衆議院 文部科学委員会議録

第151回  国会

第11号 平成13年5月23日(水曜日)

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○高市委員長

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

 

○馳委員

 自由民主党の馳です。よろしくお願いします。
 まず、大臣にお伺いいたします。
 小泉内閣となりまして、前森内閣と比べて教育改革に対する情熱が薄れているのではないかという意見もあるようでありますが、この教育改革に向ける御熱意についてお伺いいたします。

 

○遠山国務大臣  

 まだ就任いたしまして一カ月にも満たないわけでございますが、私自身は、今日の日本の状況を考えますに、やはり教育改革ということが大変大事な課題であるというふうに認識いたしております。

 21世紀の戸口に立つ今日、日本は今いろいろな問題を抱えておりますけれども、その将来を考えますときに、やはり人づくり、これが基本であろうかと存じます。教育につきましてもいろいろな問題が生じておりますが、国民の信頼を回復し、そして国民が自信と誇りに満ちて生きていく、そういうことが大事でありますけれども、そのような人材をつくるのに、教育改革ということが非常に大事だと思っております。

 

○馳委員

 まだこの国会で教育改革関連法案が積み残してあります。これは、与野党の理事の皆さん方に、十分な審議をされる日程取りとか審議内容等の詰めとか、御努力を御期待申し上げますので、よろしくお願いいたします。

 教科書問題について質問させていただきます。

 5月8日に、韓国政府が、検定に合格した中学校の歴史教科書について内容の修正要求を正式に求めてまいりました。続いて中国も、17日に同様の修正要求をしてまいりました。

 この要求に対して政府はどのような対応をとるのか、お伝えください。

 

○岸田副大臣

 歴史教科書につきましては、先生御案内のとおり、民間の教科書発行者が著作、編集したものにつきまして、近隣諸国条項も含めまして、検定基準に基づいて、教科用図書検定調査審議会、この審議を経て、適切に実施しているところであります。

 それに対しまして、今御指摘がありましたように、5月8日の日に韓国から、そして5月16日の日に中国から、それぞれ修正要求がなされたところであります。

 政府としましては、これはまず真摯に受けとめなければいけないと思ってはおりますが、専門的、学術的な見地から精査を今行っているところであります。これから、外部の専門家の意見も聞きながら、引き続き精査を続けていきたいと思っております。

 いずれにしましても、誤った事実の記載がある場合のほかは訂正できない、この制度の趣旨を守り、この枠組みの中で誠意を持って対応したい、これが文部科学省のスタンスでございます。

 

○馳委員

 出版社側が明確な誤りがある場合に自主的に訂正しようとする姿勢については、容認するわけですね。

 それからもう一つは、文部科学省として、中国、韓国から指摘があり、明確な誤りがありますよということの、出版社側に対する要請ということはするのですか、しないのですか。

 この二点、お答えください。

 

○岸田副大臣

 あくまでもこの制度を守り、制度の範囲内でどう対応するか、今精査をしているところであります。

 この精査をした結果はまだ出ていない状況でありますから、これからの対応は、その結果いかんではありますが、しかし、いずれにしましても、この制度の枠組みはしっかり守っていきたいと考えております。

 

○馳委員

 答弁になっておりません。出版社が自主的な訂正をする場合には、それは容認するのですか。

 

○岸田副大臣

 制度としまして、自主的な対応というのは認められているとは認識しております。

 

○馳委員

 基本的に修正はしないのですけれども、中国、韓国側から申し入れもあり、現行の制度の中から、言葉で言えば、弾力的な対応は一応いたしますというふうなことだと私は認識しておりますので、政府の対応を私は支持します。

 しかし、このような要求や、非公式に行われた検定前の教科書の不合格要求が再度行われないようにするための外交努力も必要であると思います。

 まず、現状の日本の教科書検定制度を維持した上での努力として、我が国の検定制度は中国や韓国が行っている国定教科書制度ではないことを十分理解してもらう必要があります。関連して、憲法で教科書をつくる自由が表現の自由として保障されており、必要最小限の公的介入しかできないこと、それ以上やれば、厳に憲法で禁止されている検閲になることの理解を求める努力が不可欠ではないかと考えます。

 この点の努力はどう実施しているのか。外交努力としては外務省ということになりますが、文部科学省として、どのような努力や外務省との協力をしているのか、お伝えください。

 

○岸田副大臣

 文部科学省としましては、外務省と連絡をとりつつ、まず、この教科書検定の結果につきまして、発表の際に、外務省の方から、中国政府あるいは韓国政府に対しまして、この教科書検定制度の趣旨、内容及び結果について説明をお願いしたところであります。今後も、外務省と連携はしっかりとっていきながら、説明、理解に努めていかなければいけないと思っております。

 その中で、文部科学省独自の対応としまして、例えば、今回初めて、中国及び韓国の日本駐在記者に対しまして、4月2日、文部科学省において直接ブリーフィングを行いました。

 さらには、文部科学省としましてもあらゆる機会をとらえて理解をお願いしなければいけないということで、例えば、4月12日には、これは前大臣でありますが、韓国与野党議員団4名と会談を行い、あるいは4月20日、駐日韓国大使と前大臣が会談を行い、あるいは5月2日、韓国の文化観光大臣と現大臣が会談を行い、あるいは5月11日、駐日韓国大使と現大臣が会談を行う、こうしたあらゆる機会をとらえて、我が国の検定制度あるいはその事情につきまして説明をし、理解を求めるよう我々も努力しているところであります。

 

○馳委員

 教科書問題が日韓、日中の間において外交問題として顕在化し、それが両国の関係において悪い方向に行くようなことは事前に阻止をする、こういう予防外交の観点からも、あらゆるチャンネルを通じて日本側の立場というものを真摯にお伝えする努力をすることは、これは外務省ばかりではなく、文部科学省としてもされることは当然のことであると思いますので、今岸田さんがおっしゃった努力というのはすばらしいと私は思います。

 そこで、実は、私がひとつ提言しようと思っておりましたら、けさの毎日新聞にも出ておりました、日本と中国と韓国、三国から成る歴史教科書についての民間学者ベースにおける合同調査委員会などを設置して研究を始めてはどうか、最終的には三国で歴史教科書についての考え方をまとめてみてはどうかと。

 歴史教科書をつくれというと、これはまず無理だと私は思うのですけれども、三国の学者が集まって、教科書問題について、こういう報道を中心にした空中合戦をするよりも、実務者の民間の学者が歴史教科書についての調査委員会などを行って、常に、そごがあるような場合には、まさしく外交問題として出る前に事前にお互いに詰めておくというふうな形にしないと――我々国会議員の中にも、教科書を読みもしないのに教科書問題について発言されている方も多くあります。これはやはり国会議員としては不見識であると私は思います。そういう観点からも、日本と韓国と中国の民間の学者ベースでの教科書問題に関する合同調査委員会を設置してみてはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○遠山国務大臣

 日本と韓国あるいは中国との関係というのは、まことに重要な外交上の課題でもありますし、友好関係をさらに増進していくということは国民全体の願いでもあろうかと思います。

 きょうの新聞に取り上げられたことについて、まだ詳細にコメントする段階ではございませんけれども、いずれにしましても、いろいろな方途を尽くして友好関係を増強していきたい。そんなときに、歴史教科書の問題で長くあるいは再三意見のそごがあるというようなことにならないように何らかの方途を考えられればと、私としては、その方途というのは、日本及び韓国、中国との将来、ひいてはアジアなり国際的な状況の中で、非常に大事なことだと考えております。

 

○馳委員

 目が合いましたが、外務省の槙田さん、来ていらっしゃいますけれども、これを私は提言しようと思ったら、実はけさの毎日新聞に、「日韓で歴史教科書を」ということで駐日韓国大使からの発言として載っておった。毎日新聞のインタビューとして出ておったらしいのですけれども、これも踏まえ、また私の提言は、三国でこういう歴史教科書についての合同調査委員会というものをつくって民間学者のベースで話し合えばいい問題じゃないか、余り国会議員がくちばしを挟み過ぎるのはよくないなと。これは私の意見ですが、どう思いますか。

 

○槙田政府参考人(外務省アジア大洋州局長) 

 今の馳委員の御提言、私は、外務省の公式な見解ということではございませんけれども、私の私見も交えてお話をさせていただきますならば、日中韓という三国が、特に近代史につきまして基本的に同じような認識を持っていくというふうなことが、今御提言にありましたような委員会のようなものを通じてできるようになれば、それはまたいいことだなというふうには感じるわけでございます。

 例えば、ドイツとフランスあるいはドイツとポーランドの間なんかにおいてそういうふうな努力が行われてきているということもございましょうし、そういうアイデアに対しまして、私は、そういうことが実現できればいいなという感じは持っておるのでございます。

 ただ、具体的にこれを行うということになりますと、では、日本の学者、識者というのはどういう方がなられればいいのかということになりますと、これは委員先刻御承知のように、日本の学者の間でもいろいろな幅広い意見がございますので、その人選というふうな問題からしてかなり難しい問題があるなというふうに感じるわけでございます。

 しかしながら、究極においてそういう努力を政府としてもやっていくということは、これはまさに、委員の御指摘になった観点からいって望ましいことではあろうと思いますので、現に、終戦五十周年の記念の時点で平和友好交流計画というものを政府が打ち出しまして、学者間の交流であるとかシンポジウムの開催とか、そういうふうなことがいろいろ行われてきております。それは、必ずしも今委員のおっしゃったものに直接はつながらないかもしれませんけれども、そういう方向での努力というものがこれから行われていいのかなという感じはいたしております。

 

○馳委員

 なぜ私はこういうことを申し上げるかというと、一義的には、やはり教育の現場に混乱を起こさせないためなんですね。

 歴史教科書を使って教える社会科の先生方は、いろいろな圧力が内外からかかると、やはり萎縮されますよ。この5月から7月にかけて採択に入ってまいりますけれども、やはり採択に携わる皆さん方は、こういう外交的な問題にもなっているというと、おびえるのですよね。そういうことをさせないためにも、現場の、特に先生方に無用な混乱を起こさせないためにもこれは必要だと私は思うのと、もちろん、槙田さんがおっしゃったように、予防外交の観点からも必要です。

 なぜかというと、韓国側と中国側にこの教科書問題で日本に対して攻め込む口実を与えてはいけないというのが私の言っている予防外交の観点でありますから、これはひとつ、韓国側の大使の御意見もありましたけれども、私は純粋に民間学者、まさしく槙田さんおっしゃるように、いや、では、そうなるとどんな学者を入れたらいいのかなと、そこでまさしく議論が始まりますが、いいじゃないですか、それは、しかるべき機関において学者を選定して、入っていただいて、その学者ベースでは大いに議論をし、けんかをしていただければいいのです。事実は事実として求める姿勢をお互いに見せる、つまり、お互いに歩み寄り合う姿勢を求める、そういう場をつくり合うというのは外交の基本であると私は思います。

 次の質問をいたします。

 4月17日付の日教組教育新聞で、書記長の談話として、新しい歴史教科書をつくる会編さんの中学校の歴史と公民の教科書を、「偏狭なナショナリズムを煽る危険性があり、「皇国史観」につながる考え方」とし、さらに、教育に「大きな弊害となることを危惧する」と批判しております。そして、7月に行われる教科書採択決定に向けて、「7月採択にむけとりくみ強化を」、これは大きな見出しになっているのですね。そう述べて、名指しこそしておりませんが、前後の文章から、つくる会の教科書の不採択運動を推進しているとしか読めない記事を掲載しております。

 記事の最後には、「地方議会でのとりくみも重点課題となる。山場は6月議会が想定されており、」と、6月議会に対して、日教組の皆さん方があらゆるチャンネルを通じて圧力をかけるかのごとき、そう読める、行間にあふれているような、「7月採択にむけとりくみ強化を」、こういう記事を載せておられます。これは事実ですから、確認をしてください。

 そこで、問題にしたいのですが、日教組所属の教員が、教科書採択過程において、教科用図書選定審議会や教科用図書採択協議会の調査員や選定委員として採択過程に関与していることが、厳正、公正な採択に反するのではないかということを指摘させていただきます。特に、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十条に反して違法ではないかと私は思います。

 第十条を読ませていただきます。

  都道府県の教育委員会は、当該都道府県内の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択の適正な実施を図るため、義務教育諸学校において使用する教科用図書の研究に関し、計画し、及び実施するとともに、市町村の教育委員会並びに国立及び私立の義務教育諸学校の校長の行う採択に関する事務について、適切な指導、助言又は援助を行わなければならない。

とあるわけですよね。この第十条に違反していると私は思いますが、この件についてお答えいただきたいと思います。

 これは新聞にちゃんと出ているのですからね、日教組教育新聞に。つまり、文部科学省としても、日教組がこういう動きをしている以上、厳正、公正な教科書採択の運用に問題が生じているわけであり、その運用の責任者として、日教組にしかるべき措置、指導をとるべきであると思いますが、いかがでしょうか。

 

○矢野政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)

 まず、御指摘の調査員や選定委員につきましては、職員団体に属する者がこれに就任してはならないとするような法令上の規定は存在しないところでございます。

 そこで、教科書の採択につきましては、あくまでも教育委員会などの採択権者の判断と責任において適切に行われるべきものでございまして、したがって、関係者にありましては、それぞれの活動が教科書の公正な採択に影響を与えることのないよう慎重な対応がなされることが望ましいというふうに私どもとしては考えているところでございます。

 

○馳委員

 これは、委員の皆さん方も今おわかりいただいたように、違法じゃないのですよ。いいですか、教科書採択に向けて取り組み強化をしと、現に新しい教科書をつくる会の教科書を厳しく批判している日教組の所属の先生方が、採択の現場の選定委員や調査員になることは、法律上も違法ではないのですよ。ですから、どんどん採択の現場に出ていらっしゃるのですよ。まず、この事実を私は皆さんにお知りいただきたいと思います。私は、それでいいのですかということを実は問題にしたいからこの質問をしたのですね。

 先ほどの第十条、この法律はどういう法律かというと、もう一回言います、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律ですよ。義務教育で使われる教科書はだれがお金を払っているのですか。私たち国民じゃないのですか。その無償措置の、国民から税金をいただいて、そのお金で子供たちに教科書を選んであげようというその採択の現場において、明確に特定の、それも検定を通った、いいですか、検定を通った特定の教科書会社に対して、公然と批判をし、批判までは私はこの日本の国家社会においては許されると思いますから、そこは何も言いませんが、採択に向けての取り組み強化をしようと。

 やはり日教組はさすが先生方がいるからうまいなと思うのは、「とりくみ強化を」とあって、採択しないように不採択運動をしようとは書いていないのですね。これはうまく文章を、レトリックを使っているなと私は思いますよ。

 しかしながら、先ほどの第十条で読みました「採択の適正な実施を図るため、」。これのどこが適正なのですか。私はそこを質問しているのですよ。矢野さん、適正だと思うのですか、思わないのですか。適正だと思うか思わないかで答えてください。

 

○矢野政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)

 少し説明をさせていただきます。

 無償措置法の第十条は、先生お読み上げになりましたが、これはあくまでも都道府県の教育委員会の任務を規定しているだけでございます。そういう意味で、先ほど私が申し上げましたように、御指摘の調査員や選定委員について、だれが就任してはならないとか、あるいはその資格がどうであるとかといったような規定ではないわけでございます。そういう意味で、職員団体に所属する者が就任してはならないという法令上の規定はないということを改めて申し上げておきたいと思います。

 そこで、御指摘の点でございますけれども、職員団体が教育について見解を表明したり具体的な活動を行うことは、これは基本的には自由であるわけでございます。しかし一方、先ほど来お話がございますように、教科書の採択は教育委員会等の採択権者の判断と責任において適切に行わなければならないものでございまして、そういう意味で、公正な採択が確保される必要があるわけでございます。

 そういう意味で、一般論として申し上げますれば、公正な採択に影響を与えることのないような慎重な対応が望まれるということを申し上げているところでございます。

 

○馳委員

 適正か適正でないか、私はその部分は、選定委員とか調査員にどのような方々が選ばれるのかということについても、教育委員会の皆さん方に権限があるわけですからね、だれを選ぶかは。そうでしょう。これは第十一条に書いてあるじゃないですか。20人以内で選べるのですから。適正か適正でないかということを判断できるように指導すべきですよと私は主張しているのでありまして、もうこれ以上答弁は求めません。

 次に行きます。

 鳩山由紀夫代議士が韓国を訪問されて、この歴史教科書の問題について発言されたことについて、私は一言コメントをするとともに、当文部科学委員会理事会において、私は、議題としてその真意を確認することを要請いたします。

 なぜか。私は、見識のある鳩山由紀夫代議士が、この時期に韓国に行かれて、教科書問題についていろいろとコメントをされるということは、これはだれもとめることはできませんが、ちょっとまずかったかなと思っております。

 しかしながら、明確に新聞報道等もされておりますので、鳩山代議士が、扶桑社の中学歴史教科書の内容について偏狭なナショナリズムに基づいたものというふうに決めつけをし、市町村教育委員会において同教科書の採択は望ましくないというふうに述べたことは、公正であるべき教科書採択への明白な政治的干渉であり、これは看過できないと私は思っております。

 ですから、この点に関しまして文部科学省に答弁は求めませんが、この我々立法府において、こういう影響力のある、ましてや民主党の党首であります、恐らく民主党の統一見解として述べられたのだと私は思いますが、もしそうであるならば、こういう時期にこういう発言をし、ましてや日本の教科書検定制度を合格した教科書について、それも特定の教科書を名指しで批判をし、先ほども言いましたように、批判は私はいいと思うのですね、いろいろお考えがあるでしょうから。しかし、採択を左右するような発言までされるということは、これはちょっと言葉が走り過ぎたのか、私の立場からいえば、とんでもない発言であると私は言わざるを得ないのです。

 ですから、この点に関しましては、鳩山由紀夫代議士は、一代議士ではなく民主党の党首でありますので、政治的な影響力、もしかしたら韓国側に間違ったメッセージを送ってしまったのではないかという危惧もあり、この発言をもとに韓国側が外交的な、政治的な影響力を日本側に対して行使しようと思えば、幾らでもできるわけですよね。そこまでの配慮があったのか、なかったのか等々を含めまして、私はまず基本的には、日本の教科書検定制度に対する大きな何か挑戦状を、韓国から鳩山代議士が日本側の、特に我々政治家に対して突きつけられたような思いもして、これを受けとめております。

 ぜひ理事会でこの問題を私は議題として取り上げていただきたいというふうに思っておりますが、取り扱いは委員長にお任せいたします。

 次に、教科書問題についての最後の質問をさせていただきます。

 ちなみに、大臣は政治家じゃありませんのであれですけれども、副大臣はやはり選挙を通って選ばれた政治家であり、今現在は副大臣としてお務めですが、このような鳩山発言についての御感想をいただきたいと思います、青山副大臣と岸田副大臣に。

 

○青山副大臣

 私も、政治家の一人として、少し行き過ぎの発言で、そこまで踏み込んでいただくのはどうかという思いでございます。よろしく。

 

○岸田副大臣

 いろいろな立場でいろいろな考え方があるのは事実でありますが、我が国の教科書検定制度、この制度は大切に守っていかなければいけないと思っております。その中で、公正な採択に影響が及ばないようにそれぞれ慎重に対応しなければいけない、そのことだけは感じております。

 

○馳委員

 次の質問に移らせていただきます。引きこもり問題について質問させていただきます。

 厚生労働省にまずお伺いいたします。

 そもそも引きこもりの定義は何でしょうか。これは、対策を立てる上でも重要であり、実は、引きこもりといっても、明らかな精神疾患を背景にするものとそうでない場合もあり、なかなか区別できない問題であると思っております。

 厚生労働省はどのような調査結果を持ち、どのような見解を持っていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

 

○松本政府参考人(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長)

 引きこもりは、さまざまな要因によって社会的な参加の場面が狭まり、自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことを指す言葉でございまして、単一の疾患でありますとか障害の概念ではないということから、明らかな定義がなされているわけではございません。

 ただ、厚生省の研究班で、援助の対象者としての社会的引きこもりというものを、明確な精神疾患、精神障害を持たないが引きこもりを続けている人々というような定義をしたものもございますし、昨年度、社団法人青少年健康センターの研究者が実態調査をされましたときに、定義といたしまして、六カ月以上自宅に引きこもって社会参加しない状態が持続しており分裂病などの精神病ではないと考えられるものというぐあいに定義をして、調査をされております。

 この実態でございますけれども、昨年度、先ほども申し上げました社団法人青少年健康センターの研究者によりまして、都道府県・指定都市などに設置されております精神保健福祉センター、保健所などで受けました引きこもりに関する相談状況の調査が実施されております。

 調査の概要につきまして簡単に申し上げますと、相談を受けた件数は、保健所が3,787件、精神保健福祉センターにおける相談が2,364件ということで、総数およそ6,000件の相談があったということでございます。また、相談件数のうち、小中学校で不登校の経験がある者が約40%、また引きこもりが関連する問題行動として、本人から親への暴力というものが18%であったということでございます。

 またもう一つ、厚生省の研究所で、全国の精神保健福祉センターを対象といたしまして、平成12年4月から9月末までの半年間に、引きこもりについて初回の相談件数があったものが599件ということで、男性が434人、女性の事例が163人ということで、男性の相談件数が女性の2.7倍であった、そういう調査結果がございます。

 

○馳委員

 実は、私がこの引きこもり問題にちょっと熱心に取り組むようになったきっかけは、テレビ朝日のスーパーモーニングというワイドショーですが、この企画で、引きこもり問題ということをやるので出てくれと言われたので出ました。僕は知らなかったからです。なぜなら、私の性格は、皆さん御存じのように、引きこもりとは全く正反対の性格をしておりますので、何でだろうと思った。

 ところが、お話をお伺いし、実際にもう10年間も引きこもりをしていらっしゃるという29歳の青年に会い、あるいは、引きこもりの子供たちにカウンセリングをしてメンタルケアをしていらっしゃる名古屋の長田百合子さんという先生にもお会いをし、お話を聞けば聞くほど、これは一つの社会的な大きな問題であるなというふうに思いました。

 今厚生労働省からお話をいただきましたが、引きこもり、これは不登校の一つの類型ともちろん考えられるわけですね。だって、引きこもりといえば社会的な現象ですが、学齢期の児童生徒にとってはまさしく不登校なんですね。こういうことを考えていけば、私は学童保育のときにも経験いたしましたが、まさしく、厚生労働省と文部科学省の連携というものが非常に求められてくると私は思います。

 厚生労働省の調査結果、5月8日に出ておりますが、実は問題点のところが、なるほど、この引きこもり問題の本質を指摘しているのですね。何か。引きこもり問題の専門家の不足。治療、相談体制の未整備。知識、支援技術の不足。対応の困難さ。そうなんですよ。家庭内のことでもあり、引きこもりで困っている等々の問題がなかなか外に出てこない、そういう意味での対応の困難さというのもあるんですね。

 ところが、私も先月名古屋の、引きこもりを三年間続けている、本当なら学校に行っていたら今高校一年生というある方の御家庭にも行って、お母さんの話も承ってまいりました。あるいは、先ほど申し上げました長田百合子さんがみずからやっていらっしゃる塾教育学院という民間の、フリースクールのようなものですね、そちらの方にも伺いまして、下は小学校2年生から上は23歳までおりましたけれども、子供たちの話を伺い、親の話も伺ってまいりました。一言では言いあらわせない御苦労とともに、対応の困難さというものも実感させていただきました。

 ここで申し上げたいのは、厚生労働省と文部科学省の十分な連携のもとに、やはり早目に対応すれば絶対に解決できる問題であるという信念のもとに取り組んでいってもらいたいと私は思っております。これは、文部科学省、担当はどちらになるのでしょうか、御答弁をお願いします。

 

○矢野政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)

 不登校問題の対応に当たりましては、これは学校における取り組みに加え、児童相談所や精神保健福祉センター等の、厚生労働省所管の専門の関係機関と連携を図っていくことが大変大事であるわけでございます。そういう意味で、先ほど厚生労働省からお話がございましたけれども、厚生労働省が引きこもり対策等において行っている事業、そうした取り組みは、児童生徒の不登校あるいは問題行動について、学校と関係機関との連携をする上で大変有意義であるというふうに私どもは考えているところでございます。

 したがいまして、学校や教育委員会は、こうした事業に協力して、関係機関と連携し、不登校等の問題に適切に対応していくのが重要であると考えているところでございまして、文部科学省といたしましては、このような地域における連携が進みますように、教育委員会に対しても指導してまいりたいと考えているところでございます。

 

○馳委員

 厚生労働省にまたぜひ答弁いただきたいのですけれども、要は、学校側と、現在対応の前線である保健所、精神保健福祉センターとの情報交換、連携、ひいては両省庁の十分な連携、つまり両省庁が携わるモデル事業などをつくるとか、これが私は必要だと思うんですよ。前向きな御答弁をお願いいたします。

 

○松本政府参考人(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長)

 委員御指摘のように、それぞれ厚生労働省、文部科学省、いろいろ現場で協力していくことが大事だろうと思っております。

 これにつきましては本年度から、思春期精神保健ケースマネージメントモデル事業という名称のものを実施することとしておりまして、このモデル事業におきまして、引きこもりなど、思春期などの区々の時期から発生するさまざまな問題行動につきまして、保健、福祉、教育、さらには警察などの関係機関が連携し、現場の担当者によるチームをつくりまして、本人、さらには家族の支援を行うことを今年度から実施していくこととしております。

 

○馳委員

 私もこの二カ月間引きこもり問題に取り組んできた一つの経験として申し上げると、子供たちが望んでいるのは、親に本気で怒ってほしいと。つまり、子供が何か親をなめているようなところがある、あるいは逆に、親に夢を持った生き方をしてほしい、やはりこういうふうな、親に親にと言うところがちょっと甘いなとは私も思いますし、このやろう、しっかりしろよと思わず言ってしまうときもありましたが、そういう部分がいろいろ、引きこもりの事例も御家庭が千差万別であるように、本人の精神的な状況、学校に行きたくても行けない、職場に行きたくても行けない、こういうような状況というものはなかなか解明しがたいものもあると思いますが、まさしく両省庁の積極的な取り組みをお願いしたいと思います。

 次に、東大生産技術研究所跡、旧陸軍歩兵第三連隊兵舎の取り壊しについて質問いたします。

 現在、六本木にある東大生産技術研究所跡を取り壊し、新国立美術展示施設、ナショナル・ギャラリーのことですが、この建設を進めていると承っております。ナショナル・ギャラリーの建設に当たり、既存の建物を壊さず、パリのオルセー美術館やロンドンのテートギャラリー新館のように、歴史的建造物を美術館に転用再生させる方法がなぜとれなかったのか。また、ことし着工費が執行されると聞いておりますが、これをストップさせることはできないのか。関連して、取り壊さずにナショナル・ギャラリーとして活用した場合、一体どのくらいの費用がかかるのか。

 この三点について質問いたします。

 

○青山副大臣

 六本木の東京大学生産技術研究所の移転の問題ですが、これは実は老朽、狭隘化が非常に顕著でございまして、東京大学のキャンパス再配置計画、その一環として研究施設の環境改善のためになされたものでございます。

 そこで、今回のナショナル・ギャラリーについてでございますが、ナショナル・ギャラリーをここで建設していくということになりますと、国の内外から相当多数の来館者が予想されます。そうしますと、交通の利便であるとか、周辺の環境との調和であるとか、施設の規模をどれぐらいにしていくのか、相当大きなものにしていかなければならない。それから、美術団体からの要望を相当受けてきておりまして、こうした状況の中で、東京の都心部に建設する必要があるというふうに判断をしてきました。したがって、候補地をいろいろ検討した結果、生産技術研究所の跡地が適切であるということで建設することといたしました。

 ナショナル・ギャラリーですが、幾つかの要件を満たしていかなければなりませんが、特に三つの要件に照らして決定をしていきたいと考えてきたのは、一つは、やはり十分な施設の面積が必要である。それから、展示施設として、天井の非常に高い展示空間をどうしても確保していきたい。それから、多数の作品の搬入が繰り返し行われるわけでして、搬入、搬出、審査、保管、展示、これが極めて短期間に繰り返し行われなければならないという要件がございました。こうした意味での作業が円滑に行われる施設でなければならないというふうに考えまして、生産技術研究所の建物を保存活用することは極めて困難ということで、取り壊して新たに施設を建設していきたい。

 それからもう一点ありましたね。(馳委員「着工費の執行」と呼ぶ)費用でしたね。この機会ですから、全部お答えしていいですか。

 ナショナル・ギャラリーについては、平成7年度に新しい美術展示施設の基本構想というものが示されました。それから、平成10年には新国立美術展示施設基本計画が取りまとめられました。そして平成12年に基本設計を完了するなど、建設準備が進められてきたところであります。平成13年度には、実施計画を取りまとめるとともに建設工事に着手することとしておりまして、そのための予算措置が既になされているところであります。

 それから、相当な金額が保存のためにかかるということを、ひとつぜひ御理解いただきたいと思います。

 

○馳委員

 これは実は、小泉総理もごみゼロ社会を目指すと言っていらっしゃるし、遠山大臣も所信表明の中で、文化財についてはできる限り保存していくと。ましてや、遠山大臣は以前文化庁長官もしていらっしゃった。登録文化財制度がなぜできたかということも御存じでありましょうし、ましてや、この東大生産技術研究所、物性研究所は東大のものであるとはいいながら、文化庁も東大も、所属は文部科学省じゃないですか。

 私は、こういうこれまでの経緯を考えても、なぜ現在あるものを活用するような選択肢のもとでの十分な議論をされなかったのかということが非常に不満でありますし、ましてや、先般アフガニスタンにおきましてバーミヤンの石仏がタリバーン勢力の手によって破壊されてしまったということを胸を痛めながら聞き及ぶにつけ、いよいよ文部科学省もタリバーン勢力になってしまうのかという怒りも感じております。

 関連しまして、この旧兵舎の歴史的価値について質問をしたいと思います。

 御承知のとおり、この旧兵舎は、関東大震災直後の震災復興建築物であり、我が国最初の本格的鉄筋コンクリートづくりの兵舎建築であります。当時、世界有数の模範兵舎と称され、日本建築学会においても、近代建築の中でも特に重要な建築作品として、その価値と保存を訴えているところでもあります。さらに、二・二六事件の舞台ともなっており、日本近代史の意義も有する建物であります。

 このような価値のある建物の歴史的価値について、文化庁はどう認識しているのか。歴史的価値があると思っているのか、ないと思っているのか。この認識を踏まえた上で、どのような保存措置を考えているのか。特に、登録文化財にいう客観的要件としての歴史的価値についての認識を示していただきたいと思います。

 

○青山副大臣

 馳委員と松浪委員に大きい声を出されますと答弁者は平常心を失いますので、ぜひひとつ穏やかにお願いしたいと思います。

 まず、今お話しのとおり、昭和3年、陸軍が初めて建設した鉄筋コンクリートづくりの兵舎でございます。しかし、これは外観は簡素にまとめてきた建物でして、文部科学省としては、ナショナル・ギャラリーの建設によって生産技術研究所の建物が解体撤去されるに当たって、その存在を後世に伝えるために、記録を作成して保存する、建築模型を作成していく、それから建物の外壁など、その一部を現在の敷地内において保存、活用するというような方策について検討を進めることといたしております。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

 

○馳委員

 きのう、そしてきょう、きのうは朝日新聞が書いてくださいました。けさは産経新聞が書いてくださいました。

 今の答弁にもありましたように、建物の一部を現敷地内において活用する方策等の検討をしており、きのうの朝日新聞には、「「建物をそのまま残すことは無理だが、石段や壁など一部を敷地内に残すなど、設計者とも協議し、歴史的意味を残したい」としている。」と。けさの産経新聞では、「文化庁では、石段や壁など一部を残すことで折り合いをつけたい意向だが、」とありましたが、私は明確にだめだと反対を申し上げたいと思います。

 私もきのう現場に行ってまいりました。登録文化財としての法律をつくった。3年前、私も法案審議に参加させていただきました。建築学会からの申し出もあり、また、ナショナル・ギャラリー建設に向けての経緯も、今青山副大臣から御丁寧に承りまして十分わかっておりますが、なぜ、登録文化財として、機能を持たせた上で残せないのか。模型をつくったって、あるものを壊してしまったら、一緒ですよ。だめです。

 私はこういう答弁は納得できませんので、十分な答弁を求めたいと思います。次長が来ていらっしゃると思いますので、銭谷次長に伺いたいのです。

 登録文化財にいう客観的要件としての歴史的価値について、その認識を持っているのか持っていないのか。持っていたのにどんどんと、流れでここも壊してしまおうとしているのか。全く持っていなかったのか。

 もう一回言いますね。登録文化財にいう客観的要件としての歴史的価値についての認識を示してください。そして、歴史的価値について十分に、東大の方も、あるいは文化庁の方も持っていながら、ナショナル・ギャラリーという事業がどんどん先に進んでくるので、これを壊しに入ろうとしているのか。そして、もう予算もつけたから予算を執行しなきゃいけない、こういうふうな事態になってきているのか。申しわけ程度に、模型を残したり記録を保存したり一部分だけ残すというのは許せません。登録文化財として認定できる大きさの建物として残すべきです。

 銭谷さん、答弁してください。

 

○銭谷政府参考人(文化庁次長)

 先ほど来副大臣の方からお答えを申し上げておりますが、東大の生産技術研究所の建物は、兵舎として機能性を備えた築50年以上の建物でございます。

 登録文化財制度につきましては、国あるいは地方公共団体が指定をした文化財以外の建造物のうち、文化財としての価値にかんがみて保存、活用のための措置が必要とされるものを登録するようにしているものでございますが、その場合、所有者の同意が得られたものについて登録をしているものでございます。一般論として申し上げますと、やはり建物の特徴を示す相当部分が保存されているというものが登録文化財に当たるというふうに考えられるわけでございます。

 本件につきましては、種々検討の結果、保存、活用が困難であるということで、登録文化財とするのは困難ではないかというふうに考えております。

 なお、先ほど御説明申し上げましたように、私どもとしては、この東大の生産技術研究所の歴史的な経緯というものを後世にきちんと伝えていくことも文化財保護の一つの方策でございますので、建築家の方々の御協力を得て、記録保存のための調査研究会を最近発足をさせまして、その記録保存に現在取り組んでいくとともに、建物のその調査に基づく模型をきちんとつくったり、あるいは、その建物の一部について保存、活用できることがないかという面での検討も行っているところでございます。

 

○馳委員

 大体、そもそも最初からナショナル・ギャラリーありきで、東大の生産技術研究所、物性研究所が狭隘、古くなったので、もうそろそろだめだな、そういう議論があったのではないかというふうな危惧を私はいたしますよ。登録文化財としてこの建築物の歴史的な価値観も認めながら、いかにしてナショナル・ギャラリーとして活用できるかという議論は最初したんですか。今ある建物を残して、あるいはこれを改築して、それをナショナル・ギャラリーとして活用できないか、そのためには予算が幾らぐらいかかるだろうかという調査、そこまで十分やっておるのか。

 まず壊すありき、まず生産技術研究所、物性研究所の移転ありき、ナショナル・ギャラリーの構想があり、ああ、ちょうどいいところだ、壊してナショナル・ギャラリーを建ててしまおう、もしそういうふうな形で今後の文化財行政が進められていくとするならば、その象徴としても、今回のこのナショナル・ギャラリー建設構想、そして今現在ある跡地を壊してしまうということには絶対に納得することはできないと私は指摘をさせていただきます。

 銭谷さん、もう一回答弁してください。

 

○銭谷政府参考人(文化庁次長)

 ナショナル・ギャラリーにつきましては、昭和50年代から、美術界から長年にわたって要望があった施設でございまして、そういう要望にこたえ、我が国の美術振興を図ろうという観点から、長年にわたって準備が進められてきたものでございます。その件につきましては、先ほど副大臣の方から御説明を申し上げたとおりでございます。

 問題は、ナショナル・ギャラリーという事柄の性質上、交通の利便性のよい、また広大な敷地、建物が確保できる、そういう都心につくる必要があるということで用地の選定が行われたわけでございますが、そういう条件に合致するところがこの六本木の地区ということになりまして、それ以外、現在までもそういう用地というのはないわけでございます。

 文化庁といたしましては、平成7年度以降、基本構想、基本計画、基本設計をそれぞれ行いまして、建設の準備を進めてきて、平成13年度、実施設計、そして建設工事に着手をするということになったわけでございます。

 率直に申し上げまして、そういう観点からの検討をずっと進めてきたということでございますが、東大の生産技術研究所につきましても、その建物の歴史的な経緯というものを勘案をいたしまして、その建物すべてを保存、活用することは、ナショナル・ギャラリーの機能性から見てこれは困難なわけでありますけれども、その歴史的な経緯を踏まえまして、先ほど来申し上げているような、専門家の御協力を得ながら、例えば施設の一部の保存を含む記録保存等の可能性について検討をしているということでございます。

 

○馳委員

 この件については、後ほど松浪健四郎委員の方からもまた御指摘があると思いますので、そちらに私は譲りたいと思います。

 時間がないので最後の質問になりますが、大阪オリンピック招致についての大臣の御見解を伺いたいと思います。

 IOC評価検討委員会から、評価報告書が出ました。一時はIOC内部でも辞退勧告まで考えられたそうですね。大阪、イスタンブールが非常に評価が低かった、これは事実かどうか。評価が出たのは事実かどうか。

 

○遠藤(純)政府参考人(文部科学省スポーツ・青少年局長)

 5月15日に公表されました……(馳委員「事実かどうかです」と呼ぶ)三都市に比べて大阪が低いという評価をその報告書で受けたのは事実でございます。

 

○馳委員

 大阪としては言い分があるんですよ。ちゃんといろいろ、財政状況の問題であるとか、言い分があるんです。それを、いわゆる異議申し立てとして今IOCの方に出しておると思いますが、それがちゃんとみんなに伝わりますか。そして、異議申し立てしたことで、それによって評価報告書の内容は変更されますか。そして、7月13日、IOC総会で最後のプレゼンがありますけれども、それまでに最終的に投票する全員に今回の大阪市招致委員会側の言い分が伝わりますか。つまりそれは、最初に出てきた低い評価書はちょっと誤解があるんですよ、本当はこうなんですよと、これは伝わりますか。それをお答え願います。

 

○遠藤(純)政府参考人(文部科学省スポーツ・青少年局長)

 評価委員会の報告書に異論がある場合には補足のコメントを出すことが認められておりまして、そういうことから、今月の25日までにIOCに提出をすべく、今準備をしているということでございます。

 この補足のコメントにつきましては、IOCに提出した後には、IOCの許可のもと、全世界のIOCの各委員に送付をすること、そして、さらには、2月に提出いたしました立候補ファイルにその一部として追加をすることができるということになっておるわけでございます。

 

○馳委員

 最後に、二つ選択肢があるんですよ。この低い評価委員会報告書が出た。大阪市招致委員会側も大変苦慮しておられますが、現実に低い評価報告書が出た以上は、もう一切、日本は名誉ある撤退、そして、撤退するだけじゃだめ、北京を一生懸命応援する。それは、イスタンブールやパリやトロントで行われるよりも、アジア地域で行われた方が、日本のスポーツ関係にとってははるかにいいんですよ。こういう低い評価報告書が出て、逆に北京の方が高い評価を得ている段階において、政治的な判断をして北京の力強い応援団に回る、これも一つの選択肢。

 もう一つの選択肢は、7月13日IOC総会で最後のプレゼンが行われる、ここに遠山大臣、応援団で閣僚として行かれたらどうですか、あるいは小泉総理大臣が行かれたらどうですかという姿勢を見せることが、いや、ちょっと待てよ、IOCの皆さんも、日本の、大阪の評価は低かったかもしれないけれども、政府あるいは文部科学省を挙げて国民が協力しようとしている姿勢を明確にプレゼンで示したと。トロントやパリや北京、どんな応援団がやってくるか、最終的にまだはっきりしていませんが、閣僚級がやってくるのは当たり前なんですよね。そういうものですよ、外交の現場というのは。そういう意味でいえば、大阪オリンピック招致委員会、大阪市の磯村市長も大変な御熱意と御努力で頑張ってやっておられますが、それを明確に支援する姿を文部科学省が示す。

 ちょうど7月13日、参議院選挙が始まっています。遠山大臣は選挙にお出にならないから、そんなに厳しい日程ではないと思います。むしろここは、大阪市の皆さんの招致委員会、これは長野の招致委員会の問題もありましたけれども、それを受けて立派な招致活動をしてこられた方々の思いに報いるためにも、大臣みずからが行ったって何にもおかしくないと私は思いますよ。ましてや参議院選挙、こう言っては失礼ですけれども、やはり遠山大臣は民間の方ということですから。

 何よりも、二つの選択肢のうち、おりてしまえばいいというのは――招致委員会の皆さん方のお気持ち、大阪のお気持ちを考えた上でそういうものをバックアップする、その気持ちを態度、言動で示すのが私は文部科学大臣の姿勢だと思いますが、最後に大臣の御答弁を求めて、私の質問を終わります。

 

○遠山国務大臣

 7月にIOC総会においてプレゼンテーションをどのように行うかにつきまして、目下、その主体であります大阪市と、それから日本オリンピック委員会で検討が進められていると承知しております。

 やはり、担当省としてはこれを支援していくというのは当然の姿勢でございます。ただ、どういう方法で支援していくかということについては、今の御意見も参考としながら、今後考えていきたいと思います。

 

○馳委員

 ありがとうございました。

  


詳しくは衆議院 文部科学委員会議録をご覧ください
(常任委員会 → 文部科学委員会)

 

 


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