分につきましては一般会計予算より利子補給を行っておりますし、仮に財政融資資金の調達金利が年3%を超えた場合につきましても、その超える部分の利息負担分につきましては利子補給を行うということになっておりまして、この仕組みは独立行政法人化後におきましても維持をしてまいるところでございます。

 

○馳浩委員

 こういう制度は奨学金だけの制度であり、高く評価したいと思います。しかし、3%は、現在の0.2%に比べたら相当高いと思います。将来の経済状況にもよりますが、1%くらいを上限にできないのか、文部科学省としても政府全体に働きかけてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

 

○遠藤純一郎政府参考人(文部科学省高等教育局長)

 利息の上限を年1%に引き下げてはどうか、こういう話でございますけれども、貸与原資でございます財政融資資金等の調達利率が上昇した場合に、先ほど申し上げましたように、調達利率と貸与利率の差額である政府の利息負担が大きくなるわけでございまして、利子補給金の新たな財源確保が必要となるということでございますので、現下の厳しい財政状況のもと、継続的に適切に事業規模を確保するという観点からも、この点については慎重に検討しなくてはならない、こういうふうに考えておる次第でございます。

 

○馳浩委員

 今の慎重に検討するは、前向きに検討するというふうに理解いたしますよ。これは、金を貸してもうけるというふうな筋合いのものではなくて、やはり学生の学ぶ意欲、そして教育の機会均等という大きな目標があるわけでありますし、そのために組織も見直して合理化しようというわけでありますから、その点、しっかりと押さえておいていただきたいと思います。

 次に、機関保証制度について質問いたします。

 今回、保証人、連帯保証人が見つからない学生のために、保証料さえ払えば保証機関が保証人になってくれる制度が新設、予定されておりますが、問題は、どこがその保証機関になるのか、保証料は幾らか、支払い方法は毎月なのかなどが最大の関心事だと思います。

 この点、参議院の質疑では、保証機関は公益法人が適当で、保証料は、収支バランスを基本に学生の負担状況も踏まえて設定したいと答弁しておられます。しかし、これだけの答弁では納得できません。もっと詳しい内容がわからなければ、立法府に対して、まるで省令に白紙委任してくれと言わんばかりであります。

 例えば、保証機関は公益法人が適当であるならば、候補となる法人も特定されているでありましょうし、そことの下交渉なども当然行われていると思います。そうであるならば、保証料も大体はわかっているでしょうし、この点をしっかり委員会の場で示すべきと思いますが、いかがでしょうか。

 関連して、どこまで省令でこの機関保証の仕組みを縛るのか。支援機構と保証機関の間で自由に取り決められる契約事項は極力少なくして、第三条の「教育の機会均等に寄与する」という目的を最大限生かすようにすべきではないでしょうか。したがって、保証料なども省令事項にして、保証料が高くならないような縛りをかけるべきではないでしょうか。

 また、もし省令にできないのなら、保証機関選定に当たっては、この事業にふさわしい資格があることを前提にしつつ、入札等を導入して競争原理を働かせて、少しでも保証料が安い機関を選定できるようにすべきではないでしょうか。

 

○遠藤純一郎政府参考人(文部科学省高等教育局長)

 日本学生支援機構が実施します奨学金事業は教育施策の一環として行うものでございまして、その保証業務につきましては、利益を得ることを目的に実施するのではなくて、収支のバランスがとれているということを基本にして、学生の負担状況を勘案し、奨学金事業にふさわしい安定的な制度とすることが必要である、こう考えております。

 保証料を含め、機関保証制度の具体的な制度につきましては現在検討を行っているところでございますが、保証料につきましては、国または日本学生支援機構が徴収するものではなく、民間の保証機関が徴収し、保証業務を実施するものであるということなどで、省令で定めることにはなじまない、こう考えております。

 機関保証制度の実施主体でございますが、業務利益を見込まないほか、主務官庁でございます文部科学省の監督のもとに、継続的、安定的に業務を行うことが可能であるという観点も踏まえまして、公益法人とすることが適当だ、こう考えておる次第でございます。具体的な公益法人の選定に当たりましては、機構が行う奨学金事業との連携を十分に図ることができるということとともに、より安い保証料を設定することができるという観点から行ってまいりたいと考えておるところでございます。

 保証料の水準はどうなのか、こういうお尋ねでございますが、これも、安いところでやっていただいての話として、一つのシミュレーションとして申し上げますと、制度への加入割合とか代位弁済率等によってこの水準は変わってくるわけでございますので、これだということが言えないわけでございますが、仮に約半数の方が加入したとしまして、返還完了までの保証期間、これは最長20年でございますが、毎年の債務額について、年率約0.5から0.6%程度の保証料になるんじゃないか、こう考えております。今の国民生活金融公庫の教育貸付制度における保証料は年率1.1%、こうなっておりますので、こういうシミュレーションでいくと、0.5から0.6%程度の保証料になるのではないか。

 これをまた単純に計算しますと、貸与総額が例えば200万円の無利子奨学金の場合でございますと、返済期間は14年以内、こうなりまして、保証料の年率が仮に0.5%ということになりますと、保証料は全体として約74000円程度になる。これを奨学金をもらっている大学4年間で支払うということになりますと、一年で約19000円、これは月々ということになりますと1700円、こんなようなシミュレーションでの仮の計算ができるということでございます。

 

○馳浩委員

 今の答弁はきっちりと議事録に残りますので、こういった範囲を超えないように、声が大きくなりましたが、超えないように。局長、笑っている場合じゃないですよ。本当にこれは、学生さんあるいは御家族の立場を考えると、しっかりとその辺は踏まえてやっていただきたいと思います。

 最後の質問になりますが、大学院生に対する返還免除制度についてお聞きしたいと思います。

 これは、特にすぐれた業績を上げた大学院生に対する卒業時返還免除制度でありますが、ここにはスポーツや文化活動で業績を上げた者も含まれていますね。この場合、例えばオリンピックでメダルを獲得した大学院生などが対象になると思いますが、もし高校生や大学生の場合は、返還免除の対象にならないことになります。これはとても不公平だと思います。また、スポーツの場合、すぐれた業績を残す選手は、大学院生は少数で、高校生や大学生の方が圧倒的に多いはずであります。そう考えると、スポーツにも門戸は開いているようで実態は形だけにすぎないと言っても過言ではありません。

 そこで、スポーツや文化活動の場合は特例を設ける必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○遠藤純一郎政府参考人(文部科学省高等教育局長)

 大学生や高校生のスポーツや文化活動についても返還免除の対象にすべきではないか、こういう御指摘でございます。

 これは、一つには、厳しい財政状況のもとで奨学金事業の充実を図るためには、できるだけ返還金の確保を図り、資金の効率的運用に努める必要があるということが一般的にございますし、大学及び高等専門学校における返還免除制度は平成10年に廃止をされた、こういう経緯がございまして、こういう状況を踏まえますと、御指摘の点につきましては将来の研究課題かなというふうに考えておる次第でございます。

 また、高校奨学金につきましては、今回の法案によりまして都道府県へ移管するということとなっておりまして、その返還免除制度につきましても各都道府県において検討されるべき課題である、こう考えておる次第でございます。

 

○馳浩委員

 大体、そういうしゃくし定規なことを言っているから役所はだめなんですよ。遠藤さん、いいですか。今、私は特例として言いましたけれども、スポーツもそう、文化芸術活動もそうですが、学校に学んで、それだけの能力を身につけて発揮した、これは国家にとっても、というよりも、非常に教育効果の上がった成果ではないんですか。そういったことを評価できないような政府はいかぬなと私は申し上げて、質問を終わります。検討してください。

  


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