『り・お・ん』 Every child has a beautiful name.
あとがき
愛情は、親から子どもへの、かけがえのない贈り物――自身の子ども時代をふりかえると、心からそう思います。
私には父と母が二人ずついます。実の父母と育ての父母です。
農家の三男に生まれた私は、小学校三年のとき、実父のいとこで子どもがいない父の家に養子入りしました。
養父が一家を支えるためにコツコツと仕事に励む姿は、いまも目に焼き付いています。そして実父は、毎年正月に米や野菜、梅干しなどを持って訪ねてくると、ひとしきり世間話をし、私が元気にやっている姿を見て、「迷惑かけるんじゃないぞ」と言って帰っていきました。
二人の父は性格がよく似ていて、怒った姿を見たことがありません。弱音を吐かず、愚痴も言わない。二人の母は遠くから、近くから、それぞれ私に温かく細やかな愛情を注いでくれました。
私が高校の教師を辞めてプロレスラーになると決めたときも、初めて参院選に立候補したときも、「そうか」「がんばりなさい」と言っただけで、黙って見守ってくれました。岐路に立つ私の背中を信頼という無言の愛情で押してくれ、なによりそれが私の心の支えとなりました。
私は二人の父と母を持ったおかげで、四人分の愛情を注いでもらうという得がたい幸せを持つことができたのです。
親が子どもに対して、どれだけ深い愛情を抱いている存在であるかを子どもたちに伝えたい。子どもが親に対して、どれほど大きな愛情を持っている存在であるかを大人たちに伝えたい。この本には、そんな願いをこめました。
家族の愛情やぬくもりを感じることで、子どものなかには他者を思いやる優しい心や、感謝の気持ちが育まれると私は信じています。
この本を、すべてのおかあさん、おとうさん、その大切な宝物である子どもたちに贈りたいと思います。
はせ ひろし
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